プラーゲ旋風とJASRAC 

JASRAC  (Japanese Sosiety for rights of authors, Composers and Publishersの略) 正式名称 社団法人 日本音楽著作権協会
著作権者に代わって音楽著作物の利用者にその利用の許諾を与え、使用者から著作権料を徴収し、それを著作権者に分配する団体。仲介業務法に従い文化庁長官の許可によって業務を行います。
音楽著作権といえばJASRACを抜きには語れません。JASRACは著作権者に代わり音楽著作権を管理する日本で唯一の機関でした。1939年(昭和14年)仲介業務法施行により、文化庁長官の許可をもって設立された公益社団法人です。

 

音楽著作権の仲介業務が開放されました

平成13年10月、仲介業務法は廃止され、代わって「著作権等管理事業法」が施行されした。この法律によって、一定の要件を備えれば、文化庁に登録することでJASRACのように著作権の管理や利用許諾契約等を行えるようになりました。また、登録をしなくても、非一任型と言われる、個別契約を代理する業務が自由に行えます。

 

◆プラーゲ旋風とJASRAC

1931年(昭和6年)ドイツ人ウィルヘルム・プラーゲという人物が、ヨーロッパの主な著作権団体の代理人として、日本での著作権の使用許諾・使用料請求などの活動を開始しました。
その当時の日本では著作権についての認識が薄く、外国の楽曲の著作権に使用料は払われていませんでした。著作者の権利を無視して利用されていたのです。
プラーゲは放送、演奏、出版など幅広い分野で利用者に対し著作物使用料を請求し、裁判を辞さない強硬な態度をとりました。日本ではすでに1899年に著作権法が施行されているにもかかわらず、その後も無断使用が堂々と行われていたのですから文句も言えないでしょうが、当時の音楽関係者にとってはプラーゲが請求する金額を払っていたのでは商売が成り立たず、一時外国の楽曲がNHKでさえ使用できないというほどの困った事態になりました。
これに慌てた日本政府は、1939年(昭和14年)仲介業務法を制定し、社団法人大日本音楽著作権協会(これが現在のJASRAC)に仲介業務の許可を独占的に与え、他の者は仲介業務ができなくなったのです。
このためプラーゲはあきらめて1941年、日本を去ったのでした。これ以来、JASRACはわが国の音楽著作権管理を一手に引き受けてきました。
JASRACは会員との信託契約に基づき著作物の利用に許諾を与え、かつ使用料を徴収し著作権者に分配します。信託契約第1号は島崎藤村だったそうです。第2号は土井晩翠。現在では1万人を超える契約者と450万曲(うち日本の曲90万曲)の作品を管理するにいたっています。また、使用料の徴収総額は年間900億円を超えます。

JASRACホームページへリンク

音楽アーティストの権利

通常、歌手やタレントはプロダクションに所属しています。

プロダクションはマネージャーをつけて、テレビラジオの出演、レコードやCMなどさまざまな仕事の世話をし、その報酬として出演料や講演料を得ます。

その一部を専属料として専属実演家契約によって管理している歌手やタレント本人に分配します。

芸能人がその才能を活かし成功するには、有能なプロダクションの存在が欠かせません。

実演家という人々

 アイドルタレントは主に歌ったり踊ったりするのが専門で、歌詞やメロディーを作るのは作詞家作曲家の仕事です。

歌ったり踊ったりする人を著作権法では実演家といい、実演家は録音権・録画権・送信可能化権・貸与権・貸与による報酬請求権・二次使用料請求権・私的録音録画補償金請求権、といった権利を持っています。

歌をCDにコピーして販売したり、実演したテレビ番組を放送する場合、実演家から許諾(録音権・録画権に基づく)を得る必要があります。

ただし、実際には歌手などの実演家権は専属実演家契約によりレコード会社などに帰属しているので、歌手自身が許諾を行うのではありません。

その反面、レコード会社等は自由に専属アーティストの実演を録音録画する権利をもちます。

歌手は専属アーチストとしてレコード会社等から印税を受け取るのであって、著作権使用料を直接もらえるのではありません。

ところが、最近は歌を自分で作り、その歌を自分で歌うアーティストが多くなりました。

その方が実演家、著作者、両方の立場からの収入が得られるのです。

著作権は音楽出版社に

歌においては作曲家と作詞家が著作者です。しかし、作曲家や作詞家は、その歌の著作権を音楽出版社に譲渡してしまうのが普通です。

というのも、作曲家や作詞家は芸術的な才能はあっても、歌を世に広め著作権を管理して利益を得るのは苦手です。

著作権は、複製権、演奏権、公衆送信権、貸与権など、さまざまな権利を含んでいて管理をするのが大変なので、音楽出版社というプロに任せておく方が合理的です。著作者は歌の著作権を音楽出版社に譲渡する代わりに印税を受け取ります。

