非営利の教育・学習指導のための「童話」の ご利用につきまして

非営利の教育・学習指導のための「童話で考える著作権」のご利用につきまして

2018.1.5ルールを改訂しました。その後はじめての方は以下をお読みください)

非営利の教育・学習指導のための「童話で考える著作権」と「著作権のひろば」の解説文の利用掲示板はこちらですが、掲示板への書き込みは、このたび「任意」としました。掲示板に書き込まなくとも、以下のルールでご利用可能です。

ご利用状況について、今後もお知らせいただけますと大変うれしいですが、無理にしていただかなくともよいことにしました。

これまで書き込んでくださった方々、ご連絡をくださった方々に、心より御礼申し上げますとともに、今後も同様にしていただけますと、とてもうれしく思います。

 

<こんな利用方法はOKです>

「童話で考える著作権」における文章とイラストは、著作権のひろばの管理者が制作したものですが、これらについて、非営利で、かつ教育又は学習の目的の場合においては、そのために必要な範囲内での複製、映写、実演による使用を認めます。

童話のご利用に付随して、「著作権のひろば」内の文章、図、表、イラストについてもご利用になれます。

しかし、次のような利用は認められません。

・学校外、企業外、組織外へ提供するための複製や公衆送信などの利用

・出版物やテキスト、CD-ROM等の媒体による頒布

・デジタルデータでの他者への提供、公衆送信等

・卒論や論文を容易に終わらせるためのコピー

 

例えば、こんな場合はOKです。

・学校の授業での使用、先生やPTAの勉強会や会議で複製し配布、文化祭や論文発表会での転載

・生涯学習の授業における複製物としての配布、映写

・出版物等におけるホームページの紹介

・宿題や論文の中での使用(但し、文章の意味をきちんと理解している場合に限ります)

・童話を学校の文化祭や授業で実演することや、それらに関連した使用

 

<童話の文章とイラストの改変について>

例えば、文章の言い回しや、童話の表現などが、使用の目的上不適切であると感じられた場合には、その目的に必要と思われる範囲内で自由に改変していただいて構いません。(記載の表現については、教育上の有用性に自信がないものですから・・・)

なお、このように改変したという旨をお知らせいただいたときには、非常に参考になるので、うれしく思います。

 

<上記ルールの主旨に合わない利用をされたいときは>

上記のルールに合わない方法での利用をされた場合は、お手数ですが、直接管理者までお問合せください。

また、ご不明な点がありましたときも、同様にお問合せくださいませ。

のぞみ合同事務所 著作権のひろば管理人

電話 042-701-3010

 

童話続編 その10 もしも、有名人の顔や姿を使うときは ~ パブリシティー権

もしも、有名人の顔や姿を使うときは ~ パブリシティー権

ある日のこと。

 ダルマロは描き終えたばかりの絵を見せて、ランジェロにたずねました。

「ほら、この絵、誰だと思う?」

「まあ、なんてかわいらしい。これは歌手のソフィアさんが歌っている絵ですね。」


(ダルマロさんは、そっくりそのままの絵を描くのだけは得意なんだよなあ)
とランジェロは心の中でつぶやきました。


「今やソフィアちゃんは国中で大人気だからね。王様だってファンらしいぞ。これもダルマロさまがレコードを売ってあげたおかげだな。」

と、得意になっています。

「ねえ、ダルマロさん。もしかすると、また勝手に絵を売ってもうけようとしているんじゃないですか?」

「もちろんだとも、ランジェロ君! この絵を印刷したらたくさん売れるだろうなあ。」

 やれやれ、またお金もうけの話です。
ランジェロが心配そうに何か言おうとすると、ダルマロはそれをさえぎって言いました。

「ソフィアちゃんの肖像権があるんだと言いたいんだろう。でもね、肖像権はプライバシーを守るための権利だよ。ソフィアちゃんはいつも大勢の前で歌を歌っているんだから、その肖像を利用したってプライバシーには関係ないと思うね。」

 と、今日のランジェロはめずらしく先手をとられてしまいました。童話の挿絵 自分の絵を自慢するダルマロ

 

 

 

 

 

 

「そ、それもそうですねえ。たしかにソフィアさんのプライバシーには関係ないような・・・。」

「そうだろう。つまり私はこの絵を好きなだけ売って大もうけができるということじゃないか。すばらしい!」

 しかしランジェロは納得がゆかない様子です。

「うーん、何かひっかかるなあ。だって、その絵が売れるのは、ソフィアさんがかわいらしくて、歌が上手で、国中で人気があるからでしょう? それなのに、どうしてダルマロさんが大もうけすることになるんだろう。それってずるいと思うなあ。」

