童話続編 その6

もしも、未公表の作品を公表してしまうと ~ 公表権

「どうしよう・・・、おそいなあ、どうしよう・・・。」

 ダルマロは困った顔で店の中を行ったり来たりしています。

「ダルマロさん、どうしたんです?」

 ランジェロは気になってたずねました。

 「実は、原稿が間に合わないんだよ。今日じゅうに印刷しないと発売日に売れないのさ。」

「ああ、ポーロさんが書いている小説の話ですね。まだ出来上がっていないんですか。」童話の挿絵 頭をかかえるダルマロ

「そうだけど、実は下書きはもらってあるんだ。まだ完全ではないけれど、これでもいいから出版してしまおうかな。読者にはどうせわからないし・・・。」

 するとランジェロはまた腕組みをしてダルマロに言いました。

 「いけません、そんなこと。その下書きは完成品ではないのですから、勝手に印刷して売ってはいけませんよ。」

「でもそれじゃあ仕事にならないよ。悪いのはポーロさんだよ。」

 「それは別の話です。これは大事なことなんですよ。もしそのちゅうとはんぱな原稿を世に出してしまって、読者ががっかりしたらどうするんです。ポーロさんの名誉はだいなしじゃないですか。ポーロの小説は最近面白くないな。なんてうわさになったら・・・」童話の挿絵 机で考え込むダルマロとランジェロ

 「じゃあ、どうすればいいんだい?」

 「ポーロさんと話し合いをして、どうするか決めるべきでしょう。作品を世の中に出すかどうかは重要なことなんです。作者の名誉がかかっているんですよ。ダルマロさんが勝手に判断してはいけません。」

「うーん、そうかあ、困ったな・・・」

 と、そのとき、店にポーロさんが姿を見せました。

 「ふう、どうやら間に合ったようだ。今日が締め切りだったね。」

 ランジェロとダルマロは笑って顔を見合わせました。

 おわり

 

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公表権とは

6-A 自分の作品が未完成のままに公表されたら、何を考えますか?

6-B 人格権と言いますが、「人格」ってなんでしょう。人間にとって命と同じくらい大切なものってありますか?

 


◎ヒント

人にとって、お金よりも大事なものがあるとしたら、それは何でしょう。

ランジェロらしさとは? ダルマロらしさとは?

それは人生にとってどのような意味があるでしょう。

 

個人を尊重するということは、一人の人生や生き方を尊重するということです。

☆著作権の基本その8 著作者人格権