コンプライアンスとは

コンプライアンスとは「ルールを守ること」。「法令遵守」とも言われますね。

ルールを守らないなんて、人として許されませんね。ルールを守らない人は悪い人ですね。確かに、そうではありましょう。

それでは。あなたは、この世の全ての法律やルールを守っていますか?

自分はすべての法律やルールを守っているし、これからも守り続ける。

と宣言できますか?

私がこれまで見てきた風景では、人は、法律やルールを知れば知るほど、責任が重くなればなるほど、「ルールを守れない自分」に直面します。

では、「ルールを守らないあなた」は悪い人でしょうか?

さらには、ルールさえ守っていれば、あとはどうでもいいのでしょうか?

社会において、ルールは守られなければならないもの、とても大切なものです。

しかし、ルールの奴隷になってしまっている人を見て、嫌な気分になったりしませんか。

人はルールを守るために生きているのではなく、ルールが人のためにあるのです。

ルールは人が人のために作ったものですから、私たちが法律やルールを心地よく使おうとしなければ、ルールは有害なものにもなりえます。

かつて、そういう間違いによって大きな戦争を経験したこともあります。

ならば、コンプライアンスはどうあるべきか。

その疑問をもって、1999年、この「COZYLAW.COM」を作りました。

ルールをどう守るか」は「どう生きるか」と同じです。

著作権のひろば」も、ルールを覚えるのではなく、自分で考え、意見や疑問を持ち、ときに議論することが大切だと考えて、「童話で考える著作権」を設置することにしました。

一方で私は、風営法という法律にも取り組んでいます。

著作権法が「日の当たる法律」ならば、風営法は「日の当たらない法律」とも言えます。

この両極端な位置にある法律を見ていると、この社会のコンプライアンスは「きれいごとのコンプライアンス」になっているように見えます。

形ばかりの、実態のない、ただ批判や対立から逃れようとするだけのコンプライアンスは、もう行き詰まっています。

ですので、私は

「コンプライアンス」=「ルールを守ること」

とは考えていません。

私たち一人ひとり、会社ごとに、それぞれのコンプライアンスがあって、それがどうあるべきかは、法律の条文やマニュアルやルールブックをいくらのぞき込んでも見つからないものだと考えています。

あなたはルールをどのように守りますか? 

答えはあなた自身にあります。

それを真剣に考えることが本当のコンプライアンスだと思います。

おわり

 


「真のコンプライアンスセミナー」

管理人はこのような考えのもと、「真のコンプライアンス」というセミナーを行っています。

複雑化するこの社会では、「ルールを覚えて守ればいい」という単純な発想は、通用しないばかりか、ときに危険でもあります。

法令遵守を叫ぶ前に、現実に存在する様々なリスク、経営方針(生き方)など、考えるべき大事なことがいろいろあります。

自分がルールをどのように守ってゆきたいかを考えていただくことがセミナーの主旨です。

きっと刺激的で面白く、そして終わったときには気分がモヤモヤしているでしょうが、継続して行うことで効果が発揮されます。

もしコンプライアンス研修をご検討されるなら、ぜひ一度、お問合せください。

 

相模原市南区相模大野8-2-6 第一島ビル4F

総合法務のぞみ合同事務所/のぞみ総研
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℡042-701-3010 コンプライアンス担当 日野

著作権侵害の民事責任

著作権侵害は不法行為の一種

<他人に迷惑をかけたら、その損害を賠償する責任がある>
これは誰でも知っている当たり前のことですから、法律の知識がなくてもわかります。
それでも民法という法律には一応、次のようなことが書いてあります。

  • 民法709条
    故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

これを不法行為の原理といいます。不法行為の種類にはきりがなく、いろいろな迷惑行為がこれにあたりえます。現代社会では、他人がせっかくつくった価値ある作品を勝手に利用してもうけることは迷惑なこと、つまり不法行為だと考えることができます。
不法行為だから、それによって生じた損害を賠償しろと請求することができます。これは同時に著作権の侵害でもあります。著作権を侵害するということは不法行為の一種なのです。

ですので著作権を侵害された人は不法行為の原理(民法709条)をもとに、相手方に対して損害賠償を請求でき、相手方がそれに応じないときには、民事裁判手続きを経ることによって国家権力で強制的に賠償をさせることができます。

 

不法行為と著作権法の存在意義

もし自分の作品が許諾なしに利用されたときに、著作権法がなかったとしても、不法行為の原理をもとに損害賠償を請求することはできます。しかし、他人の作品を勝手に利用することが不法行為であるかどうかをいちいち説明しなければ裁判所が承知してくれないとしたら面倒です。
著作権法があるおかげで、作品を無許可でコピーすることなどが著作権侵害である、すなわち不法行為にあたるということが明らかになりますし、権利侵害になるかどうかの切れ目が著作権法に具体的に書いてありますので、解釈がわかれにくくなります(あいまいさは残りますが)。
さらに、将来著作権を侵害される可能性があるときや、今著作権を侵害されているという場合には、著作権法にもとづいて、その侵害行為を予防したり、今行われている侵害行為を停止させるなどの請求をすることが著作権法において認められています。
また、著作権法では著作権などの権利を侵害した者に対して刑事罰が定められています。

  • 著作権法第112条 (差止め請求権)
    1 著作者、著作権者、出版権者、実演家又は著作隣接権者は、その著作者人格権、著作権、出版権、実演家人格権又は著作隣接権を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防のための請求をすることができる。
    2  著作者、著作権者、出版権者、実演家又は著作隣接権者は、前項の規定による請求をするに際し、侵害の行為を組成した物、侵害の行為によつて作成された物又は専ら侵害の行為に供された機械若しくは器具の廃棄その他の侵害の停止又は予防に必要な措置を請求することができる。

親告罪のこと

親告罪とは、被害者が犯人を知った日から6ヶ月以内(期間につき例外あり)に告訴(被害者が捜査機関に犯罪者の処罰を要請すること)しないと捜査機関(検察官)が公訴(刑事裁判を提起すること)できない罪のことです。

原則として捜査機関は犯罪行為を独自の判断で捜査し、公訴できますが、親告罪では告訴がなければ公訴(裁判所に対して刑事裁判の開始を請求すること)することができません。

親告罪にはこのほかに「過失傷害罪」「名誉毀損」「親族間の窃盗又は恐喝」「非営利目的の略取又は誘拐」「強姦罪」「侮辱罪」「器物損壊罪」などがあります。

著作物を無断で利用されているかどうかは第三者にはわかりにくいことですし、著作者が自由な利用を認めている場合もありえる、ということもあって著作権侵害の多く(全てではありません)は親告罪です。