「なんだい、またそんなことを言って・・・。この絵を売るためにがんばるのはぼくだけなんだからいいのさ。」

とダルマロが言うと、

「いやいやちがうでしょう。ソフィアさんはもともと内気でおとなしい女の子ですよ。彼女のレコードが売れてから有名になってしまったけど、きっといろいろなことをがまんしたり、努力したりしてきたはずです。そのおかげでダルマロさんだけが得するのはおかしいですよ。」

「う・・・、それもそうかな・・・・。たしかに、プライバシーが無い生活というのはいろいろ大変だろうなあ。」

するとランジェロは自信を持って言いました。

「やっぱりそうですよ。他人が勝手にソフィアさんの顔や姿を利用してもうけるなんて、おかしいですよ。それに、きっとダルマロさんだけじゃなくて、大勢の人がソフィアさんの顔や姿を勝手に利用してもうけるようになりますよ。」童話の挿絵 家の中で立つダルマロとランジェロ

 

 

 

 

 

「あっ、そうか。そうしたら、ぼくはもうからないじゃないか!ランジェロ、どうしたらいいの?」

「だったらソフィアさんから許しをもらって利用するようにしたらいいじゃないですか。もちろん、お金のもうけの中からソフィアさんにじゅうぶん支払ってあげないとね。」

「じゃあ、ほかの人が勝手に利用しだしたらどうするんだい。ぼくだけが損することになるよ。」

「ダルマロさんがソフィアさんに代わって、彼女の権利を守ってあげたらどうです。」

「そうか、なるほどね・・・。」

 ダルマロが本当に意味をわかってくれたのかどうか、ランジェロはちょっと心配でした。

おわり

童話の続編 ある日のランジェロとダルマロ(短編集)のもくじ>へ

 


パブリシティー権とは

20-A 「パブリシティー」とはどういう意味でしょうか?英語なんですね。

20-B あなたが有名人だったとして、自分の姿や顔が勝手に広められたらどう思いますか。今の自分はどうでもよいとしても、将来はどう感じるでしょうか。いろいろな人の意見を聞いてみましょう。


◎ヒント

☆肖像権とパブリシティー権

童話続編 その9

もしも、人の顔や姿を使うときは ~ 肖像権

ある日、ダルマロがいっしょうけんめいに絵を描いているのを見て、ランジェロはのぞきこみました。


「ダルマロさん、いったい何の絵を描いているんです? おや、この人は・・・。ポーロさんの顔じゃないですか」


ダルマロはニヤっと笑って、


「そうだよ。この絵をポーロさんの小説の表紙にのせるのさ。いいアイデアだろう。」
と言いました。


ランジェロは少しいやな予感がしました。
ポーロさんは人前に出るのがとても恥ずかしくて、昼間は家の外にあまり出ようとしない小説家なのです。
童話の挿絵 絵を描くダルマロを見ているランジェロ

 

 

 

 

 


「ポーロさんの顔の絵を表紙にのせること、ポーロさんは知ってるんですよね。」

と聞くと、ダルマロは

「なんだい、ポーロさんが書いた小説の表紙だぞ。作者の顔の絵くらい、勝手にのせたっていいじゃないか。このダルマロさまがポーロさんの絵を描いてくれるだけでも、ありがたいと思ってほしいね。」
「それはどうかなあ? きっとポーロさんはいやがると思うなあ」

 とランジェロは不安そうに言いました。しかしダルマロは


「この絵を描いたのはわたしで、ポーロさんじゃあないんだ。著作権だって私にあるのだしね。」


と、気にもとめない様子です。


「そうですか、じゃあ、もし私がダルマロさんの絵を描いて勝手に使ってもいいのですか?」


と聞くと、ダルマロは


「いいともいいとも、好きにするがいいさ。へっちゃらさ。」


と言って絵を描き続けています。
するとランジェロは急いで絵の具と筆を手にとって、絵を描き始めました。

あっというまにダルマロの顔の絵が出来上がりましたが、そのダルマロの顔にはヒゲがありませんでした。


「ダルマロさんの大きなヒゲは、にせもののつけヒゲなんですよね。だから、ヒゲはとってしまいました。」


「わあっ、なんでそのことを知ってるんだい! そんな恥ずかしい絵をぜったいに誰にも見せないでくれよう。」


「そうは行きませんよ。だって、勝手に使ってもいいと言ったじゃないですか。」


「いや、それはその、恥ずかしいから仕方がないじゃないか・・・」


するとランジェロは腕を組んで言いました。

童話の挿絵 ダルマロの肖像を描くランジェロ

 