ここが著作権料と印税の違いです。著作権料はJASRACがレコードの売上などに応じて徴収し、著作権者(通常は音楽出版社)に分配するものです。

あくまでも著作権料を受け取るのは、著作権者である音楽出版社であって作詞作曲家ではありません(JASRACに著作権管理を任せていない場合は異なります)。

しかし、作詞家や作曲家が依然として著作者であることに変わりありません。著作権は譲渡できても、著作者としての地位は永遠に動かせないのです。

そして、著作者には著作者人格権という固有の権利が著作権法上認められています。

※CD1枚あたりの著作権料は(税抜き価格ー税込価格*5.35%)×0.06
ただし、ジャケット控除というものがあり、計算の対象となるCD売上枚数を一般の販売の場合は出荷数の80パーセント、通信販売なら90パーセントなどとして取り決めている。3000円のCDならおよそ135円程度。

社団法人日本音楽著作権協会 JASRAC
音楽著作権のほとんどを管理する
http://www.jasrac.or.jp/

JASRACネットワーク課
音楽を利用する際の権利処理窓口
http://www.jasrac.or.jp/network/

ネットワーク音楽著作権連絡協議会
http://www.nmrc.jp/

レコード製作者

歌をCDとして売り出すためにはレコードの原盤を制作しなければなりません。

原盤を制作するにはスタジオの使用料などに多大な費用がかかるので、アーティスト自身ではなく、アーティストと専属実演家契約を結んでいるレコード会社や音楽出版社などが原盤制作を行い、原盤権を取得する場合がほとんどです。

レコード会社は原盤権を譲り受けてCDとして大量に複製して流通網に乗せて広告し販売します。

かつては、原盤の制作はレコード会社が独占していましたが、最近では音楽出版社やプロダクション、放送局などが共同して原盤制作を行うことが多くなったといいます。

以上のように、音楽アーティストが楽曲を世に送り出すまでには、実演家、プロダクション、音楽出版社、レコード会社などが互いに役割を分担し合っています。

社団法人 日本レコード協会

再販制度と音楽CD

再販制度とCDジャッケットの標示
著作権を主張するのにCマークがよく使われています。音楽CDにももちろん著作権が関わってきますが、ジャケットのどこを探しても例のCマークは見つかりません。かわりに LXP(再) といった記号が記載されているのに気がつくでしょう。それと 「99.3.10」 といった日付。 これらにはもちろん意味があるので、簡単に説明しましょう。

 (再)マーク、 これは独占禁止法の再販制度に関わりがあります。再販制度とは「再販売価格維持制度」の略語です。独占禁止法(私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律)では数々の不公正な取引を排除する制度が盛り込まれていますが、その不公正な取引のひとつに「再販売価格の拘束」があります。
簡単に言うと、商品の供給元が販売店に対して販売価格を強要する行為です。たとえば、CDの製造販売元が音楽CDの小売店に対し、「このCDを何円で売らないと、おたくとは取引をしないぞ。」と持ちかけるような場合です。
こういった不公正な取引は独占禁止法で一般的に禁止されているのですが、一部の著作物については禁止されていません。これが再販売価格維持制度といわれるものです。現在のところ、再販売価格の維持が可能な著作物は書籍、雑誌、新聞、レコード盤、音楽用テープ、音楽用CDに限られているので、ゲーム用ソフトの再販売価格を維持することはできないということです。

独占禁止法第2条9項抜粋

この法律において「不公正な取引方法」とは、次の各号のいずれかに該当する行為であつて、公正な競争を阻害するおそれがあるもののうち、公正取引委員会が指定するものをいう。

一  不当に他の事業者を差別的に取り扱うこと。

二  不当な対価をもつて取引すること。

三  不当に競争者の顧客を自己と取引するように誘引し、又は強制すること。

◎不公正な取引方法 ~ 再販売価格の拘束 第12項抜粋

自己の供給する商品を購入する相手方に、正当な理由がないのに、次の各号のいずれかに掲げる拘束の条件をつけて、当該商品を供給すること。
一 相手方に対しその販売する当該商品の販売価格を定めてこれを維持させることその他相手方の当該商品の販売価格の自由な決定を拘束すること。
二 相手方の販売する当該商品を購入する事業者の当該商品の販売価格を定めて相手方をして当該事業者にこれを維持させることその他相手方をして当該事業者の当該商品の販売価格の自由な決定を拘束させること。

◎独占禁止法第23条一部抜粋

この法律の規定は、公正取引委員会の指定する商品であつて、その品質が一様であることを容易に識別することができるものを生産し、又は販売する事業者が、当該商品の販売の相手方たる事業者とその商品の再販売価格(その相手方たる事業者又はその相手方たる事業者の販売する当該商品を買い受けて販売する事業者がその商品を販売する価格をいう。以下同じ。)を決定し、これを維持するためにする正当な行為については、これを適用しない。ただし、当該行為が一般消費者の利益を不当に害することとなる場合及びその商品を販売する事業者がする行為にあつてはその商品を生産する事業者の意に反してする場合は、この限りでない。
2  公正取引委員会は、次の各号に該当する場合でなければ、前項の規定による指定をしてはならない。
一  当該商品が一般消費者により日常使用されるものであること。
二  当該商品について自由な競争が行われていること。
3  第一項の規定による指定は、告示によつてこれを行う。
4  著作物を発行する事業者又はその発行する物を販売する事業者が、その物の販売の相手方たる事業者とその物の再販売価格を決定し、これを維持するためにする正当な行為についても、第一項と同様とする。

