童話続編 その7 もしも、作品の内容を変えてしまったら ~ 同一性保持権について

もしも、作品の内容を変えてしまったら ~ 同一性保持権について

 その日も、ダルマロは困った様子で、店の中をうろうろしていました。

 「困った・・、今度は本当に困った・・・・・」

「ダルマロさん、どうしたんです。またトラブルですか?」

「うん。実は、作家のポーロさんの本の中に王様がいやがりそうなことが書いてあるんだが、その部分をポーロさんは、どうしてもけずらないって言うんだよ。」

「王様がいやがりそうなことって?」

 「ほら。王様はほしいものがあると、何でもすぐにゆずってくれって言うだろう。ああいうわがままなところが良くないと言って、ポーロさんが本の中で文句を書いているんだよ。」

「へええ、あのひょろひょろのポーロさんに、そんな勇気があるんですねえ。」

「冗談じゃないよ、ランジェロ。君は王様に向かって、命をとってください、なんて言ったらしいけれど、僕にはそんな勇気はないね。そうだ、ポーロさんの文章の著作権を私が買い取ってしまおう。そうすれば、私が文章を勝手に変えても文句はないだろう」

「いやいや、そうはゆきませんよ。作品の内容を変えさせない権利は、いつも作者にありますから、著作権を買っても作品に手を加えることはできません。だって、作品を勝手に変えられたら、お金の問題では済まないじゃないですか。私なら絶対に許しませんよ。」

「おいおい、そんな怖い顔をしないでくれよ。ぼくだって困っているんだから。」

 結局ダルマロはおそるおそる、ポーロさんの文章をそのまま出版しました。

 しばらくしてから、王様の使いがやってきて、王様の手紙をダルマロに渡しました。

読んでみると、

 <ポーロの本を読んだぞ。
これからは少し反省するから、もうわしのことは書かないでくれ>

 と書いてありました。

「ふう、どうやら怒ってはいないようだな」

「ダルマロさん、これで世の中の役に立ったじゃないですか。作者の表現をそのまま伝えることも大事なことなんですよ。」

 と言って、ランジェロはダルマロの肩をたたきました。

 「でも、ひやひやしたよ、まったく。この商売も楽じゃないな・・・」

と言って、ダルマロはため息をつきました。

 おわり

童話の挿絵 考え込む王様

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同一性保持権

17-A 自分の表現がいつの間にか変えられていたら、どんなことが起こりえますか?

17-B 思ったことをそのまま表現することについて、どう思いますか。

 


◎ヒント

著作物を利用する際に、事情に合わせて切り取り、サイズや色合いの変更、文章の修正などが必要となりますね。

著作者にとっては意味があることでも、加工や編集する立場の人にってはあまり意味がないと思われたりして、あとでトラブルに発展することがあります。

作者の立場になって考えてみれば当然のことでも、つい業界や職場の慣習に引きずられ、ちょっとした工夫を忘れてしまうことがあります。

ここでは、作品の同一性に配慮することにどのような意味があるのかを考えてみましょう。

作者が思ったことを素直に伝えること。とても難しい問題が含まれています。

その表現で心が傷ついたり、困ったりする人がいませんか?

ならば、やはり改変しますか?

その判断は誰がするのですか?

コンプライアンスにおいて非常に重要なテーマです。

☆著作者人格権

☆プライバシーと有名人の利益を守る