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◎娼妓規則
・11の条文と4種の書式で構成されています。娼妓営業を許可制にしていますが、第五条に一定の条件があります。年齢が15歳以上の女子であり、貧乏で他に仕事がない場合であり、父母が健康であり、実家や親族に迷惑をかけない場合に許可するとなっています。貧乏だから許すというところが、この時代の娼妓に対する認識の特徴として重要です。遊女として働く女性は通常、多額の借金を抱えており、借金をする際の契約で、返済のために娼妓として労働する義務を負っている場合が一般的であったのです。ところがマリアルイーズ号事件をめぐる国際裁判の中で、日本に奴隷的拘束に置かれた遊女が存在するという事実を批難されました。これを意識してか、政府は明治6年に「遊女解放令」を発布しましたが、借金を返済できない遊女たちの自由までが保障されたわけではりませんでした。遊女たちは貧しいから借金をし、その契約のために奴隷的拘束から逃れられないわけですから、貧困な娼妓だけが営業できるというこの規則は、遊女解放令が実質的に無意味なものでったことを物語っているように思えます。遊女の商売は社会悪だが、経済的に苦しい立場の女性ならイヤでも借金返済のためにやらざるを得ないだろうと考えていたわけです。
・不審な客を見つけたときに警察に密告する義務があります。こういった制度はすでに江戸時代の遊郭の場合でも求められていた義務であり、治安維持のために風俗営業を利用するという側面が風俗営業制度の隠れた存在理由であることを暗示しています。性風俗営業の存在が社会悪であり、一般社会とは一線を画して犯罪者がもぐりこむような特定の場所に封印するという思考は現在の制度にも残っています。例えば、風適法では「性風俗関連特殊営業」は条例で指定された歓楽街でなければ営業できません。
・娼妓が廃業したいときに貸座敷経営者等が文句を言う場合には警察署に訴え出ることができる、とあります。要するに、娼妓が貸座敷営業者の実質的支配下に置かれ、廃業する自由も保障されていなかった事実をうかがわせます。借金返済が完了した場合には、この規定により貸座敷営業者の妨害を排除できるかもしれませんが、実際には多くの娼妓は借金を返済するどころか、日々の生活費を貸座敷営業者に天引きされ、かえって借金が膨らむようなケースも少なくなかったと想像されます。借金未返済者の廃業が認められていたわけではなく、娼妓の自由廃業を許すかどうかという問題がその30年後にも社会問題になったことを考えると、第九条は実際の効力はほとんどなかったものと思われます。
☆おすすめリンク
(有)市民かわら版社より (「今昔あつぎの花街」ほか厚木の歴史や文化に詳しいです)
今昔あつぎの花街 遊郭のない遊里 あつぎ
芸妓・芸妓置屋、湯屋の営業免許鑑札
娼妓規則
第一条
娼妓営業ヲナサントスル者ハ総テコノ規則ニシタガイ所管郡区役所へ願出免許鑑札ヲ請ケ営業スヘシ 但他管ヨリ寄留ノ者許可ヲ得タルトキハ本管庁へ速ニ届出ツヘシ
第二条
営業ヲ願出ル者ハ第十一条第一書式鑑札書替願ハ第二書式其廃業ハ第三改名ハ第四書式に遵ヒ願又ハ届出ツヘシ
第三条
他管ヨリ寄留ノ者ニシテ此営業ヲナサントスル者ハ其管庁ニ於テ別ニ出願手続ノ定アルモノハ其規則ニ遵フヘシ
第四条
鑑札水火災盗難誤毀遺失等ニ係ルトキハ第十一条第二ノ書式ニ依リ更ニ願出鑑札ヲ請クヘシ
第五条
凡ソ娼妓営業ヲナシ得ヘキモノハ左ノ各項ニ適合スル者に限ル
一 平民ノ女子ニシテ十五年以上ノモノ
二 貧困者ニシテ他ノ営業ヲ営ムコト能ハサルモノ
三 父母ノ故障ナキモノ
四 養女ハ其養家ノ尊長者并実父母ナキモノハ実家最近ノ親族故障ナキモノ
第六条
娼妓ハ必ス貸座敷営業ヲ許可シタル区域内ニ居住シ其区域内ニ在ル貸座敷ニ於テ営業スヘシ若シ事故アリテ他ニ宿泊スルトキハ警察署又ハ分署ヘ願出許可ヲ受クヘシ
第七条
現住免許地外ニ転居シ営業セントスル者ハ一旦廃業シ更ニ願出免許ヲ受ケ営業スヘシ
第八条 何事ニ依ラス客ノ所業不審ノ廉アルトキハ速ニ座敷主又ハ警察官吏ニ密告スヘシ
第九条
廃業セントスルノ際座敷主等故障ヲ申述ルトキハ警察署又ハ分署ニ訴出ツヘシ
第十条
此規則ニ違背スルモノハ罰金二十円以下又ハ苦使4ヶ月以下又ハ廃業セシメ或ハ罰金苦使ヲ併罰スヘシ若シ無力ニシテ罰金ヲ完納シ能ハザル者ハ壱円ヲ六日ニ折算シ之ヲ苦使ニ換フ其一日ニ満タサル者ハ之を除棄ス
第十一条
諸願届書式ハ左ノ如シ
但第二書式以下氏名肩書并奥書書宛名等総テ第一書式ニ同シ其第二書式中事宜依リテハ尊長者ヲ欠クモ妨ケシトス
第一書式 用紙美濃
娼妓営業願
何々ニ付今般規則ニ遵ヒ娼妓営業仕度候間営業免許被成下度奉願候也
国郡区居住又ハ町村番地某方寄留 族籍
営業願人 何 之 誰印 年齢
国郡区居住又ハ町村番地某方寄留 族籍
尊長者 何 之 誰印 年齢
国郡区居住又ハ町村番地某方寄留 族籍
貸座敷主 何 之 誰印 年齢
国郡区居住又ハ町村番地某方寄留 族籍
右身許引受人 何 之 誰印 年齢
前書之通ニ御座候間連署仕候也
行事 何 之 誰印
戸長 何 之 誰印
神奈川県何郡長某殿
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