音楽CDの場合
日本のCDの値段が高いのは再販制度のためだと言われています。日本を除く多くの国では再販制度は撤廃されています。しかし、規制緩和の流れや外国からの圧力などもあって、CDメーカーでは発売後2年を経過したレコード、音楽用テープ、CDについては小売業者が自由な価格で販売できるようにしました。これは時限再販といわれます。通常「(再) 01.3.9まで」と記載があれば、2001年3月9日までは再販価格で販売しなければならないことを示しています。

Lは国内盤のCD、 Xは外国盤のCDであることをしめしています。

pはレコード保護条約の加盟国で方式主義をとっている国においても著作隣接権を保護してもらうための標示です。

なお、最近になって輸入音楽CDに対する規制のための著作権法改正の話が持ち上がっていて、これに関連して再販制度についても論議を呼んでいます。

図書館と著作権法

◆図書館と著作権

 休日に図書館に行くと机はいつも満杯、長引く不況のせいもあって、余った時間を図書館で過ごす人は増えているようですね。図書館は確かに便利です。当たり前のことですが、お金を出して買わなくても本を家に持ち帰って読むことができます。ところが、本を一生懸命書いた著者にとっては、できれば著書を買っていただきたい、というのが正直な気持ちでしょう。図書館という制度はある意味で著作者に馬鹿にならない不利益を強いています。しかし、図書の公共利用は「国民の教育と文化の発展」という重要な役割を果たしています。それに著作権法は、著作者の利益を守るだけではなく、文化の発展に役立つように、権利者と利用者との関係を調整することを目的としています。そんなわけで、図書館を利用するときに意外なところで著作権法がからんでくるのですが、小話で簡単に説明しましょう。

◆小話
ある日、A氏が雑誌コーナーで何気なく手に取ったある経済誌。自分が勤める会社に関するちょっと気になる記事があった。もうすぐ閉館時間なのでコピーして持ち帰ろう。コピー機のそばに行くと「こちらの用紙にご記入ください。」と張り紙がしてある。用紙には「複写申込書」とあった。住所氏名、複写したい本の名前、コピーするページ数まで記入しなければならない。実に面倒だ。たかがコピーするくらいで、どうしてこんなに面倒なのか?。A氏はぶつぶつ言いながら書き込んで用紙を職員に渡した。すると、

「この雑誌は新刊なのでコピーはできません。」

 「・・・!?」

 普通の人ならここであっさり引き下がるのだろうが、ここは一つA氏と一緒に図書館のコピーに関する著作権法にふれてみよう。

 著作権法では、著作権者の権利を守るため、原則として著作権者の許諾なしに著作物を複製することを禁止している(自分が楽しむ目的で本をコピーするのはよい:著30条)。しかし、著作権法31条1項にこんな規定がある。

「図書館は利用者の求めに応じ、利用者の調査研究を目的として、公表された著作物の一部分を、1人につき1部のみ複製できる。」。

「調査研究」というとなんとなくおごそかな感じを受けるが、よく考えてみると、本をコピーする場合はたいていこの定義に当てはまりそうだ。営業目的であったり、遊び半分でという人はほとんどいない。次に、「公表された著作物」でなければならないというが、公表されなければ図書館で見ることはなさそうなので問題ない。とすると、1人につき1部というのはどうか。「えっ、10ページのうち1ページから3ページまでコピーしたかったのに」 というのは問題ない。1部というのは、同じページについて2枚以上のコピーをしてはいけない、ということである。著作権者の保護を考えて、コピーできる枚数は必要最小限に抑えてあるのだ。だから、1部は自分用、もう1部は友人用などというのは法律上引っかかることになる。

 さらにもう一つ。コピーする部分はその著作物の一部分でなければならない。だから本の全ページをコピーすることはできない。だったら自分で金を出して買ってきなさいということだ。しかしながら、雑誌の場合は注意を要する。本の場合はたいてい1冊そのものが1つの著作物である(異論もあります)が、雑誌の場合はたくさんの寄稿によって成り立っている。つまり、著作物の寄せ集めであるとえるのだ。となると「著作物の一部分」とは、雑誌1冊の一部分ではなく一寄稿文の一部分という意味になる。であるから、「××会社の不正を暴く」などという論説の全部をコピーすることはできず、その一部分ならよろしい、ということだ。 といっても、論説の一部分のみをコピーしても意味がないではないか。だから、図書館の職員は「雑誌はコピーできません」と説明することになる。厳密には、コピーはできるが著作物全体のコピーはできない、とA氏に説明するのが筋だが、そんなことをいきなり一般市民に説明しても「こいつはアホか?」と思われるのがオチだ。

 さて、コピーできないことはわかったA氏だが、やるせない思いで雑誌を元の場所に返しに行こうとすると、隣のコピー機で雑誌をコピーしている女性がいる。「なんだ、美人ならいいのか?」などと思ってはいけない。というのも、雑誌については著作権法で特別の規定があるからだ。同法31条1項の括弧書きには、「発行後相当期間を経過した定期刊行物に掲載された個々の著作物にあっては、その全部をコピーしてよい。」 旨が書いてある。要するに、発行から一定期間(通常週刊誌などは1週間)を過ぎた雑誌などは、著作物全体をコピーしてもかまわないということである。週刊誌などの定期刊行物も社会にとって貴重な情報源であるし、定期刊行物は古くなると書店で入手するのが困難なこと等を考慮して定められた規定であろう。