コピープロテクトを不能にするプログラムを販売する行為、引用等の際の出所明示義務違反などは公益上の必要性を含むので親告罪ではありません。

著作者死後の人格権侵害の場合は遺族が存在しない場合を想定してか親告罪ではありません。


なお著作権法の親告罪の規定を撤廃する法改正の動きがあります。

 

以下、関係条文抜粋

刑事訴訟法第二百三十五条
第一項  親告罪の告訴は、犯人を知つた日から六箇月を経過したときは、これをすることができない。ただし、次に掲げる告訴については、この限りでない。
一  刑法第百七十六条 から第百七十八条 まで、第二百二十五条若しくは第二百二十七条第一項(第二百二十五条の罪を犯した者を幇助する目的に係る部分に限る。)若しくは第三項の罪又はこれらの罪に係る未遂罪につき行う告訴
二  刑法第二百三十二条第二項 の規定により外国の代表者が行う告訴及び日本国に派遣された外国の使節に対する同法第二百三十条 又は第二百三十一条 の罪につきその使節が行う告訴

 

第百二十三条  第百十九条、第百二十条の二第三号及び第四号、第百二十一条の二並びに前条第一項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
2  無名又は変名の著作物の発行者は、その著作物に係る前項の罪について告訴をすることができる。ただし、第百十八条第一項ただし書に規定する場合及び当該告訴が著作者の明示した意思に反する場合は、この限りでない。

第百二十四条  法人の代表者(法人格を有しない社団又は財団の管理人を含む。)又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、次の各号に掲げる規定の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人に対して当該各号に定める罰金刑を、その人に対して各本条の罰金刑を科する。
一  第百十九条第一項若しくは第二項第三号若しくは第四号又は第百二十二条の二第一項 三億円以下の罰金刑
二  第百十九条第二項第一号若しくは第二号又は第百二十条から第百二十二条まで 各本条の罰金刑
2  法人格を有しない社団又は財団について前項の規定の適用がある場合には、その代表者又は管理人がその訴訟行為につきその社団又は財団を代表するほか、法人を被告人又は被疑者とする場合の刑事訴訟に関する法律の規定を準用する。
3  第一項の場合において、当該行為者に対してした告訴又は告訴の取消しは、その法人又は人に対しても効力を生じ、その法人又は人に対してした告訴又は告訴の取消しは、当該行為者に対しても効力を生ずるものとする。
4  第一項の規定により第百十九条第一項若しくは第二項又は第百二十二条の二第一項の違反行為につき法人又は人に罰金刑を科する場合における時効の期間は、これらの規定の罪についての時効の期間による。

著作権侵害の刑事責任

刑事罰

刑法という法律の中で、「こういう悪いことをした人に対しては、国家がこういう刑罰を与える。」と書いてあります。その「悪いこと」を犯罪と言います。

日本の刑法では、犯罪に対する刑罰として「死刑、懲役、罰金」などがあります。

例えば、人の財物を盗んだ人は「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金」という刑罰が与えられることになっています。

人に対して刑事罰を与えるためには、警察や検察などの犯罪捜査機関が裁判手続きのルールに従って証拠を集め、裁判において有罪判決を得る必要があります。

 

著作権を侵害することは犯罪

著作権法では、著作権などの権利を侵害することについて刑事罰が定められています。
著作権法違反で刑事罰が課されることは実際にはあまり多くありません。音楽CDの違法コピーや営利目的のデータアップロードなど、とくに悪質なケースが対象になることが多いようです。
しかし最近では営利性が薄いケースでも摘発される事例がでており、社会的に影響の大きいケースでは見せしめとしてニュース報道されることもあります。今後、刑事罰が適用される範囲は広がってゆくでしょう。

主な罰則は次のとおりです。

◎その1 <119条> 
1、著作者人格権、著作権、出版権、著作隣接権を侵害すること
2、著作権法違反となるようなコピーをするために自動複製機器(コピー機)を使わせること

・この場合の罰則は 5年以下の懲役又は500万円以下の罰金

※ ただし親告罪です。

※ 罰則につき法改正あり(後述)

 

◎その2 <120条>

1、著作者が亡くなったあとで、著作者が生きていたら許さないような人格権の侵害をすること
・この場合は 500万円以下の罰金

◎その3 <120条の2> 

1、技術的保護手段(コピープロテクト)を不能にするプログラムを譲渡したり世に広めること

2、コピープロテクトを不能にする業務をおこなうこと
・この場合は 500万円以下の罰金

◎その4 <121条>

1、真実と異なる著作者名を表示して著作物の複製物を頒布すること
・この場合は 1年以下の懲役又は100万円以下の罰金
※ ただし親告罪です。

◎その5 <122条>

1、著作物や実演の利用(48条で定める場合)に際し、著作物の出所明示義務に違反するとき
・この場合は 50万円以下の罰金

 

◎法人の違反行為 <124条>
これらの違反行為を法人代表者や、法人または個人の代理人・使用人・従業員がその業務に関して行った場合は、その行為者だけでなく、雇っている法人・個人に対しても罰則の適用があります。

 

◎著作権法改正(平成19年施行)について

著作権等(著作者人格権等を含みません)侵害罪の懲役刑及び罰金刑、並びに秘密保持命令違反罪の法人処罰に係る罰金刑の上限について、特許法等と同様の水準に引き上げられました。(第119条第1項及び第124条関係)

(懲役刑) 5年以下の懲役 → 10年以下の懲役(罰金刑) 個人 : 500万円以下の罰金 → 1,000万円以下の罰金
法人 : 1億5,000万円以下の罰金 → 3億円以下の罰金

※平成19年7月1日施行改正著作権法について(文化庁)

 

関係法令

著作権法
第八章 罰則

第百十九条  著作権、出版権又は著作隣接権を侵害した者(第三十条第一項(第百二条第一項において準用する場合を含む。)に定める私的使用の目的をもつて自ら著作物若しくは実演等の複製を行つた者、第百十三条第三項の規定により著作権若しくは著作隣接権(同条第四項の規定により著作隣接権とみなされる権利を含む。第百二十条の二第三号において同じ。)を侵害する行為とみなされる行為を行つた者、第百十三条第五項の規定により著作権若しくは著作隣接権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者又は次項第三号若しくは第四号に掲げる者を除く。)は、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
2  次の各号のいずれかに該当する者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一  著作者人格権又は実演家人格権を侵害した者(第百十三条第三項の規定により著作者人格権又は実演家人格権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者を除く。)
二  営利を目的として、第三十条第一項第一号に規定する自動複製機器を著作権、出版権又は著作隣接権の侵害となる著作物又は実演等の複製に使用させた者
三  第百十三条第一項の規定により著作権、出版権又は著作隣接権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者
四  第百十三条第二項の規定により著作権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者