 

 

 

「ポーロさんだって恥ずかしいと思うかもしれませんよ。やっぱり、勝手に人の顔や姿を大勢の人に見せるのは、とても危ないことだと思います。今すぐポーロさんから承諾をもらってくれますか?」

「う、うん。わかったよ。すぐにポーロさんと話をしてくるよ。」

と言って、ダルマロはヒゲをおさえながらポーロさんの家へ出かけてゆきました。

 

 それからしばらくして、ダルマロが帰ってきました。

「あーあ、さっきの話、ポーロさんに断られてしまったよ。顔が有名になったら、恥ずかしくてもう町を歩けないってさ。」

とため息をつきました。


「そうだろうと思ったんです。せっかく絵を描いたのに残念でしたね。」

 と、ランジェロはダルマロに少し同情している様子です。


「ところでランジェロ。人の顔や姿を勝手に使わせない権利があるとしたら、なんという名前の権利だろう。」


「そうですねえ。私は、顔や姿のことだけじゃなくて、人が静かに安心して生活することを守ってあげることが大事だと思うんです。人には、知られたり、見られたりしたら困るものがありますよね。例えばダルマロさんのヒゲのこととか。」


と言って、ランジェロはフフンと笑いました。


「それはつまり、プライバシーということかい?」


「そう、それ! プライバシーですよ。だからプライバシー権。とくに顔や姿を勝手に利用させない権利については、肖像権なんて呼び方はどうでしょう。」


「プライバシー権と肖像権かあ。法律には書いてないけれど、そういう権利がないと困るよなあ。」


と言ってから、ダルマロは首をかしげました。


「ちょっと待ってくれよ。前にポーロさんが王様の生活態度が悪いという文章を出版したけれど、ああいう場合は王様のプライバシーの問題にならないのかなあ。」


「そうですねえ。でも王様は国民のために王様としての義務や責任を背負っていますよ。王様のことは国民のすべてが知っておかなければならないことだから、王様にはプライバシーのことを我慢してもらうことになりそうですねえ。」

 それを聞いてダルマロはうなづきました。

「そうかあ、王様は別かあ・・・。」

おわり

 

 

 

童話続編 その10 もしも、有名人の顔や姿を使うときは ~ パブリシティー権>へ


肖像権とは

19-A 肖像権とはどのような権利ですか。

19-B 肖像権に関する法律はどうなっているのでしょうか。


◎ヒント

肖像権はプライバシーに関係しています。プライバシーはどのように守られるべきでしょうか。

民法の不法行為責任という考え方はとても重要なので、できれば子供たちにもかんがえてもらいたいです。中学生にはちょっと早いかな。。

☆肖像権とパブリシティー権

☆著作権侵害の民事責任

童話続編 その8 もしも、レコードを作って売ったとしたら ~ レコード製作者の権利と音楽著作権

もしも、レコードを作って売ったとしたら ~ レコード製作者の権利と音楽著作権

ダルマロは、ランジェロが見たことのない不思議なかたちの機械の前で、うきうきしています。

「うふふ、どうだいこの機械。何かわかるかい?」

「うーん、おおきなかさみたいなものと、穴のあいた黒くてまるい板。いったい何に使うんです。」

「ふふん、これはね蓄音機。こっちの穴のあいたまるい板はレコードというんだ。これで音楽がきけるんだぞ。」

「へえ、音楽が!? ダルマロさんは新しいものが好きですね。さっそく聞かせてくださいよ。」
その穴のあいたまるい板に、小さな棒の先を静かにのせると、まるでそこにオーケストラがいるように、演奏がひびきわたりました。童話の挿絵 音楽を聴いているダルマロとランジェロ 「すばらしい! この機械でたくさんの名曲をレコードにコピーして売るぞお!」