 ところで、図書館では著作物(一定期間を過ぎた定期刊行物を除く)の一部分しかコピーできないことになっているが、100ページある本のうち99ページをコピーするというのはどうか。これは法律に規定はないが、判例によると著作物のページ数の半分を超えると、もはや一部分とは言えないとされているようだ。だから、コピーをするときは、まずその著作物全体のページ数、そして自分がコピーしたい部分のページ数を確認する必要がある。

 さてA氏。この雑誌を図書館でコピーできないことはわかったが、本を借りたあとで近所のコンビニなどでコピーするのなら、私的使用(著30条)にあたるので法律上問題ないははずだ。図書館としては何の制限もできないだろう。あとは本人次第である。さて、これに気づいたA氏、早速例の雑誌を借りて外のコンビニでコピーしようと、雑誌を持って受け付けカウンターへ向かった。すると、

 「図書館の規則で、新刊はお貸しできません。」

ということであった。

          完

◆余談

 図書館での著作物利用については疑問に思うことが多々ありますが、それは本来的に図書館の存在が著作者にとって好ましくないという性質をもっているからだと思います。著作物の一部分しか複製できないということを生真面目に実行すると、市民のイラダチは大きくなります。論説の一部分だけしかコピーできないといっても、一体どこまでがひとまとまりの著作物なのか。地図をコピーするような場合、1ページがひとまとまりであるという根拠はどこにあるのか。そういった中途半端な利用をさせるために図書館が税金で図書を購入して良いのか、といった議論もありうるでしょう。また、図書館は貸与する機関なのに、なんで複製を認めているのか? という議論ももっともでしょう。悩むところです。

私的録音補償金制度

制度の概要

 CD,MD、DVDなどのデジタル方式のコピー機能がついた機器(オーディオ、ラジカセなど)を買うときには、その価格の中に私的録音補償金という名目の著作物使用料が含まれています。
消費者にとってはとても便利なダビング機能ですが、著作権者にとっては無視できない脅威なのです。JASRACやレコード業界、映画業界などの権利者団体は高性能のダビング機器の普及が著作権者の収入に不当な損害を与えていると考え、文化庁に事態の打開を求めました。
そこで1993年に著作権法が改正され、30条2項で一定の録音・録画を行うものは相当の額の補償金を著作権者に支払わなければならないとされ、また、補償金の支払いは機器の購入時に文化庁長官に認可された補償金規定に従って購入者から製造販売業者を通じて指定団体に支払われることになりました。
補償金の額は、複製の態様や機器の性能により多少異なり、だいだい基準価格(最初に流通したときの価格)の1%から3%程度です。

問題点

 著作権法30条1項では、個人的に、または家庭内など限られた範囲内における使用(私的使用)を目的とする複製を使用者に認めています。しかし、同条2項ではデジタル方式の録音録画機器で政令で定めるものを利用して録音録画を行うには、いちいち許諾を得る必要はないが、補償金を支払わなければならないとしました。市販CDなどの録音により現実に著作権者に不利益が生じるとしても、録音を行わないで再生機能のみを使用する人も多いはずですが、これらの人々も一律に補償金を負担することになります。また、著作権保護期間が終了している著作物や、家庭で撮影したビデオ、鳥や虫の声などを録音録画することはもともと自由なはずですが、このような利用のみを目的として機器を購入した場合にも補償金が課されます。 私的録音をしないことを証明すれば、徴収された補償金を指定団体から返還してもらえることが著作権法104条の4第2項でわざわざ規定されていますが、実際に証明をしてまで返還請求をする人はいないでしょうし、どうやって証明すればよいのかもはっきりしません。仮に証明できたとしても、補償金返還後に私的録音をしないことをどうやって証明するのか?また、使用者に証明責任が一方的に課せられることに道義的問題はないのか? また1回の私的録音と100回の私的録音を一律に金銭負担させるのは不公平ではないかなど、問題点を指摘するときりがありません。このような問題があって、日本では長い間この制度の導入は見送られてきました。しかし、技術の進歩によって録音・録画が頻繁になったのも事実です。 ドイツ・オーストリア・オランダ・フランスなどでは早くから(1980年代ころ)この制度が導入されています。アメリカでは1992年に、日本はその翌年です。

参考条文

著作権法第30条の2

2 私的使用を目的として、デジタル方式の録音又は録画の機能を有する機器(放送の業務のための特別の性能その他の私的使用に通常供されない特別の性能を有するもの及び録音機能付きの電話機その他の本来の機能に附属する機能として録音又は録画の機能を有するものを除く。)であつて政令で定めるものにより、当該機器によるデジタル方式の録音又は録画の用に供される記録媒体であつて政令で定めるものに録音又は録画を行う者は、相当な額の補償金を著作権者に支払わなければならない。

私的録音補償金協会

著作権譲渡登録

財産の二重譲渡を防ぐ制度

平成19年10月26日。米国人ケネス・ハワード氏の著作権がケネス・ハワード氏の遺族から第三者に対し二重譲渡された件につき、被告が完了していた著作権譲渡登録を原告の名義として回復するか、または抹消することを求めた東京地裁の裁判で言渡しがありました。(著作権譲渡登録抹消請求事件)