第百二十条  第六十条又は第百一条の三の規定に違反した者は、五百万円以下の罰金に処する。

第百二十条の二  次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一  技術的保護手段の回避を行うことを専らその機能とする装置(当該装置の部品一式であつて容易に組み立てることができるものを含む。)若しくは技術的保護手段の回避を行うことを専らその機能とするプログラムの複製物を公衆に譲渡し、若しくは貸与し、公衆への譲渡若しくは貸与の目的をもつて製造し、輸入し、若しくは所持し、若しくは公衆の使用に供し、又は当該プログラムを公衆送信し、若しくは送信可能化した者
二  業として公衆からの求めに応じて技術的保護手段の回避を行つた者
三  営利を目的として、第百十三条第三項の規定により著作者人格権、著作権、実演家人格権又は著作隣接権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者
四  営利を目的として、第百十三条第五項の規定により著作権又は著作隣接権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者

第百二十一条  著作者でない者の実名又は周知の変名を著作者名として表示した著作物の複製物(原著作物の著作者でない者の実名又は周知の変名を原著作物の著作者名として表示した二次的著作物の複製物を含む。)を頒布した者は、一年以下の懲役若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

第百二十一条の二  次の各号に掲げる商業用レコード(当該商業用レコードの複製物(二以上の段階にわたる複製に係る複製物を含む。)を含む。)を商業用レコードとして複製し、その複製物を頒布し、又はその複製物を頒布の目的をもつて所持した者(当該各号の原盤に音を最初に固定した日の属する年の翌年から起算して五十年を経過した後において当該複製、頒布又は所持を行つた者を除く。)は、一年以下の懲役若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一  国内において商業用レコードの製作を業とする者が、レコード製作者からそのレコード(第八条各号のいずれかに該当するものを除く。)の原盤の提供を受けて製作した商業用レコード
二  国外において商業用レコードの製作を業とする者が、実演家等保護条約の締約国の国民、世界貿易機関の加盟国の国民又はレコード保護条約の締約国の国民(当該締約国の法令に基づいて設立された法人及び当該締約国に主たる事務所を有する法人を含む。)であるレコード製作者からそのレコード(第八条各号のいずれかに該当するものを除く。)の原盤の提供を受けて製作した商業用レコード

第百二十二条  第四十八条又は第百二条第二項の規定に違反した者は、五十万円以下の罰金に処する。

第百二十二条の二  秘密保持命令に違反した者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
2  前項の罪は、国外において同項の罪を犯した者にも適用する。

著作権は意味を考えて使いましょう

著作権という権利は「文化の発展」のために創作者に与えた権利です。権利というものを、国家からもらったもの、たとえば商品券とか引換券みたいなものと同じような意味だと勘違いしてしまうと、「法律に権利があると書いてあるから権利を持つ自分の主張は絶対正しい」と思い込んでしまうことにつながります。たとえばこういう人がいます。

ワタシ 「怒っている理由は、何か迷惑なことをされたからですか?」
相手  「私の権利を侵害されたのです」
ワタシ 「具体的にどのような損失が発生したのですか?」
相手  「権利を侵害されたことが損失です。私にはヤメロという権利があるのでしょう?」

迷惑だから怒っているのではなく、自分の「ヤメロ!」と言う権利が侵害されたと思って怒ってしまうのです。権利は与えられたものだから、精一杯使いきらないと損だ、という感覚を持っている人がいます。しかし「権利」という言葉には「正義」に似たような意味が含まれています。その「正義」は「法律に書いてあるから」ということではなく「道理に合っている」、と考えるべきものだと思います。道理に合わない主張をするために権利を使うことはできません。たとえば民法の第一条には私法の原理として重要な次のような条文があります。

  • 民法第一条
    ① 私権は、公共の福祉に適合しなければならない。
    ② 権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。
    ③ 権利の濫用は、これを許さない。

権利には役割があるのですから、その使い方を考えて、道理に合った使い方をしなければ通用するものではありません。著作権法は誰かの欲得や個人的な都合のために存在する権利ではなく、「文化を発展させる」という目的で、権利者と利用者の関係を調整するための権利です。権利は使用・用法をよくわきまえて正しくご使用ください。

 

クリエイターのための契約のポイント

契約書に盛り込む内容

デザイン、イラスト、楽曲、映像、原稿など、著作権に関係するクリエイターのための契約の際の基本的な考え方と契約書の作り方を解説します。著作物の契約に特有な著作権法上の注意点も解説します。

契約の当事者の記載と署名捺印

契約書には、誰がどのような立場で契約したのかを明らかにします。

契約内容に合意した証拠として、契約当事者の署名捺印が必要です。

社判(会社の事務でよく使うスタンプなど)を使用することがよくありますが、住所氏名はなるべく本人直筆で記載することが望ましく、少なくとも氏名くらいは本人の署名にした方がよいでしょう。

押印を省略する場合が多いかもしれませんが、せめて認め印、重要な契約であれば実印とともに印鑑灯篭k証明書を添付することが望ましいです。

法人であれば法務局の、個人であれば市区町村での印鑑登録証明の制度があります。

 

印鑑登録のあれこれ

「印鑑・実印登録」の仕方から「印鑑登録証明」の取り方までをご紹介

契約した日付

「その契約日には旅行に行っていました。だから契約は結んでいません」

などといわれないためにも、契約内容を特定するためにも、日付けは重要です。

日付けは空欄にしたりしないで、署名捺印した日(契約合意した日)を記入しましょう。

いい加減な日付けを記入すると、その日は海外旅行に行っていました、なんて言われて契約書を否認されては困ります。

日付だけでなく、契約を調印した場所を書き込むのもよいでしょう。

 

契約内容 ~ 絶対大丈夫な契約はありえない

後で争いが発生しないように、大事なポイントをきっちり押さえておきましょう。

大事なポイントとは何か。それはケースバイケースですが、「契約自由の原則」という法律の考え方があり、公序良俗に反するとか、特別な法律に違反するとか、そういった特殊な事情が無い限りは契約内容が尊重されます。