 ランジェロはあきれた様子で、

 「ダルマロさんは、本当に商売に熱心ですね」と言いました。

 「そりゃそうさ。今まで楽譜しかコピーできなかったけれど、この機械があれば曲のメロディーをそのままコピーすることができるんだから。」

 ダルマロは天井の方を見ながら、すでにお金の計算をはじめているようです。
ランジェロは言いました。

 「演奏された曲を録音してコピーするんですね。ということは、たくさんの人から許諾を取る必要がありそうですよ・・・・」

 「作詞家と作曲家だろう。わかってるよ、そんなこと。」

 しかし、ランジェロは腕を組んで考えました。

 「ほかにも権利を持つべき人がいるんじゃないかな。演奏家、歌手とかも。」

 それを聞いてダルマロは不思議そうな顔をしました。

 「・・・どうしてだい。彼らは作詞も作曲もしてないし、何もつくっていないじゃないか。ただ歌ったり楽器をひくだけだよ。入場料を払って、音楽会の会場で録音すればいいのさ」

 「でもね、彼らがすばらしい音色で歌ったりかなでたりしてくれた名曲だから価値があるのでしょう。下手な歌手や演奏者の曲なら誰もレコードを買わないですよ。」

「むむむ、それもそうだな。つまり、歌手や演奏者からも許諾を取ってコピーする必要があるというわけか。」

 「そのとおり。ダルマロさん、進歩しましたねえ。」

 ダルマロはてれましたが、あとでなんだかばかにされたような気分にもなりました。

 おわり童話の挿絵 室内に立つダルマロとランジェロ

童話続編 その9 もしも、人の顔や姿を使うときは ~ 肖像権>へ


著作隣接権とは

18-A 著作隣接権者とはどのような立場のことを言うのでしょう。

18-B 著作隣接権はなぜ必要なのでしょう。


◎ヒント

あなたが大好きな曲がありますよね。その曲が聞けたのは、誰のおかげですか?どのような人たちがそれにかかわっているのでしょう。作詞家、作曲家、歌手、そのほかには・・・

☆著作隣接権

 

童話続編 その7 もしも、作品の内容を変えてしまったら ~ 同一性保持権について

もしも、作品の内容を変えてしまったら ~ 同一性保持権について

 その日も、ダルマロは困った様子で、店の中をうろうろしていました。

 「困った・・、今度は本当に困った・・・・・」

「ダルマロさん、どうしたんです。またトラブルですか?」

「うん。実は、作家のポーロさんの本の中に王様がいやがりそうなことが書いてあるんだが、その部分をポーロさんは、どうしてもけずらないって言うんだよ。」

「王様がいやがりそうなことって?」

 「ほら。王様はほしいものがあると、何でもすぐにゆずってくれって言うだろう。ああいうわがままなところが良くないと言って、ポーロさんが本の中で文句を書いているんだよ。」

「へええ、あのひょろひょろのポーロさんに、そんな勇気があるんですねえ。」

「冗談じゃないよ、ランジェロ。君は王様に向かって、命をとってください、なんて言ったらしいけれど、僕にはそんな勇気はないね。そうだ、ポーロさんの文章の著作権を私が買い取ってしまおう。そうすれば、私が文章を勝手に変えても文句はないだろう」

「いやいや、そうはゆきませんよ。作品の内容を変えさせない権利は、いつも作者にありますから、著作権を買っても作品に手を加えることはできません。だって、作品を勝手に変えられたら、お金の問題では済まないじゃないですか。私なら絶対に許しませんよ。」

「おいおい、そんな怖い顔をしないでくれよ。ぼくだって困っているんだから。」

 結局ダルマロはおそるおそる、ポーロさんの文章をそのまま出版しました。

 しばらくしてから、王様の使いがやってきて、王様の手紙をダルマロに渡しました。

読んでみると、

 <ポーロの本を読んだぞ。
これからは少し反省するから、もうわしのことは書かないでくれ>

 と書いてありました。

「ふう、どうやら怒ってはいないようだな」

「ダルマロさん、これで世の中の役に立ったじゃないですか。作者の表現をそのまま伝えることも大事なことなんですよ。」

 と言って、ランジェロはダルマロの肩をたたきました。

 「でも、ひやひやしたよ、まったく。この商売も楽じゃないな・・・」

と言って、ダルマロはため息をつきました。

 おわり

童話の挿絵 考え込む王様

童話続編 その8 もしも、レコードを作って売ったとしたら ~ レコード製作者の権利と音楽著作権>へ


同一性保持権

17-A 自分の表現がいつの間にか変えられていたら、どんなことが起こりえますか?

