風営法の歴史

正しい「風俗」の使い方

東京の風俗は、デリヘル、吉原のソープ、池袋・巣鴨のピンクサロン?

「風俗」で検索すると、こういうお店の情報がでてきます。「何か変だ」と思う人と、そうでない人がいます。

いずれにせよ、「風俗」に関心を持った方、お客さんも働く人も、雑学として知っておいて損はありません。

ところで。これは19世紀の画家、ゴヤの作品。宮廷画と言われますね。

 

こちらはルソーの作品。風景画と言われますね。

 

こちらはフェルメールの作品。なんと言えばよいでしょう。。。

風俗画と言われます。これが「風俗」です。

つまり、「風俗」とは何でしょう。

 


本当の風俗

風俗とは、庶民の日常生活の風景。そんな意味です。

貴族の生活ではなく、自然の風景でもなく、普通の人々の普通の生活のこと。

しかし、風俗店、風俗嬢、風俗業界と言えば、風俗の中の性的サービスに関わる非日常的な言葉として使われています。

本来であれば性風俗店、性風俗嬢、性風俗業界とでも言うべきでしょうが、「性」という字はあまりに生々しく、できれば使いたくない。

「性風俗」というよりも、一字省略して「風俗」と言うほうが、ためらいが少ないのです。

せめて「フーゾク」とカタカナで表現されると区別もできるのですが、時代とともに 風俗=性風俗 という認識が定着しつつあるようです

というわけで、風俗に関わる皆さんは、働く人も、利用するお客さんも、大人の雑学として知っておきましょう。

フーゾクは風俗の中のほんの一部でしかないことを。

 

 


風俗営業とは?

風俗営業と言ったら、皆さんは何を思い浮かべますか。

ヘルスやソープをイメージする人は多いです。いわゆる性的サービスですね。

しかし実際には、キャバクラのほか、コンパニオンが呼ばれるホテルや旅館、麻雀屋、パチンコ店、ゲームセンターなどが風俗営業です。

祭りの屋台の射的ゲームもそうだし、2016年までは社交ダンス教室も風俗営業でした。もっと昔は囲碁やビリヤードも風俗営業でした。

性風俗サービスに一番近そうなのはキャバクラでしょうか。でも最近は、テレビ局のアナウンサーがキャバクラで働いていたことが発覚しても、たいした問題になりません。

むしろ、こういった職業であることを理由に企業が待遇上の区別をすることが、一種の差別とみなされて批判を受ける風潮もでてきました。

サービス業が主要産業になってしまったのですから当然と言えば当然ですが、それでもまだ、風俗営業だという理由で融資を受けにくいといったような、様々の特別扱い(よくない意味での)を受けています。

いや、やはり風俗営業はいかがわしい、と言われるかもしれません。では、風営法はどのような考えで風俗営業にのぞんでいるのでしょうか。

 


適正に営まれれば国民に憩いを与える営業

風俗営業の法的位置づけは、「適正に営まれれば国民に憩いを与える営業」とされています。

「適正でない場合」には、売春などの「良くない営業」になってしまう恐れがある。

誰でも自由に営業できては困るので、一定の要件を満たした者にだけ行政庁が許可を与える。

裏を返せば、許可を持たない者には風俗営業を許さない、という制度なのです。

自動車の運転をイメージしてください。

自動車の運転は社会にとって有益ですが、常に注意して運転しなければ人の命を容易に奪ってしまう。

子供や技能未熟な人に自由に運転されたらたまらない。

よって、とりあえずすべての運転を禁止したうえで、安全運転を期待できそうな人にだけ運転を許可している。

風俗営業も自動車運転も、許可制になっている意味は同じ発想なのです。

風俗営業は社会にとって有用な存在だということが、法的に認められているからこそ許可制なのです。

 


フーゾク営業なら誰でもできる

一方で、ヘルスやソープなどは性風俗関連特殊営業の一種と位置付けられており、その営業を開始するにあたって行政庁(公安委員会)から許可を受ける必要がありません。

それは、風俗営業よりも優遇されているということではなく、むしろ逆です。

売春などの違法性のある営業になってしまう恐れが高く、健全営業を期待できないので、行政庁として許可するわけにはゆかない営業なのです。

裸の男女の間で性的サービスを提供しあうという営業において、売春を一切させないということは期待しても意味がない。

だから、許可はしないが届け出をさせて、警察が営業者を把握する。違法行為があったら直ちに取り締まろうという考えです。

風俗営業の場合は、身分調査で問題ないと思われる人が運営するし、管理者講習があって法令の勉強もするのだから、健全営業が維持されるよう行政庁が積極的に指導する対象となっています。

一方で、届け出営業は誰でも、かつて風営法に違反したことのある人でも開業できます。

このとおり風俗営業と性風俗営業とでは健全性の期待度が全く異なるのです。

風俗営業は性風俗営業とは一線を画している営業なのに、「風俗」という言葉が「性風俗サービス」を意味するようになってしまったから、風俗営業がいかにも性風俗的な営業だと誤解されるのも当然です。

飲食、接待、遊技など、一般庶民の生活に憩いや娯楽の場を与える、つまり風俗の一面を支える有用なサービスだからこそ「風俗営業」なのであって、社会の隅っこで遠慮がちに存在しているフーゾクとは、かなり異なる営業なのです。

もちろん、風俗営業は歴史的に性的なサービスのある面を支えた経緯があったし、風俗営業の中には実態として性的なサービスになってしまっている部分もありますが、それはほんの一部分でしかないうえ、法的に問題がある営業は取り締まりの対象となっています。