「もしこういうことになったらどうしよう!?」

というふうに、万が一のことをあれこれ想像してみてください。

将来争いになりえる部分を契約書に書いておけばよいのです。

契約書は万が一のトラブルに備えて作成するものですが、「あの人は信頼できる人だから、そこまで書きたくない」という人が多いです(私も含めて)。

しかし、そういう人が裏切られている話がたくさんあるのも現実です。

詐欺師は、99パーセントの事実と誠意を見せて、最後の1パーセントで裏切るのです。

99パーセントの事実をみて油断をしたらだまされると言うことです。

これも時と場合によりますが、契約は万が一に備えるものだと言うことをお忘れなく。

著作物利用

著作権に関する契約に特有の重要事項

著作物の特定

契約の対象となる著作物を具体的に特定しましょう。これが明確にならないと、契約の意味が無くなります。制作委託契約の場合なら、その委託される作品の仕様書きによって特定できますが、もし可能であれば著作物の写しを貼付するなどしましょう。(別紙として添付するならページの継ぎ目に契印をお忘れなく)

誰が著作者なのか

契約の対象となる著作物の著作者が誰なのかを明確にしておきましょう。

著作者が誰かによって著作権保護期間に影響しますし、著作者人格権に関する権利処理においても重要な意味があります。

職務著作でない限りはクリエイター個人が著作者ですから、クリエイターが著作物についての全ての権利を原始的に保有していますが、契約上で、「すべての権利は注文主に原始的に帰属する」といった取り決めがよくみられます。

契約で「原始的に」著作者の地位を移転するのは著作権法上おかしな点を含みますが、すくなくとも権利が注文主に帰属していることについて合意されていると解釈できます。

制作に法人が関係している場合には、著作者がクリエイター個人なのか、または職務著作(著作権法第15条)の規定にもとづいて雇い先である法人等が著作者なのかについてあらかじめはっきりしておきましょう。

 著作権譲渡

基本形態をどうするか

著作物を他人に利用させて、著作権は自分に残す場合 

著作者に著作権が残り、他人には利用のみを許す、いわゆる「利用許諾契約」です。

誰にどこまでの利用をどの期間まで許すのか

著作者はほかの人間に利用を許してもよいのか(独占的利用なのか)

もし契約違反をしたらどうするのか

利用の際の著作権表示はどうするのか

利用者が新たな第三者に利用させたい時はどうするのか

改変をしたいときにはどうするのか

支払時期は

といったところがよく問題になります。

権利を相手に譲ってしまう場合

著作者が著作権の全部または一部を他人に譲り渡してしまう契約です。

著作者人格権についての取り決め、二次的利用権についての取り決め、権利移転の事実を登録するかどうか、対価の支払いを滞った時のこと、期限のこと、譲渡の条件、などがよく問題になります。

とくに著作権法第61条第2項に注意してください。

特約がない限り、著作権法第27条(翻訳権と翻案権)と第28条(二次的著作物利用権)の権利は譲渡人に留保されたと推定されます。

もしこれらの権利全てを譲渡する場合には、その旨を契約上明らかにしておく必要があります。

(著作権の譲渡) 第六十一条
1  著作権は、その全部又は一部を譲渡することができる。
2  著作権を譲渡する契約において、第二十七条又は第二十八条に規定する権利が譲渡の目的として特掲されていないときは、これらの権利は、譲渡した者に留保されたものと推定する。

 

その他

A, 営業の秘密が漏れたり、版下や企画書が外部に漏れて業務に支障がでないよう、互いに秘密を守る義務を課す場合もあります。契約に直接関係無い第三者の秘密についても注意が必要です。

B、品質保証についての定め
 第三者の著作物やアイデアを二次利用していたり、または不正にコピーしていたりといったことが心配されるので、そういったことがないという(当り前のことですが)こと、要求された仕様どおりの作品を納品することの保証や責任を定めることがあります。

C、第三者とトラブルになった時の定め
権利を侵害されたり、または他人の権利を侵害する結果になったときに、だれが窓口となり責任を負うのかをあらかじめ決めておきます。

D、裁判になったときの裁判所の管轄について
 相手の都合で自分の住所から遠くはなれたところを裁判管轄地にされてしまうと、万一裁判になったときに交通の負担が大きく、一方的に不利な状況になるおそれがあります。裁判管轄についても、必要であれば取り決めをしておく必要があります。

E、著作者の権利を大切に
公序良俗に反しない限り、契約内容は当事者が自由に決めることができます。つまり著作権法が著作者を保護するためにせっかく定めた規定も、契約によって無意味なものにすることができるのです。
(著作権法第61条の規定に注意)

  • A,秘密保持についての取り決め

著作者人格権

※クリエイター保護のための著作権法規定

・著作者人格権(氏名表示・公表・同一性についての権利)・著作権は排他独占的権利であること・著作権を譲渡したり、質権を設定する権利・「著作物を利用する権利」の譲渡を制限する規定

・著作権を譲渡しても特約の無い限り、翻訳、編曲、変形、翻案などに関する権利、及び二次的著作物の利用に関する権利は譲渡人(著作者)に残される

(民法上は利用債権が譲渡可能であることの例外)

上記の規定は、契約で特に取り決めない限りは効果が存続しますから、著作者にとって有利に働きます。これらの権利を放棄するときは、その意味を理解してから契約してください。

※文化庁の著作権契約書作成支援システムで簡易な契約書が作成できます。

契約の基本

契約する前に注意して欲しいこと

大人の常識 契約の際の注意点

契約する前の注意ポイント

契約の相手方は信頼できるのか?

うまい話には裏がある」と言います。

また「普通の話に見せかけた巧妙なウソ」もあります。

相手方の話が真実なのかどうか「裏付け調査」をしたり、その相手方をよく知っている第三者に聞くなど、ダマされていないかどうかを納得がゆくまで調べてください。

外見や肩書きだけで判断してはいけません。企業の社長と名乗る人が本当に社長なのかどうかをどうやって判断しますか。

もし別人であれば、その人物と契約をしても、その契約はあなたが望む企業には通用しません。

ある企業の社長とたまたま同姓同名であることを利用して、詐欺をたくらむ人間もいます。

契約の前に、登記情報や信用できる第三者の情報など、いろいろな角度からのチェックが必要です。

信用調査の方法としては、相手が法人であれば、法務局で商業登記情報を確認することです。登記情報は誰でも閲覧することができます。

最近はほとんどの法務局は電子化されていて、最寄の法務局で全国の登記簿情報の閲覧や登記事項証明書の交付請求が可能ですし、手続きをすればインターネットでも利用可能です。

郵送による請求も可能です。商号と本店所在地がわかれば確認できますので、取引の早い段階で確認するとよいです。

会社の情報のほか、代表者の住所氏名を確認することもできます。詳しくは管轄の法務局にお問い合わせください。

法務局ホームページ

商業・法人登記簿の謄本の交付等の申請

個人事業者または事業者ではない個人が取引相手であれば、住民票や運転免許証などの身分証明書で身元の確認が可能ですが、個人の場合は本人が任意でこれらの証明書類を提供してくれない限りは入手できません。

信頼できそうな相手であっても、重要な契約の場合には身分確認をしておくべきです。

万一のことを考えると、家族全員の情報と本籍地、過去の住所移転の履歴の記載がある住民票で確認することをおすすめします。

公的書類の記載情報が多いほど矛盾や不審な点に気がつきやすいものです。本人の顔写真つきの証明書も重要です。

契約の相手方の支払い能力は?