著作権が契約によってAからBに譲渡され、AからCにも譲渡されていたというケースを「二重譲渡」と言います。

この場合、一般的に一番ずるいと言えるのは、著作権を譲渡したAなので、著作権を譲り受けたつもりのBとCにとってはとても迷惑な話です。

不動産売買ではこういうことが珍しいことではなかったため、二重譲渡を防止するために不動産登記制度が重要な役割を果たしています。

家やマンションを買ったあと、何十万円もの登録免許税を払って登記をしている人の中で、不動産登記をする必要性を理解している人は少ないと思います。もしかすると登記することが義務なのだと思っている人が多いかもしれません。

所有権移転の登記は、別に義務ではありませんから、登記しないでほっておいても法律違反ではありませんが、万一、二重譲渡が発生して(つまり売り主から裏切られて)しまったときに備えて登記をしているわけです。

著作権も財産権なので、同じように二重譲渡のリスクがあるのです。

 

著作権の譲渡は先に登録した方が有利

著作権も所有権と同じ財産権なので、著作権法で著作権譲渡の登録制度があり、対抗要件(自分が権利者であることを対抗できる要件)が付与されます。

著作権の登録制度は、あまり知られていないため、登録件数は登記に比べたらゼロパーセントに限りなく近い割り合いでしかありませんが、それにしても不動産並みの価値がある著作権でさえ譲渡登録をしておかないということは、ときに危険なことだと思っていますが、その重要性自体が社会で認識されていませんでした。

今回の判決で、原告は被告が背信的悪意者、つまり原告が先に正当に著作権を譲り受けていたことを知りながら著作権を譲り受け、譲渡の登録をしたのだと主張しました。

しかし、すでに被告が対抗要件を備えている以上は、背信的悪意の立証は原告の負担であり、よほどの確証を得ない限り裁判官は背信的悪意を認めることはできません。

実際のところ、この判決では原告の主張は退けられました。
著作権譲渡登録の重要性を見せ付ける裁判例だったと思います。

 

著作権譲渡登録の利用

今後、著作権の登録制度が徐々に定着してくると思いますし、すでに著作権の二重譲渡に関連するトラブルが増加しています。

トラブルになってしまえば、先に登録した方が有利になるのです。

著作権登録制度自体の問題点も浮き彫りにされてくることになるでしょう。

不動産登記のような緻密な登記規則があるわけではなく、登録審査は文化庁の本庁のごくわずかな人員で処理されていて、法務局に相当する情報管理もなされていません。

著作権登録状況データベースが文化庁のサイトにありますが、これも著作物の題号などごく限られた情報をみれるだけで、いわゆる登記情報に相当するものではなく、完全な登録情報の入手には大変な手間がかかります。

また法制度上の問題点も指摘できるでしょう。
不動産の表示登記のように権利の土台を確定する手段がありませんし、譲渡契約書を添付するにしても印鑑証明ななしに登録できてしまいますから、虚偽の登録は難しくありません。

もちろん、虚偽の登録は公正証書原本不実記載罪などの罪に問われます。

有体物である不動産の売買でさえトラブルになるのですから、登録なしで著作権を譲渡するのは、やはり大きなリスクを背負うことになるのだと認識しておく必要があります。

☆文化庁 著作権登録制度

産業財産権(特許・実用新案・意匠・商標)

人間の知的活動によって生じる、形のない財産に対する権利を無体財産権といい、その一種として産業財産権という権利があります。

産業財産権は以下の4つの法律によって成り立っており、いずれも特許庁での登録によって権利が発生します。

かつては工業所有権と呼ばれていましたが、工業だけでなく産業分野全般に影響するようになったこと、「所有権」という言葉が有体物についての権利をイメージしやすいことなどから現在では「産業財産権」という言葉にあらためられています。

いずれも「産業の発展に寄与するため」に存在する権利です。

 

特許法

特許法は「産業の発展」を目的として発明(自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの)を保護します。発明情報を公開させるために特許という独占権を付与します。

保護期間は出願から20年です。出願してから3年以内に審査請求をしないと、特許登録が可能な発明であるかどうかについて審査されません。

出願情報は「特許情報プラットフォーム」で閲覧することができます。

パテントサロン ※特許庁ホームページ  ※日本弁理士会 Welcome to JPAA

実用新案法

実用新案は、特許と同じく「産業の発展」を目的として「自然法則を利用した技術的思想の創作」である「考案」を保護します。

「考案」は小発明とも言われ、特許制度に比べてより手軽に権利化し短い期間だけ保護される発明です。

特許権は自然法則を利用した技術的思想の創作のうち、より高度なもの(これが発明)、実用新案は同じく自然法則を利用した技術的思想の創作のうち、発明ほど高度ではないが、物品の形状、構造又は組み合わせにかかるもの(考案)を保護しています。出願から10年間保護されます。

 ※特許・実用新案の詳細(特許庁)

 