自動車の運転で毎年数十万の日本人が死傷していても、ドライバーだからという理由で悪いイメージを持たれてはいません。

風俗営業全体がいかがわしいかのように扱われてしまうのは、「風俗」という言葉の使い方を誤った結果としての偏見によるのではないでしょうか。

 


ソープは本番できるフーゾクではない

フーゾク営業の法的位置づけがよく誤解されているので、重要な部分だけ説明しておきましょう。

まず、この国ではサービスにおいて、いわゆる本番行為が売春防止法で禁止されています。

ソープランドとファッショヘルスの違いについて「本番の有無」と言われたりしますが、実態がどうあれ、法律上は違います。

ソープランドは「特殊浴場」とも言われ、浴場業の許可を受けた浴場とセットになった個室で性的サービスを行いますが、店舗型ヘルスでは浴場がありません。

しかし、ソープも店舗型ヘルスも風営法が定める性風俗関連特殊営業の一種であり、公安委員会への届け出をして開業できます。

ただし、店舗を構える営業であるがゆえに、開業できる場所は全国的に極めて限られていて、ほとんどの場所が、江戸時代に遊郭があった特殊地域です。

そして現在では新規出店が法規制によって難しいため、今営業している店舗の多くは既得権で営業しています。

ストリップ劇場やラブホテルも似たようなものと考えてよいでしょう。

また、デリヘルは無店舗型性風俗特殊営業と言われ、店舗を構えないで、客の依頼を受けてサービス提供者を派遣して性的サービスを行わせる営業です。

これも公安委員会への届け出が必要ですが、サービスを行う場所について制限がありませんので、全国いたるところで営業できてしまいます。

ピンクサロンは風俗営業の社交飲食店の許可を受けていますので、法的にはキャバクラなどの飲食店が多い街ならどこにでもありえます(実際は諸事情により地域性があります)。

飲食店なので、必ず飲み物が提供されます。

風俗営業特有の構造設備基準があるため、せまい個室を持つことができず、床からの高さが100cm以下のつい立てで客席を仕切っています。

基本的に普通のキャバクラ営業に似たような構造になっているわけですが、普通のキャバクラではありえない刺激的なサービスが期待できる点が違うだけのことです。

性的サービスを提供するなら性風俗特殊営業に該当しますが、合法的に出店できる場所はほとんど残っていないので、届け出して開業することはまず無理です。

届け出をしないで営業すれば、届け出義務違反であるし、禁止区域で営業したという違反にも問われます。

 


フーゾクを利用するお客さんの法的リスク

フーゾクである以上、お店によっては警察の手入れを受けることがあります。そこに居合わせたお客さんも、一時的に事件に「関係」することがあります。

18歳未満の少年少女を相手に性的サービスを受けた場合は、摘発されるとお客さんも大変なことになりますが、公安委員会に届け出しているまともな店であれば年齢チェックを厳格に行っていますので、そういった事態に遭遇する確率はかなり低いでしょうし、相手が年少者であることを客が知っていなければ基本的に罪には問われません。

年少者事犯に無関係であれば、お客さんが摘発に遭遇しても、お客さんは基本的に捜査協力者でしかなく、積極的に協力したところで法的なリスクはありません。

サービス中断によって払ったお金は損することになりますが、協力して調書作成に協力すればタクシー代程度を警察から支給されることもあります。

ただ、事件が略式起訴でおさまらずに正式な裁判になったときには、検察官からの要請で証人として裁判所に来てほしいと言われるかもしれませんが、多くの事件は略式起訴で終わるので、そういったことは現実にはほとんど起きません。

某タレントさんのように、風俗店の摘発に協力したことがマスコミに暴露されたというかわいそうなことならリスクとしてありえます。

ピンクサロン営業の場合も、お客さんのリスクは基本的にはないのですが、他の客から見える状況で裸体になってしまっていると、公然わいせつ罪(刑法)に問われる恐れがあります。

しかし、一般的には他の客から見えにくい状況での行為になるでしょうから、お客さんが罪に問われることは考えにくいです。

 


フーゾクで働く人の法的リスク

違法な営業をしていれば、原則として経営者は責任を問われます。

営業を従業員に任せていて、経営者が知らないうちに従業員が勝手に違法行為をした場合でも、風営法には両罰規定というものがあって、この規定の適用を受ける違反については、原則として経営者も、実行者である従業員と同じ刑罰を受けますし、営業停止などの行政処分を受けることがあります。

刑事罰は基本的に違反行為を実行した人が対象となりますから、店舗の運営を任された店長さんが刑事罰の対象となることがありますし、店長でなくとも、違反行為に直接かかわった人は、肩書のない従業員でも罪に問われる可能性があります。

接客のみを担当する現場のキャストさんが処罰を受けることは、客引きか売春防止法違反容疑でもなければ、一般的には考えにくいとは言え、全くありえないとまでは言いにくいです。

摘発する側にとっては、客引きでもなければ、摘発対象は基本的に事業者であって、客やキャストではないのですが、客やキャストの証言を調書にしなければ摘発できないので、どうしても誰かが協力させられることになります。

結果はどうせ変わらないのですから、なるべく協力してあげてください。

さて、ここで話はおわりです。ここに書いてあることは一般的な場面のことを想定したのであって、この話が当てはまらない場合がありうることをご了解ください。

世の中にはいろいろあるし、日々変化していますから。