相手方が誠実に契約を守る気持ちがあったとしても、実際に契約を実行する能力がなければ意味がありません。

誠実な人でも、自分の能力を過大に評価していたり、将来の見通しが甘かったりすることがあります。

契約は「万が一」のことを必ず考えてください。

相手方の能力に不安があるときには、信用のある保証人をつける、担保を設定する、保証金を預かる、といったような配慮も必要です。

たとえ後日、民事裁判で勝ったとしても、支払能力のない人からお金を取り戻すことは実際にはできないのです。

相手方の取引口座や取引先を知っておくことも重要です。万一、法的措置を取る際には有力な情報になりえます。

また、相手方の資産状況が把握できればなおよいです。不動産の所在や自動車の種類など、誰の名義でどのような状態であるかを知っておいて損ではありません。

不動産については、土地家屋の地番や家屋番号がわかれば、不動産登記簿を誰でも閲覧することができます。

不動産登記簿の甲区欄には所有者の住所氏名のほか、差押等の情報が記載されており、乙区欄には抵当権などの情報が記載されていて借り入れ状況が把握できます。

なお、不動産物件を法務局で閲覧する場合、住居表示をもとに閲覧または交付申請しても物件を特定できないことがよくあります。

この場合は法務局備え付けの地図(ブルーマップとも呼ばれる)で地番等を確認できますが、地図はその法務局の管轄エリア分しかありません。。

 

相手方に契約する権限はあるのか?

契約の相手方が、本当にその契約をする権限があるのかどうかを考えましょう。

相手が法人の場合、その法人の代表者、または営業支配人など一定の責任を負う立場の人でなければなりません。

またはそういった権限を持つ人物から契約締結の委任を受けた人物でもかまいませんが、その場合は委任状を用意してもらいましょう。

権限の確認をいい加減にしてしまうと、後でトラブルが起きた時に「その人間は退職しました」とか「そんな契約は聞いていません」とか、「その印は当社の印ではありません」などという話になりえます。

重要な契約の際には、印鑑証明書と資格証明書などを契約の際に提示してもらうことも大切です。

印鑑証明書と資格証明書についてのリンク(福島地方法務局)

 

個人と法人どちらの立場で契約する?

契約を締結する人物が、法人の代表者なのか、それとも個人で契約するのか、といったことも注意が必要です。

世間では個人よりも有限会社、有限会社よりも株式会社の方が信用があると思われがちですが、それも時と場合によります。

傾きかけている会社よりも社長個人の方が資産も信用もしっかりしているということはよくありますので、同じ人物でも「法人の代表者」として契約するのか、「個人として」の契約なのかをよく考える必要があります。

 

法律行為の能力はあるのか

相手方が未成年者や成年被後見人、被保佐人であると、法律行為能力が制限されているため、後で契約が取消されるおそれがあるので注意が必要です。

未成年者が契約する時(宮城県のサイト)

成年後見制度(法務省)

 

その他、全体的に見て不自然なところはないか?

相手方に関する情報はできるだけ広い範囲からできる限り多くあつめましょう。

実際に相手方の事務所等に出向くことも重要です。

職場や社員の雰囲気におかしいところがあれば、何か理由があるはずです。

電話の応対や取引先の噂なども判断材料になりえます。

どこかおかしいと思ったら、その疑問を捨てないで、よく調査することです。

これらのことは契約締結前に済ませておきましょう。

取引に「絶対大丈夫」はありえません。絶対大丈夫なら契約書など必要ありません。

リスクは常にあるということを肝に銘じましょう。

契約の基本

クリエイターのための契約のポイント

契約とは何か 契約の基本的な考え方を初心者向けに解説

契約は権利と義務を発生させる「約束」

Aさん : 「その自動車を100万円で売って下さい」

Bさん : 「はい、100万円で売ります」

これで契約は成立しています。そして二人には権利義務が発生しました。

Aさんには「Bさんに自動車を引き渡させる権利」と「Bさんに100万円を支払う義務」が発生しました。

Bさんには「Aさんに100万円を請求する権利」と「Aさんに自動車を引き渡す義務」が発生しました。

 

日常生活は契約であふれている

契約は口約束でも成立します。お互いの合意が成立すればよいのです。ですから日常生活では、契約書を作らない契約がたくさんあります。例えば

ガソリンスタンドで : 「レギュラー10リットル、カードで!」 「はーい」

タクシーで : 「お客さん、どこまで行きます?」 「豪徳寺まで」

自動販売機で : 100円と記載された投入口に100円を入れ、ジュースのボタンを押す。 ガチャン! ジュースが出てきた。

こういったやり取りをたくさん繰り返して、生活が成り立っています。これらは全て契約なのです。

では、契約書というものは一体なんなのか?

 

契約書が必要な理由

ガソリンスタンドの話ですが、客が「10リットル」と言ったのに、店員が「20リットル」のガソリンを入れて20リットル分の料金を請求したとします。

「今日は10リットル分の金しかないんだ!」

「でも20リットルと言ったじゃないですか!」

ということになったらどうでしょう。

本当は口がすべって、客が「20リットル!」と言ったのかもしれないし、店員が聞き違えて「20リットル」に聞こえただけかもしれません。

しかし証拠がないので決着がつきません。

裁判をすることになっても、証拠がないと裁判官も困ってしまいます。

ですから、「万が一のトラブル」を防ぐためには、何か証拠になるものを残しておいた方がよいのです。

 

契約書は証拠の一種

争いを解決するための証拠があるかどうかがとても重要ですが、証拠づくりには法律で定まった方式があるわけではありません。

証拠になるなら、音声の録音でもよいし、第三者の証言でもよいし、そのほかいろいろなものが証拠になれるかもしれません

しかし、一番手っ取り早い方法は、「紙の証拠」です。

紙は持ち運びが楽ですし、書くのも簡単です。では何を書けばよいのか。

契約

 