意匠法

「意匠とは、物品の形状、模様、もしくは色彩または、これらの結合であって、視覚を通じて美感を起こさせるもの」となっています。

簡単にいうと、商品のデザインのことです。

特許や実用新案は技術的・実用的なしくみの創作ですが、意匠は人間に物品の美しさを強調し、何らかの感動や安らぎを与えようとするものです。

意匠法も、意匠を保護することにより産業の発達に寄与することを目的としています。登録から15年間保護されます。

 ※意匠学会 ※意匠に関しては(特許庁)

 

商標法

商標とは、商品やサービスを消費者が識別する決め手となる商品やサービスのマークのことです。

商標は商品の品質に対する消費者の信頼を保証する機能をもちます。また、メーカーにとっては商標を宣伝することにより、商品を消費者に印象付ける機能も果たします。

商標を他人が勝手に使ってしまうと、事業者だけでなく消費者にも損害を与えるおそれがあるので商標に排他的独占的権利を与えて保護しています。

指定された商品又は役務について原則として10年間商標を独占することができますが、10年ごとに登録を何度でも更新することができます。

日本商標協会 ※商標に関しては(特許庁)


著作権との違い

著作権法は、第一条にあるとおり、文化の発展に寄与することを目的としています。 

そして、他の知的財産権と大きく異なるのは、思想感情を表現したときに権利が発生するので、役所への登録や届出なしに権利を主張することができます。

但し、その権利の公表や譲渡などの事実を第三者に対し対抗するため制度として、文化庁で著作権登録業務を行っています。

職務創作の場合の取扱も異なります。たとえば特許の場合は原始的に発明者(自然人の)が特許を受ける権利を持っていますが、著作権法では法人等が著作者としての立場を取得することができます。

 

平成16年の著作権法改正の概要 (平成16年1月1日施行)

◆教科用拡大図書等の作成のための複製

・弱視の児童又は生徒の学習に使う目的で、教科用図書に掲載された文字、図形等を拡大して複製することができるようになった。

・教科用拡大図書(教科用図書における文字、図形等を拡大して作成した教科用図書のこと)を作成する者は、あらかじめ当該教科用図書を発行する者にその通知をし、もし営利を目的として頒布するときは、一定の補償金を当該著作物の著作権者に支払うこととなった。

・第35条の「教育機関における複製」の場合について、「教育を担任する者」だけでなく、「授業を受ける者」も複製することができるようになった。

・インターネットやLANを利用した授業及び試験の実施に対応するため、授業の過程における著作物の公衆送信等を可能とした。

◆映画の著作物の保護期間延長

映画の著作物に限り、著作権の保護期間を公表後50年から70年に改めた。

◆損害額の推定等について

侵害に対し損害賠償を請求がなされた場合に、侵害物品がすでに譲渡されたり公衆送信されていたときは、その譲渡または受信された数量に、侵害された側が販売していれば得られた単位数量あたりの利益を乗じた額を損害の額と推定できる。ただし、この数量は権利者の実施能力を限度とする。など

◆具体的態様の明示義務

訴訟において侵害された側が侵害行為の具体的態様を立証することが困難な場合が多いことを考え、著作権者等が侵害行為等の具体的態様を主張したときに、侵害者とされる者がこれを否認するときは、原則として自己の行為の具体的態様を明示しなければならないとされた。ただし、営業の秘密など、明示できない相当の理由があるときはこの限りではないとされる。

著作権の歴史

原始の時代から

 

世界最古の壁画

南フランスや北イタリアでは、3万年以上も前の洞窟壁画が発見されています。オーストラリアのカカドゥ国立公園には、3万5000年以上も前と思われる壁画があるそうです。

すぐれた芸術作品(著作物)は、人類の歴史とともに古くから作られていたのです。

 

伝達技術の変遷

作品を人に伝える方法は時代とともに変化してゆきました。

石、岩、洞窟 → 木片・粘土板 → 羊の革 →  写本

→印刷 → 写真 → 映画 → 録音 → 放送

(↑著作権の必要性が芽生える)

→デジタル技術(インターネット)

 

著作権のはじまりは出版物の規制

すぐれた著作物は相当古い時代からたくさんありましたが、それを大量につくるとなると、とても難しい問題でした。

大量生産の必要性は特に経典や聖書など宗教的な書物から始まったようです。法隆寺にある「百万塔陀羅尼経」は、現存する印刷部の中でも最古の部類に入ると言われています。

活字印刷技術の歴史では、かつて東洋の方が一歩先んじていたようですが、15世紀にドイツのグーテンベルグが活版印刷機を発明したことにより、聖書がヨーロッパ社会に普及したことが、その後の歴史に与えた影響は大きいものでした。

技術革新を振り返る一品「マルティン・ルターの聖書」ケータイ Watchホームページ

http://k-tai.impress.co.jp/cda/article/todays_goods/17139.html

 

その後、大量印刷が可能になると、出版物の海賊版が出回るようになり、これを規制する試みが始まりました。

イギリスではアン女王により1710年に版権保護の法律が定められ、その後、デンマーク、アメリカ、フランスなどでも出版に関する法律が制定されました。

Britannia http://www.britannia.com/history/monarchs/mon52.html

The History of Copyright http://www.copyrighthistory.com/index.html

著作権に関する国際的な法整備が充分でなかった状況を改善するため、フランスの作家ビクトル・ユーゴー(作「レ・ミゼラブル」など)などが中心になって国際的な著作権保護の運動が活発となりました。

