童話続編 その2

もしも、ありふれた文章を真似てしまったら

ある日、ランジェロはダルマロが若い小説家に説教をしているのを聞きました。

 「君はポーロさんの小説を読んだことがあるんだね。じゃあこの文章はポーロさんの作品を真似たというわけだ。それは悪いことなんだよ」 

 その小説家は困ってしまってどうしていいかわからないようです。

 その会話を聞いて、これはほおっておけないと思ったランジェロは部屋に入ってきて、

「その真似たという部分を見せてくれますか」
と言いました。

 「ああランジェロ、いいところにきた。彼が真似たというのはね、ここのところなんだ」と言ってダルマロが指さした文章は、 

 

<その日はとてもよい天気だった。

  私は彼女と馬にのって散歩に出かけた・・・> 童話の挿絵 小説家を悩ますダルマロ

 

 

 

 

 「これが真似たという部分ですか?」
と言うと、ランジェロは小さくため息をつきました。

 「おいおいランジェロ、この間の話とは違うぞ。この小説家はあの有名なポーロさんの小説を読んで真似したんだから。」 

 すると小説家は、
「たしかにポーロさんの小説は読んだから、この文章は覚えていました。でも、・・・」
と言い訳をしようとしました。

ダルマロはその話に耳を貸そうとせず、

 「君の小説には、ほかにも同じ文章が入っているぞ。たとえば・・・」
と、問い詰めようとします。

 そのときランジェロはダルマロの話をさえぎって言いました。

 「あのねダルマロさん。こんなありふれた文章を真似できないとしたらどうなりますか? たとえばダルマロさんは、他人がすでに使った表現をまったく使わないで文章が書けますか?」 

 と言うとダルマロはしばらく考え込んで、

 「・・・・、そうか、書けそうにないな・・・。」とつぶやきました。

 「そうでしょう。著作権で守られるのは、それを書いた人の気持ちを表わした部分で、しかもありふれていない、誰かが簡単に思いつきそうにない表現だということですよ。」

 「と言うことは、こういう場合は著作権の問題はないのかね?」

 「こんなありふれた文章が著作権で保護されたら困りますよ。」 

 ダルマロは「ごめんなさい」と言って青年にペコリと頭を下げました。 

 おわり

童話続編 その3 もしも、自分が使用するために作品をコピーしたら ~ 私的使用について>へ


ありふれた文章

12-A 著作権法が保護するべき表現とはどのような表現でしょうか。

12-B パクリという言葉があります。他人の表現を真似してお金もうけをする人がいたら、あなたはどう思いますか?


◎ヒント

著作権法が保護する著作物というものには創作性が必要です。

創作性がどのようなものであるかを考えてみましょう。

著作権の相談でもっとも多く関わるテーマです。

この社会では、自分が考え、納得して表現したものを原則としては否定しません。

たとえ結果として同じ表現になってしまったとしても、それが悪いこと、というわけではありません。

しかし、著作権法が及ばないからといって、他人の表現をなんでもパクってよいということではありません。

人としてどうあるべきかを考えることもコンプライアンスです。

不当なパクリは、民法上の不法行為責任を問われることもありえます。

私は「合法だから」という理由だけで自身の行為を正当化する人が嫌いだし、軽蔑しています。

お金儲けのためだけのパクリは本来的に悪であるということを認識しない人が、それなりの社会的評価を受けることは当然のことです。

なお、何が不当であるかは、教育上の議論の素材としてちょうどよいと思います。