貸与権 著作物を有料レンタルする場合

貸与権(たいよけん)

貸与権は、音楽CDレンタル業を規制対象とする目的で昭和59年の法改正により作られた、著作物の貸与(レンタル)を制限する権利です。

映画の著作物には頒布権(著作物の頒布(はんぷ)を制限する権利)があり、頒布権には譲渡権と貸与権が含まれていますが、映画の著作物以外の著作物ついては譲渡権と貸与権が別々に存在しています。(「頒布権と譲渡権」を参照)

そして貸与権は、譲渡権と異なり消尽しません。例えば音楽CDをレンタルする場合には、貸与権を持つ著作権者や実演家・レコード製作者からの許諾を得て(場合よっては報酬の支払いのみで)行う必要があります。(「著作権の基本その9 著作隣接権」を参照)

第26条の3

<著作者は、その著作物(映画の著作物を除く。)をその複製物(映画の著作物において複製されている著作物にあつては、当該映画の著作物の複製物を除く。)の貸与により公衆に提供する権利を専有する。

 

音楽CDレンタルの話

1980年に立教大の学生が三鷹ではじめた貸しレコード業が大当たりして以来、レンタル業界は音楽CD業界や映画業界とさまざまな対立・協調を経ながら今日まで発展しつづけ、今や音楽産業の重要な存在となりました。

CDレンタルにかかわってくる権利は貸与権です。

実演家とレコード製作者は、その音楽CDが最初に販売された日から1年以内の音楽CDについて貸与権を専有しています(著作権法95条の2、97条の2)。

ですから、レンタル業者は販売されて1年以内のCDをレンタルする営業をするには、実演家とレコード製作者からの許諾を得なければなりません。

しかし、1年を経過したCDについては彼らから許諾を得る必要はなく、ただ報酬規定に従って報酬を払えばよいのです。

つまり、実演家・レコード製作者の貸与権は1年経過すると報酬請求権に変化し、権利者は貸与することを拒否できなくなります。

音楽CD(レコード)のレンタルについてどうしてこのような複雑な規定が著作権法に定められてのでしょうか。

CD業界はCDの売上を伸ばしたいので、新曲を発売後すぐにレンタルにだされては困ります。

しかし、レンタル業者もできるだけ新しい曲を提供できなければ、お客が来なくなってしまいます。

以前の著作権法はレンタル業のことを想定していなかったので、レンタル業が果たして違法なのかどうかはっきりせず、裁判で争うことになりましたが、その後、著作権法が見直され、両者の立場を考慮してこのような規定が生まれたのです。

貸し音楽CD業を行う際にはCDの貸与についての利用料を支払わなければなりません。その相手は3つあります。

まず一つは、楽曲の作詞家、作曲家にJASRACを通じて。

もう一つは歌手や演奏家などに芸団協を通じて。

さらにもう一つは、レコード会社またはMPA(社団法人音楽出版社協会)に日本レコード協会を通じて支払います。

 

貸本業についての制限

かつて著作権法には附則第4条の2に
「新法第二十六条の三の規定は、書籍又は雑誌(主として楽譜により構成されているものを除く。)の貸与による場合には、当分の間、適用しない。 」
という規定があり、楽譜以外の書籍及び雑誌には貸与権が適用されていませんでした。

庶人の読書を支える零細な貸本事業者を保護するための規定でしたが、安価な週刊誌の普及、図書館の充実、書籍購買力の向上などにより貸本業保護の必要性は徐々に薄れてゆきました。

近年になってマンガ喫茶などで集客の手段として店内でマンガ等を貸与する営業形態が普及するなど状況の変化から、貸本を貸与権の例外としてよいのかという議論が活発になり、2005年には附則が撤廃されたので、貸本サービスにも貸与権の制限を受けることになりました。

但し、飲食店や美容室、診療所などのように店内で客に本を読ませることには制限が及ばないと考えられ、漫画喫茶についても店内で客に本を読ませることは貸与権の規制がかからないと解釈されています。