そして、1886年スイスのベルンで各国の代表者が集まり、ヨーロッパ各国が参加する国際的な著作権保護条約が結ばれました。これをベルヌ条約といい、翌1887年に条約は発効しました。

印刷博物館(東京) http://www.printing-museum.org/

 

ベルヌ条約の原則

ベルヌ条約で重要なポイントは次の3つの原則です。

その1 遡及効。条約加盟前に創作された著作物も条約加盟国間で保護するということ。

 

その2 内国民待遇。つまり条約加盟国の著作物については自国の著作物と同様の保護を与えなければならないということ。

その3 無方式主義。これは著作権が成立するのに特別な方式は不要であり、創作されると同時に著作権が成立するという原則です。

その後問題になったのは、アメリカ諸国が加盟しないことでした。

アメリカは中南米諸国とパン・アメリカン条約を結んでいましたが、これらの国は方式主義を採用していたのです。

つまり、これらの国では、著作権が保護されるには法律に定められた特定の手続が必要でした。

方式主義と無方式主義とで著作権の発生の方式が異なれば、国際的な著作権の保護が円滑にすすみません。

そこで、1952年、スイスのジュネーブで万国著作権条約が成立し、3つの重要な取り決めがなされました。

 

万国著作権条約の3つのとりき

 ~ Cマークの始まり

①内国民待遇 ~ これはベルヌ条約と同じです。

②不遡及効 ~ 万国著作権条約に加盟する前の著作物は同条約により保護する必要はないということ。

Cマーク(the letter C enclosed within a circle)による著作権表示
~ これは、無方式主義を採用しているベルヌ条約加盟国の著作物であっても、Cマーク・著作者・発行年月日を適当な場所に表記することにより、方式主義の国において保護を受けられるという制度です。

現在ではアメリカをはじめとするほとんどの方式主義の国が無方式主義へと変わったので、Cマークを定めた万国著作権条約の意義は薄れてしまいました。

しかし、Cマークは今では世界中で定着しており、著作権の存在を主張することに役立っています。

Cマークの表記があれば、著作権を侵害した者が、著作権の存在を知らなかったなどと言い訳しにくいでしょう。

著作権関連法令(CRICのサイトより)

 

明治日本と著作権

日本はベルヌ条約に、早くも1899年に加盟しています。

一日も早く欧米列強と方を並べたかった日本は、ベルヌ条約加盟と引き換えに不平等条約の改正撤廃を実現したかったのです。

国家的面子と著作権保護が引き換えとなりました。しかし、西洋文明を一方的に受け入れつつある当時の日本にとっては、外国著作物の保護は大きな難事でした。

その後ヨーロッパ人が音楽著作権を主張して、プラーゲ旋風が吹き荒れたとき、著作権意識が薄い日本人は、とまどい混乱します。

 

 

著作権表示の注意点

Cマークのはなし

この図形は一般にCマークと言れるもので、著作物が表記される際に、著作権者の名前などと一緒にいろいろな場面で使用されています。

Cマーク

この「Cマーク」(または「マルCマーク」)といわれるマークは、著作者(著作権者)の氏名・著作物の公表年月日とともに、人目に付きやすい適当な場所に表示されることによって、効果を発揮することを期待してつくられたマークです。

効果といっても、現在のところ「Cマーク」には法律的な効果はほとんどありません

万国著作権条約という条約の中で、このマークを表記しておくと、この条約の加盟国で方式主義を採用している国でも著作権が保護されますよ、という取り決めがあります。

世界には、著作権が成立するためになんら方式や手続きを必要としない国(無方式主義)と、登録や表示などを必要とする国(方式主義)とがあり、日本は1899年にベルヌ条約(この条約は無方式主義にのっとっている)に加盟したことにより無方式主義を採用しています。

「・・・その最初の発行の時から著作者(著作権者)の名及び最初の発行の年とともに「C」の記号を表示している限り、その要求が満たされたものと認める。(C)の記号、著作権者の名及び最初の発行の年は、著作権の保護が要求されていることが明らかになるような適当な方法でかつ適当な場所に掲げなければならない。・・・ 」
※(C) はマルCマークのこと

万国著作権条約3条1項では、 Cマーク著作者の名発行の年を著作物の適当な場所に表示することで、方式主義の国においても無法式主義の国と同様に著作物として保護されることになっていましたが、1989年に米国がベルヌ条約に加盟して無方式主義に切り替えたことなどから、現在では方式主義の国は極めて少なく、この意味では法律的な必要性はあまりないようです。

しかし、このマークは広く世界中で使用されてきましたので、著作権の存在をアピールして不当な利用を阻止しようとする心理的効果があるのかもしれません。

アピールするだけのことならCマークや条約の方式にこだわる必要はなく、ただわかりやすければよいということにもなるでしょうから、「All Rights Reserved」とか「Copyright」「著作権者・・・」など、見た人に理解できればどのような表記でも構わないし、表記しないでおくことも自由です。

もちろん嘘の情報やまぎらわしい表記はよろしくありません。なるべくわかりやすい簡潔な表記がのぞましいでしょう。

 