契約書に書くこと

ガソリンスタンドにとっては、客がガソリン10リットルを注文したことが証明されればよいのです。

ですから、重要な事柄は「注文内容:ガソリン10リットル」という部分ですね。

しかし、ほかの客が書いたものがスタンド側の証拠として悪用したと言われるかもしれませんので、注文した客のサインや印があるとよいですね。

それに、1週間前に20リットル注文した時のものを悪用したと言われるかもしれませんので、いつ注文したのかを示すために日付けを入れる必要があります。

また、その内容を店員が確認したことの証明がないと、客側が勝手に作成するかもしれないので、店員(相手側)のサインも必要です。

つまり、「契約の内容」、「当事者のサイン(署名と押印)」、「合意した日付け」の3つのポイントを押えておかないと、証拠としては不安です。

しっかりした証拠(契約書)があれば、トラブルを防ぐことができますね。

なお、認め印でも契約は充分有効ですが、とくに重要な契約の場合には印鑑登録された印を使うとよいでしょう。印を偽造されたという争いもありうるからです。

 

契約書も時と場合によります

注文されたガソリンが10リットルか20リットルか、といった程度のことでケンカをしたり、裁判をする人はいるでしょうか。

実際は、「まあ、いいや。今お金を下ろしてくるから」とか「では、今回はサービスしておきますから、またご来店ください。」といったやり取りで解決してしまうでしょう。

こんな小さな争いで時間や手間を無駄にしたりケンカをしたくはないからです。

つまり、「万が一トラブルになったときにはえらいことになるぞ」という場合に契約書を作ればよいのであって、大きなトラブルに発展する可能性がないときには、いちいち契約書を作る必要はないと言えます。

もちろん、証拠が簡単に残せる時はできる限り残しておいた方がよいので、注文書、領収書、受領書、などを作ることもあるでしょう。

結局は、「予想されるトラブルの大きさと可能性」そして「証拠を作る手間」を考えて、契約書を作ったり作らなかったりするわけです。

そしてもうひとつ。文書のタイトルにこだわる必要はありません。当事者の合意の内容がわかればよいのです。

内容は「将来主張がくい違ったら困る」部分を予想して書けばよいのです。

専門家につくってもらえばよい、と考える人がいますが、契約の内容は当事者が決めることですから、専門家は本来は脇役であるはずです。

いろいろなアドバイスを参考にしながら、将来のさまざまなトラブルを想定して契約書を作ってみましょう。

契約する前に注意して欲しいこと

クリエイターのための契約のポイント

学校と著作権

学校における著作権指導の重要性について
小中高校のうち約6割の学校が授業で著作権を取り上げているという統計があります。これはインターネットが普及してIT関係の授業が増加していることと関係していると思われます。
インターネット上で情報を発信できる年齢は徐々に低下しています。中学生なら少しパソコンに習熟していれば、ブログや掲示板に情報を掲載できそうです。 ブログや掲示板を見るのは互いに顔を知らない不特定多数の人々、つまり公衆です。
公衆に対して情報発信するということは、ほんの少し前の時代であれば非常に特殊な行為でした。
テレビ局や放送局、新聞社、出版物などを通してしか、公衆に対して情報を発信することはできなかった時代では、一般市民が著作権などの他人の権利を侵害できる可能性は極めて少ないものでした。
しかしインターネットの普及によって、誰でも日常生活の中で公衆に情報を発信できるようになりました。公衆への情報発信は便利である反面、他人の権利を容易に侵害してしまう可能性を秘めていますから、情報発信者にはテレビ局や新聞社が行ってきた配慮と同等の慎重さを持つことが社会から求められます。 しかし現実にインターネットで情報発信している人々の中で、テレビ局並みの知識と慎重さを持っている人がどの程度いるでしょうか。
精神的に未発達で、充分な判断力を持たない子供達(大人でも問題のある人はいますが)でも容易に権利を侵害でき、犯罪的行為を実行できてしまうのがインターネットの特徴です。しかしネット社会になった以上は、社会人としてインターネットを利用させないではいられません。 社会に出る前にインターネットの利用の仕方をきちんと学習しておく必要があります。その中で特に重要な知識が著作権と肖像権に関することです。 著作物とタレントの肖像は、若い世代にとって強い関心の対象となっているからです。

 

著作権の指導方法

著作権を子供達に対して指導する方法については、次のようなものがあります。

1、文化庁が提供するツールを利用する。マンガ、パンフレット、アプリケーション等。
2、想像させる。具体的事例について話し合う。本などを読ませて感想を述べ合う。
3、体験させる。WEBを生徒達に作らせてみる。著作物の利用許諾を取らせてみる。

しかし統計によると、学校の先生方の本音としては、生徒に著作権を指導する前に、先生自身が充分な知識を持つ必要性の方が重大であると考えているようです。 その理由のひとつは、教える側が理解していなければならないという当たり前の理由のほかに、学校の先生自身が著作権を侵害してしまうことについての不安があるようです。
ここで念頭においていただきたいことは、学校で著作権指導が行われる場合に、ルールや法律を守ることが大事である、という点を強調して実施されていることが多いのではないかということです。つまり、一般の市民や事業者の場合よりも法律遵守の義務感が重くのしかかっているという現実があるのではないでしょうか。
ルールや法律を守ることは当然である、と多くの人は考えています。 しかし実際に全ての法律を守って生活している人は意外と少ないものです。そして、ルールや法律どおりの行いができなかった人に対して、それらの全てを批判することができるものでもありません。
これは、「ちょっとした油断でルール違反をしてしまうのは仕方がない」などというテーマではありません。 ルールや法律で物事を白と黒にはっきり分けられない場合がある、という問題です。もしルールや法律があいまいで、善悪を明確に線引きできないのであれば、単純に「ルールや法律を守れ」と言ったところで、「それだけでは無責任だ」ということになります。しかし学校では、白か黒かはっきりしないような指導は問題があるとされることが多いものです。

 

著作権法の知識だけで判断しがたいケース

学校内の合唱コンクールで生徒達が歌う楽曲の楽譜を先生が一冊購入しました。
その楽譜は20ページで10曲が掲載され、一冊2000円で書店で販売されていました。
実際に生徒達が歌う楽曲はそのうちの2曲です。
先生としては次の選択肢のいずれを選ぶべきでしょうか?

