もしも、レコードを作って売ったとしたら ~ レコード製作者の権利と音楽著作権
ダルマロは、ランジェロが見たことのない不思議なかたちの機械の前で、うきうきしています。
「うふふ、どうだいこの機械。何かわかるかい?」
「うーん、おおきなかさみたいなものと、穴のあいた黒くてまるい板。いったい何に使うんです。」
「ふふん、これはね蓄音機。こっちの穴のあいたまるい板はレコードというんだ。これで音楽がきけるんだぞ。」
「へえ、音楽が!? ダルマロさんは新しいものが好きですね。さっそく聞かせてくださいよ。」
その穴のあいたまるい板に、小さな棒の先を静かにのせると、まるでそこにオーケストラがいるように、演奏がひびきわたりました。 「すばらしい! この機械でたくさんの名曲をレコードにコピーして売るぞお!」
ランジェロはあきれた様子で、
「ダルマロさんは、本当に商売に熱心ですね」と言いました。
「そりゃそうさ。今まで楽譜しかコピーできなかったけれど、この機械があれば曲のメロディーをそのままコピーすることができるんだから。」
ダルマロは天井の方を見ながら、すでにお金の計算をはじめているようです。
ランジェロは言いました。
「演奏された曲を録音してコピーするんですね。ということは、たくさんの人から許諾を取る必要がありそうですよ・・・・」
「作詞家と作曲家だろう。わかってるよ、そんなこと。」
しかし、ランジェロは腕を組んで考えました。
「ほかにも権利を持つべき人がいるんじゃないかな。演奏家、歌手とかも。」
それを聞いてダルマロは不思議そうな顔をしました。
「・・・どうしてだい。彼らは作詞も作曲もしてないし、何もつくっていないじゃないか。ただ歌ったり楽器をひくだけだよ。入場料を払って、音楽会の会場で録音すればいいのさ」
「でもね、彼らがすばらしい音色で歌ったりかなでたりしてくれた名曲だから価値があるのでしょう。下手な歌手や演奏者の曲なら誰もレコードを買わないですよ。」
「むむむ、それもそうだな。つまり、歌手や演奏者からも許諾を取ってコピーする必要があるというわけか。」
「そのとおり。ダルマロさん、進歩しましたねえ。」
ダルマロはてれましたが、あとでなんだかばかにされたような気分にもなりました。
おわり
<童話続編 その9 もしも、人の顔や姿を使うときは ~ 肖像権>へ
著作隣接権とは
18-A 著作隣接権者とはどのような立場のことを言うのでしょう。
18-B 著作隣接権はなぜ必要なのでしょう。
◎ヒント
あなたが大好きな曲がありますよね。その曲が聞けたのは、誰のおかげですか?どのような人たちがそれにかかわっているのでしょう。作詞家、作曲家、歌手、そのほかには・・・