著作物表示における注意点

 

①著作物ととに表記された著作者の推定

あまり知られていないのですが、著作物を表記する際に著作者として氏名を表記した場合には、その表記された人が著作者であると推定されることになります。

ですので、本当はAさんが作者なのにBさんを作者として表記してしまうと、Bさんが著作者であるということになってしまいます。

推定される」ということは、Aさんが真実の著作者であることが証明されない限り、Bさんが著作者であるということが事実であるとみなされてしまうのです。

なお、著作者には氏名表示権という権利があって、もし他人の名前が著作者として表記されていた場合には権利侵害を主張することが可能です。

(著作者の推定)
第十四条  著作物の原作品に、又は著作物の公衆への提供若しくは提示の際に、その氏名若しくは名称(以下「実名」という。)又はその雅号、筆名、略称その他実名に代えて用いられるもの(以下「変名」という。)として周知のものが著作者名として通常の方法により表示されている者は、その著作物の著作者と推定する。

②無名・変名の場合に発生する発行者の権利

著作物を第三者(著作者ではない人)の責任で表示(発行)する際に、著作者の名前を表記しなかったり(無名)、著作者の実名の代わりにペンネーム(変名)を表記した場合には、その発行者は著作者又は著作権者のために差し止め請求権や名誉回復の措置、著作者人格権、などを行使することができます。

もし著作権侵害行為等によって損害が発生している場合には、損害賠償請求や不当利得の返還請求をすることができます。

ただし、著作者名が変名で表記されていて、その実際の作者名が周知である場合と、その変名について「実名の登録」が文化庁で行われている場合には、発行者の権利は発生しません。

著作者が誰であるかが特定できない場合には、世間から見て誰が著作物の管理を行っているのかがわかりませんので、発行者が権利保全のために著作者等に代わって権利を行使できるようにしたものです。

(無名又は変名の著作物に係る権利の保全)
第百十八条  無名又は変名の著作物の発行者は、その著作物の著作者又は著作権者のために、自己の名をもつて、第百十二条、第百十五条若しくは第百十六条第一項の請求又はその著作物の著作者人格権若しくは著作権の侵害に係る損害の賠償の請求若しくは不当利得の返還の請求を行なうことができる。ただし、著作者の変名がその者のものとして周知のものである場合及び第七十五条第一項の実名の登録があつた場合は、この限りでない。
2  無名又は変名の著作物の複製物にその実名又は周知の変名が発行者名として通常の方法により表示されている者は、その著作物の発行者と推定する。

③無名・変名の場合に著作権の寿命が短くなる

著作権は非常に強力な権利です。なぜなら、とても広い範囲で利用を独占でき、しかも世界中のほとんどの国で手続なしに保護されるからです。

たとえば商標登録の場合は、業務上の標章としての使用が対象で、しかも独占の範囲が特定の商品やサービスに限定され、さらには各国ごとに登録されなければ保護されません。

しかし著作権には寿命がありますが、商標権は手続を怠らなければ永遠に保護することが可能です。

そして意外に知られていないのですが、無名又は変名で世間に出回っている著作物の著作権は、その作品が最初に公表されたときから50年間しか保護されません(但し映画の著作物をのぞく)。

著作権法の原則では、著作権の保護期間は著作者が死亡してから50年間となっていますが、無名又は変名の場合は、誰が真実の著作者であるかが世間から認知できないので、死後からの計算ができないのです。

つまり強力な著作権が保護される期間が、本来よりも短くなってしましまいます。

ですので、もし著作権の寿命を50年よりも長くしたいと考えている場合には、その著作物を公表する際に著作者名を実名で表記すればよいのです。

しかし実際には著作者の実名を表記できない場合がよくあります。
そのような場合には、文化庁で実名の登録を行ってください。

実名の登録をしておけば、将来、著作権保護期間で争いになったとしても、文化庁による証明で死後起算の適用を受けることができます。

ピーターラビット、チャッププリン映画など、著作権保護期間と著作者表示をめぐるトラブルが海外作品において目立ってきていますが、日本のコンテンツもそろそろ保護期間切れになる作品が出始めています。

50年後に後悔しないよう、著作者表記は充分検討して判断してください。
また、すでに公表されている著作物でも、著作者が生きている間に実名の登録を受けることができます。

(無名又は変名の著作物の保護期間)
第五十二条  無名又は変名の著作物の著作権は、その著作物の公表後五十年を経過するまでの間、存続する。ただし、その存続期間の満了前にその著作者の死後五十年を経過していると認められる無名又は変名の著作物の著作権は、その著作者の死後五十年を経過したと認められる時において、消滅したものとする。
2  前項の規定は、次の各号のいずれかに該当するときは、適用しない。
一  変名の著作物における著作者の変名がその者のものとして周知のものであるとき。
二  前項の期間内に第七十五条第一項の実名の登録があつたとき。
三  著作者が前項の期間内にその実名又は周知の変名を著作者名として表示してその著作物を公表したとき。

☆なお文化庁では「自由利用マーク」と呼ばれるマークの利用を推進しているようです。詳しくは文化庁のホームページをご覧ください。
※文化庁「自由利用マーク」