童話続編 その1

もしも、偶然にそっくりの絵を描いてしまったら

ある日、ランジェロとダルマロは二人で町を歩いていました。

「ねえ、ダルマロさん。ちかごろは町で絵を描く人をよく見かけますね。」
とランジェロが話しかけています。

「そうだね、それは良いことなんだが、どうも他人の作品を真似しているやつが多いんだよ。たとえば、ほら。」

といってダルマロは大きな商店の壁に絵を描いている青年の方を指さしました。

童話の挿絵 壁に絵を描く青年

ダルマロはその青年に近づくと、

「おい君、その絵の著作権は誰にあると思ってるんだ!」

と、どなったものですから、その青年はおどろいて、はしごから落ちそうになりました。

「この絵はたのまれて私が描いたものですが・・・。」

と青年が言うと、ダルマロは

「その絵はランジェロが描いた馬の絵にそっくりじゃないか。馬の形とか、馬の背景にある森とか。そんな絵を描くと罰せられるんだぞ!」

「そ、そんな・・・、私はランジェロさんの馬の絵を見たことはありませんよ。」と青年は困った様子です。

するとダルマロは、

「なんだと、あの有名なランジェロの絵を見たことがないと言うのか? 失礼な!」と怒りだしたので、ランジェロはあわてて、

「ちょ、ちょっと待ってください。あの青年は私の絵を見ないで絵を描いているんですよ。それに、そっくりだと言うけれど、筆の使い方が違うし、色使いもぜんぜん違います。たまたまそっくりになったんですよ。」

とダルマロに言いました。

「だけどやっぱり似てるじゃないか。これじゃ、君の馬の絵を売っている私は商売にならないぞ。」

それを聞いて青年は、
「すみません。そんな法律になっているなんて知りませんでした」
とあやまりました。

ランジェロは、
「いえいえ、法律はそういう意味じゃありません。あなたは悪くないし、この絵の著作権はこれを描いたあなたにあります。自分が思い浮かべた絵を描いただけなんですから。」

と言うと、ダルマロをさとすように、

「ねえダルマロさん。著作権の法律は、たくさんの芸術家が育つための法律だったでしょう。それがファイエット先生の願いだったんです。もしこのように、たまたま他人の作品と似たような絵を描いたからといって罰せられるとしたら、こわくて誰も絵を描けませんよ。」と言いました。

「そ、そうか。そうだった・・・。ごめんなさい。」
と言って、ダルマロは青年にむかってペコリと頭を下げました。

童話の挿絵 絵を指さす先生

 

おわり

 

 

 

童話続編 その2 もしも、ありふれた文章を真似てしまったら ~ ありふれた表現>へ


著作物とそうでないもの

11-A たまたま偶然にそっくりな表現になってしまった場合はどうなるべきでしょう。

11-B では、特許発明や商標登録制度の場合はどうでしょうか。著作権との違いはなんでしょう。


◎ヒント

インターネットの分野では、著作物を理解することがとても重要です。

著作権がどのような目的で存在するかのか、権利を保護する方法がどうなっているかを、特許や商標制度と比較して理解していただきたいです。

著作権の基本その1 知的財産とは何だろう

著作権の基本その3 著作物について