17-B 思ったことをそのまま表現することについて、どう思いますか。

 


◎ヒント

著作物を利用する際に、事情に合わせて切り取り、サイズや色合いの変更、文章の修正などが必要となりますね。

著作者にとっては意味があることでも、加工や編集する立場の人にってはあまり意味がないと思われたりして、あとでトラブルに発展することがあります。

作者の立場になって考えてみれば当然のことでも、つい業界や職場の慣習に引きずられ、ちょっとした工夫を忘れてしまうことがあります。

ここでは、作品の同一性に配慮することにどのような意味があるのかを考えてみましょう。

作者が思ったことを素直に伝えること。とても難しい問題が含まれています。

その表現で心が傷ついたり、困ったりする人がいませんか?

ならば、やはり改変しますか?

その判断は誰がするのですか?

コンプライアンスにおいて非常に重要なテーマです。

☆著作者人格権

☆プライバシーと有名人の利益を守る

童話続編 その6

もしも、未公表の作品を公表してしまうと ~ 公表権

「どうしよう・・・、おそいなあ、どうしよう・・・。」

 ダルマロは困った顔で店の中を行ったり来たりしています。

「ダルマロさん、どうしたんです?」

 ランジェロは気になってたずねました。

 「実は、原稿が間に合わないんだよ。今日じゅうに印刷しないと発売日に売れないのさ。」

「ああ、ポーロさんが書いている小説の話ですね。まだ出来上がっていないんですか。」童話の挿絵 頭をかかえるダルマロ

「そうだけど、実は下書きはもらってあるんだ。まだ完全ではないけれど、これでもいいから出版してしまおうかな。読者にはどうせわからないし・・・。」

 するとランジェロはまた腕組みをしてダルマロに言いました。

 「いけません、そんなこと。その下書きは完成品ではないのですから、勝手に印刷して売ってはいけませんよ。」

「でもそれじゃあ仕事にならないよ。悪いのはポーロさんだよ。」

 「それは別の話です。これは大事なことなんですよ。もしそのちゅうとはんぱな原稿を世に出してしまって、読者ががっかりしたらどうするんです。ポーロさんの名誉はだいなしじゃないですか。ポーロの小説は最近面白くないな。なんてうわさになったら・・・」童話の挿絵 机で考え込むダルマロとランジェロ

 「じゃあ、どうすればいいんだい?」

 「ポーロさんと話し合いをして、どうするか決めるべきでしょう。作品を世の中に出すかどうかは重要なことなんです。作者の名誉がかかっているんですよ。ダルマロさんが勝手に判断してはいけません。」

「うーん、そうかあ、困ったな・・・」

 と、そのとき、店にポーロさんが姿を見せました。

 「ふう、どうやら間に合ったようだ。今日が締め切りだったね。」

 ランジェロとダルマロは笑って顔を見合わせました。

 おわり

 

童話続編 その7 もしも、作品の内容を変えてしまったら ~ 同一性保持権について>へ


公表権とは

6-A 自分の作品が未完成のままに公表されたら、何を考えますか?

6-B 人格権と言いますが、「人格」ってなんでしょう。人間にとって命と同じくらい大切なものってありますか?

 


◎ヒント

人にとって、お金よりも大事なものがあるとしたら、それは何でしょう。

ランジェロらしさとは? ダルマロらしさとは?

それは人生にとってどのような意味があるでしょう。

 

個人を尊重するということは、一人の人生や生き方を尊重するということです。

☆著作権の基本その8 著作者人格権

童話続編 その5

もしも、お金が必要になったら ~ 著作権は財産権

ある日、ダルマロの店に作家のポーロさんがやってきました。

 「ダルマロさん、お願いがあります。じつは私が持っている著作権を買ってほしいのです。」

 ダルマロは、著作権を売り買いするということを考えたことがありませんでした。

 「著作権を買ったことなんかないよ。どうして権利を売りたいんだい?」

 「実は私の母が病気で、高い薬を買わなければならないのです。」童話の挿絵 ダルマロに会いに来たポーロさん

「著作権を買うということは、ポーロさんの小説を私が好き勝手に印刷したり利用したりすることができるということですな。」

(ちょうどポーロさんの小説を外国で出版する話があったんだ。ふふふ、これでまたもうけてやろう・・・)