A 生徒の人数分を学校でコピーして生徒達に配布する

B 生徒各人で楽譜を購入させる

著作権法の第35条で、授業目的の複製は許諾なしにできるものと考える先生が多いと思います。そこで条文を以下に抜粋します。

  • 第三十五条
    学校その他の教育機関(営利を目的として設置されているものを除く。)において教育を担任する者及び授業を受ける者は、その授業の過程における使用に供することを目的とする場合には、必要と認められる限度において、公表された著作物を複製することができる。
    ただし、当該著作物の種類及び用途並びにその複製の部数及び態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。

後半の但し書き部分が重要です。前半では、授業目的なら複製できる、と書かれていながら、但し書きによってあいまいな結論となっています。
当該著作物の種類、用途、複製の部数及び態様を元にして著作権者の利益を不当に害するかどうかを考えなければならないということです。
私の個人的見解では「B」、つまり生徒各人が楽譜を購入することが著作権法第35条の趣旨に沿う判断であると考えています。
理由として思いつくものを以下にあげてみます。

①合唱コンクール用に編曲されたメロディとしての音楽の著作物は、その利用者の多くが学校であり、もし学校で自由に複製されてしまった場合には、著作権者が充分に経済的見返りを確保できるとは考えにくい。

②楽譜は書店で販売されており、有償で購入されることが出版の前提となっている。

③もし大勢でコピーしてしまったら、売上が減少し、楽譜の単価は高額にならざるを得ないが、その負担は最初に購入した人だけが負うことになる。

④合唱において楽譜を複製することの必然性は、著作権者が受ける経済的損失よりも重大であるとは思われない。たとえ10曲のうちの2曲しか利用しないのだとして、もともと10曲全部を利用するような合唱コンクールがありえない以上は、部分的な使用であることはやむをえない複製であるとは言えない。

 

大事なことはバランス感覚

以上の見解には異論があると思いますが、問題は、このように意見がわかれてしまうという現実です。
先生方によっても意見が分かれるでしょうし、生徒や父兄が判断しても結論は統一できないでしょう。
このようなとき、自分にとって、より厳しい方の判断をしておけば責任を追及される可能性はかなり減るわけですが、それが真実に正しいというわけではなく、ただ保身のことを配慮した結果と見ることもできます。
著作権法は、このようにあいまいな表現をしている場合が多く、最終的には現場の判断に任せてしまっているのです。 法律でさえはっきり答えない部分なのですから、明確な回答は裁判でもしない限り出てこない、という場合がいくらでもあります。これは法律に不備があるということではなく、事柄の性質上やむをえないというか、むしろ当然というべきかもしれません。 学校教育で無断コピーすることの重要性と、著作者の財産的な保護の重要性を比較して、それぞれのケースにおいてどちらを優先させるべきかを考えるバランス感覚というものが市民社会において非常に重要であるという認識を持っている方なら、何の抵抗もなく理解いただけるものと思いますが、重要なことはエライ人が決めたとおりに行えばよいと考えている人にとっては受け入れがたいものでしょう。
学校の状況に関わりなく、日本社会はアメリカ的な市民社会に確実に近づいているところです。ビジネスの現場では「事後チェック型社会」、つまり自分で判断し後で自分が責任を取る、という社会に対応しつつあるのです。あらかじめ決められたルールのとおりに実行すれば問題は生じない、という発想がすでに成り立たなくなりつつあります。
ですので学校では権限と責任を明確にする工夫が重要になるだろうと思います。
となると、著作権指導で重要なことは単純に「ルールを守れ」ということではない、ということです。
もし「ルールを守れ」と厳しく言うならば、「じゃあ先生は100%守っていますか?」と言われたときに、きちんと説明し納得を得られる能力が必要となります。

 

どのような対応が理想的か

これについては私の偏見でもあるし、勝手な解釈でもありますが、私は、「最終的に全ての人間から納得を得られればそれでよい」と考えています。だから、全ての人から(現実には9割でも充分でしょう)納得を得られるように上手に説得をすればよいと考えます。
「ルールや法律を守っている」という事は、他人から納得を得るうえで重要な説得材料の一つですが、必ずしも不可欠な説得材料ではありません。
たとえ法律に違反していなくても反感を買うことがあります。
著作物ではない他人のアイデアを芸のネタに使ったとか、著名なマンガのタイトルを勝手に商標登録したとか、海水浴の水着写真を無断で撮影したとか、こういった行為は法律違反であるとはいいきれないのですが、記者会見で謝罪させられたり、ボイコット運動に発展したりして後悔した事例はたくさんあります。
また、法律に形式上違反していても、誰も問題にしないこともよくあります。
たとえば学校の職員研修の資料として気になったホームページの情報を印刷したとか、自分の自転車にアンパンマンの絵を手描きで描いたとかいったことは、著作権法を単純にあてはめてしまうと法律違反になってしまいますが、誰もとがめないでしょう。
つまり法律違反かどうかという点だけで世間は判断していないので、それ以外の要素を総合的に考えて判断しないと問題は発生するということです。
全ての人が納得していれば、たとえ法律違反であっても批判されないし、納得されなければたとえ合法的な行為であってもトラブルのモトになるのです。
ですので、法律知識だけでなく、人を説得できる力が重要です。さらに付け加えるなら、日頃の行いというモノも大切です。 どんなに手堅い理論であっても、それをしゃべっている人間が人格的に信頼されていないのであれば、それを聞いている人は納得しないものです。
逆に、日頃の行いが立派で多くの人から信頼されている人の一言は、たとえ理論として緻密でなくても重く扱われるものです。
「納得」「説得」「人徳」。「この3つのトク」を意識して生活することがトラブルを予防し、または解決する上でとても重要だと思います。
普段からいい加減なことをしておきながら、「すぐに使えそうな知識」とか「専門家や行政の権威」とか、そういったものを頼りにしている人は、実際には全く救いようがないと私は思っています。
著作権指導が法律知識の丸暗記になってしまうと、その結果、重大な勘違いをする人が増えてしまいます。
実際のところ、法や法律の基本的な部分について重大な誤解をしている人が多いことの原因の一つは、やむをえないこととは言え、学校の教育指導にあると思っています。 決まっていることをひたすら守ることが「法を守ること」だという発想がすでに時代遅れであることは企業社会ではかなり理解されてきていると思います。 経営者が労働現場に「ルールを守れ」と命令するだけでは不祥事は防止できません。人間社会の本質をよく分析して、現場からも納得される体制をつくらなければならないのです。
著作権指導の基本は、覚えることよりも考えることだと思います。 考えて判断し、その判断について異論があるなら説得し納得されればよい。 人は納得されるために仕事をしているのだから。
このような考えで著作権指導をしていただけば、実は著作権の分野に限らない広い意味の学習に結びつくことになるでしょう。要するに、知識よりも日頃の心がけが大事なのだということを私は申し上げたいのです。

 

