童話続編 その3

もしも、自分が使用するために作品をコピーしたら~ 私的使用について

 ある日、ランジェロとダルマロが町にある大きな橋に通りかかると、たくさんの若い画家たちが絵を描いていました。

 「ほほお、けっこうなことだねえ。」

と眺めているうちに、ある青年の絵描きがダルマロの目にとまりました。

 その青年は、ランジェロの絵のコピーを持っていて、その絵を真似して描いています。
それを見てランジェロは、

「がんばってますねえ。ずいぶん上手に描けてるじゃないですか。」

と声をかけると、その青年は、

 「これは光栄です、ランジェロさん。あなたの絵で勉強させてもらってます。」

とランジェロにおじぎしました。童話の挿絵 橋で絵を描く青年

 それを聞いてダルマロは、

「おいおい、勝手にランジェロの絵をコピーしては困るよ。これは私が印刷して君に売った絵を、君がもう一度印刷した、つまりコピーのコピーということだな。」

「はい、そうです。ダルマロさんから買った最初のコピーは大事に家にとってあります。雨にぬれてぐちゃぐちゃになったら困りますから、こうして自分でコピーした絵を使っています。」

 ランジェロは、

「へえー、君の家には印刷機があるのかい。」

とおどろくと、青年は

「はい、小さいし、あまりきれいな印刷はできませんが、それでもずいぶん高価なものでした。」

 それを聞くとダルマロは怒って、

「おいおい、それじゃ法律に反するぞ。他人の作品を勝手にコピーしてはいかん!」

するとランジェロはあわてて、

「まあ、いいじゃないですか。ダルマロさんにきちんとお金を払って買った絵を、こうして自分が絵を練習するためにコピーして使っているんですから。」

 それでもダルマロは不満そうでした。

「だって、コピーはコピーじゃないかね。こんなことをされたら、著作権の意味がないよ。」

と言うとランジェロは、

「それは違うでしょう。コピーした絵を彼が他人にゆずったり売ったりしたなら私たちも困るでしょうけれど、彼が自分で使うためならば、何も困らないじゃないですか。むしろ若者たちの勉強になるわけだから、おおいに結構でしょう。」

 ダルマロは、「むむむ・・・。」と考えると、その青年に 「ごめんなさい。私が間違っていたようだ」とあやまりました。

 青年は、

「いや、いいんです。でも僕は決して、自分がコピーした絵を人にゆずったり、売ったりはしませんよ。だって、私も将来ランジェロさんのような画家になって、著作権で守ってもらわないと困りますから。」

 そう言って、青年はランジェロはかたく握手をしました。

童話の挿絵 ダルマロが描いた小舟の絵

 おわり

 

童話続編 その4 もしも、音楽を演奏するときは ~ 演奏権>へ


私的使用について

13-A 私たちはどんなときに著作物をコピーしていますか?

13B どういう場合なら、著作権者に無断で利用してもよいと思いますか?(実際の法律がどうであるかは気にしなくていいです)


◎ヒント

複製権(コピーを制限する権利)はとても強力で重要な権利ですが、その制限の例外を著作権法は具体的にたくさん定めています。

その例外規定の中でもっとも身近な存在が私的使用の場合です。

私的使用には法律上のいろいろな問題が潜んでいますが、ここでは基本的な考え方を理解していただきましょう。

なお、現実の私的使用の制度が文化の発展を目的とした作られたかどうかは別の問題です。

☆利用制限の例外