覚えるよりも考える授業を
以上のとおりで、私はルールや法律を守ることの大切さよりも、たくさんの目に見えない人たちの立場について考えることを重視していただきたいと思います。
普通の学校の授業は、すでに存在する答えを信じさせる授業ですが、著作権指導では「疑わせる」授業が望ましいと思います。
著作物を利用したいのに、著作権法が邪魔で利用できないのはおかしい。
こういう感覚を持つ人は非常に多いのですが、著作物を創作した人たちの立場を真剣に考えれば、そのような考えは修正されてしまうでしょう。
今の自分の感覚や判断は、もしかすると間違っているかもしれない。そう思った瞬間に、人間は考え始め、情報を集め、自分なりの判断をし、それについて責任を取ります。
それができるかどうかが、一人前かどうか、にかかわってくると思います。
世の中はいろいろな利害関係で複雑に絡み合っているのが現実だから、それをじっくり見つめることから逃げ出さないで、正面から向き合ってゆくことが大人になるということなのだと思います。
著作権指導の方法には何通りもあると思いますが、このような考え方もあるのだということを念頭において実践していただければありがたいと思います。
なお、著作権教育の中で、著作物の創作と利用許諾に実践的に取りくませる授業を実施している活動を以下に紹介しておきます。

「創って学ぼう著作権~先生と生徒の体験学習・兵庫の記録」

 

 

プライバシーと有名人の利益を守る

肖像権(しょうぞうけん)

 ~  自分の肖像を他人に使わせない人格的権利のこと

 

パブリシティー権

~ 顧客吸引力がある肖像や名前の利用を専有する権利のこと

 

プライバシーをふみにじることは迷惑なことですが・・・

誰だって私生活の様子は見られたくないものです。

姿や名前が雑誌やテレビで世間に流れてしまうと、名誉が傷ついたり、恥ずかしい思いをしたり、知らない人にねらわれたりするかもしれません。

ですので、この世の中では他人の肖像や名前を勝手に世間の目にふれるようにすることは迷惑なことであり、してはいけないのだと考えられています。

ワザと、またはミスによって他人に迷惑をかけたら、その人はその他人に与えた損害をつぐなうのが当然です。

もし、あなたの肖像や、住所氏名、私生活の様子などが誰かによって勝手に公表されたときには、その迷惑な行為をやめさせるための差し止め請求や、あなたが受けた損失を賠償する請求が、裁判所によって認められるでしょう。

 

プライバシーの侵害は不法行為の一種

民法第709条では次のような条文があります。

第709条
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

民法第709条は不法行為による損害賠償についての定めです。

プライバシーは「法律上保護される利益」にあたり、肖像も同じように保護されるべきであると考えられています。

つまり、人には自分の肖像を他人に使わせないで独占する権利があり、これを肖像権と呼んでいますが、法律の条文には肖像権という定めは存在しません。

それでも、そのような権利がこの世の中にはあるはずだという考え方が現在では定着しています。

肖像権という権利は不法行為の一種であり、プライバシーを守るための権利でもあります。

民法では損害賠償の定めだけで、差し止め請求権については定めていませんが、判例では差止請求が認められた事例があります。

なお、他人の肖像を利用することが違法だとしても、すなわち犯罪として処罰されるということではありません。

著作権を侵害することは犯罪として刑事罰の対象となっていますが、肖像権の侵害について直接に刑事責任を問う法律が存在しないのです。(ただし盗撮などは処罰規定があります)

 

どこまでが許されるのか

もしインターネットで、他人が撮影した写真を掲載する際には、著作権者からだけでなく、その写真の被写体である人物からも、許諾を得る必要があるはずです。

しかし、被写体が風景の一部として溶け込んでいたり、画像がボケていて誰なのかがわからない場合など、被写体になった人物に迷惑がかからないようなときには肖像権の問題にならないでしょう。

最近は携帯電話にカメラがつき、町には防犯監視用のモニターがあって、私達の肖像はいろいろなところで撮影され記録されている時代です。

こういう世の中では、すべての無断撮影を違法ということもできませんが、撮影することについて、ある程度の正当性というものがなければならないでしょう。

観光地や街中で写真撮影をすれば、どうしても背景に誰かが写ってしまうものですし、防犯のための監視撮影も仕方がないと言えるでしょう。

こういったことはバランス感覚で柔軟に判断するしかありません。

「自分自身を撮影されたくないという利益」と「どうしても撮影しなければならない事情」というものをハカリにかけて判断するのです。

ギリシャ神話に登場する「テミス」という神がいます。この神は法の神でもあり、片手に秤(はかり)を持ち、もう片方に剣を持っています。対立する利害のバランスを考えて判断することが法であるという意味でしょう。

肖像権やプライバシーに関する場面では、法律の知識よりも常識を問われることになります。

とりあえずは他人の権利を侵害しないよう慎重に判断して、少しでも心配があれば本人から承諾を得て撮影し、利用するようにしましょう。

 

有名人の権利 ~ パブリシティー権

肖像権を保護する理由として「プライバシーを保護する目的」だけでは納得できない場合がありえます。

たとえば芸能人のコンサートでの写真を無許諾で販売した場合には、コンサートですでに肖像が公衆に公開されていますから、プライバシーは侵害されていないと言えますし、芸能人の名誉や人格が傷つくということでもありません。

しかし芸能人はその「肖像や名前」を売ることで収入を得ていて、そのためにプライバシーを犠牲にして人気を得て、その「肖像や名前」の価値を高めようと努力しています。

彼らにしてみれば、売り物である自分の「すがた・かたち」を不当に利用されてしまうと商売になりません。

有名人の肖像や名前を利用することが商品やサービスの宣伝につながり、売り上げが増大するのですが、このような効果を「顧客吸引力」と言います。

現在では顧客吸引力を持つ有名人の肖像や名前を権利として保護する考え方が定着しており、この権利をパブリシティー権と呼んでいます。

経済的な側面から肖像を保護するので、経済的な肖像権と言ってよいかもしれません。

この世の中には「公平」という概念があり、他人の才能や努力を利用して利益を得ることはズルイことなので不法行為にあたる考えられる場合があります。

特に、自身の肖像や名前を広告として利用させることは人格的な保護を犠牲にすることと引き換えなのですから、パブリシティー権は人格権を尊重するために保護されているとも考えられます。

プロ野球選手やJリーグ選手の肖像や名前(競走馬の名前まで?)も顧客吸引力がありますから、プロ野球のコンピューターゲームの中で実在の選手名や球団名を使用する際には日本プロ野球選手会や日本プロサッカーリーグ等の団体を通じてライセンス処理がなされています。

童話続編 その9 もしも、人の顔や姿を使うときは ~ 肖像権

童話続編 その10 もしも、有名人の顔や姿を使うときは ~ パブリシティー権