ダルマロはニヤリと笑って、

「仕方がない。では、ポーロさんの著作権を買ってさしあげましょう。あまりお金はだせないけどね・・・。」

 そこへランジェロがやってきました。

 「ポーロさん、著作権を売ったらもったいないですよ。あなたの作品は人気がありますから、これからうんと売れて、利益になるかもしれないんです。著作権を担保(たんぽ)にだしてくださるなら、私がお金をお貸ししましょう。」

 ポーロさんは

「えっ、お金を貸してくれるんですか? それができるならその方が・・・・」

と喜びました。

 しかしダルマロは気に食わない様子で、(ちぇっ、またランジェロが余計なことを・・・・。) と思いましたが、担保という言葉を始めて聞いたので、よく意味がわかりませんでした。

「ランジェロ、その担保というのはなんなんだね。」

 「ああ、担保というのは、もしポーロさんがお金を返せなくなったときに、お金の代わりに私が受け取るものです。つまり、もしポーロさんがお金を返せなくなっても、私が担保である著作権をゆずりうければよいのです。」

童話の挿絵 教会の建物「それじゃ、お金を貸すほうは、お金が無事に戻ってきたら、ちっとも良いことがないじゃないか。ランジェロはおひとよしだなあ。」
とダルマロが言うと、ポーロさんは

 「私が借りるお金には利息をつけてください。1年間に5パーセントの割合で利息を払いますよ。そうでないとランジェロさんにもうしわけないです。」
と言いました。

「ポーロさん、お気づかいありがとう。」
ランジェロはダルマロの方を向くと、

 「小説が売れればお金は返すことができるはずです。ダルマロさん、がんばってポーロさんの小説を売ってあげてくださいね。」

 またランジェロに一本とられてしまったと思い、ダルマロはがっかりしました。

 おわり

 

童話続編 その6 もしも、未公表の作品を公表してしまうと ~ 公表権>へ


著作権は財産権

15-A 財産にはどのようなものがありますか? お金、家、車、それから・・・

15-B 信用とはなんでしょう。

 


◎ヒント

財産権とは何か。社会人向けの研修でよく取り上げるテーマです。

権力と権利の存在意義を考えるうえで、ちょうどよいテーマだからです。

「信用」も重要です。

著作物という財産が、その人の才能と努力によって無限に作り出せるように、信用も人が作り出せる財産です。

さて、「信用は財産」。この意味がおわかりですか。信用があったら、何ができるかを考えてください。

逆に、信用がなかったらでしょう。

最近は、「信用なんかいらない」という人が増えているような気がしますが、その人は将来、取り返しのつかない後悔をしなければよいのですが。

もし、信用が財産ならば、私たちはどのように信用を得るのか。子どもたちはどう考えるのか。

お金儲けのためだけに他人の努力をパクるような人を、私は信用しません。

コンプライアンスは生き方です。そして、お金だけが財産ではないということまで考えていただけたら、とてもうれしく思います。

☆著作権の基本その1 知的財産とは何だろう

 

童話続編 その4

もしも、音楽を演奏するときは ~ 演奏権

ある日、ダルマロが町を歩いていると、美しい歌声が聞こえてきました。

 「おお、なんとすばらしいひびきだろう。」
と思ってその声の主をさがすと、広場に人だかりができていて、その中でかわいい少女が一人で立って歌っています。童話の挿絵 歌うソフィアをとりまく人々

 すばらしい歌声だ。曲もなかなかのものだな。あれ、この曲、どこかで聴いたような・・・。
と思いましたが、とにかく美しい音色に引かれてたくさんの人が集まっています。

 (よし思いついた。これでひともうけしてやろう・・・)

  また悪いくせが出たようです。ダルマロはその少女に話しかけました。

 「君の歌声にはまったくほれぼれしたよ。私はダルマロという者なんだが、どうだろう、今度私が主催する音楽会で歌ってもらえないかな。いや、お金はちゃんと払ってあげるよ。」

 こうしてそのソフィアという名の少女と約束すると、ダルマロは急いで準備にとりかかりました。
(うふふ、こうして大勢の客を呼べば入場料がたくさんとれるぞ・・・)

 思ったとおり、音楽会の日にはたくさんの人が集まって、少女の歌が終わると大きなはくしゅがわき起こりました。

 ダルマロはニコニコしながら、その日集まった音楽会の入場料金を数えていました。
するとそこへ、ランジェロがソフィアを連れて現れました。
ランジェロは腕を組んで言いました。 童話の挿絵 ソフィアの歌声

「ねえ、ダルマロさん。そのお金をどうするんです。まさか独り占めじゃあないですよね。」

 「え、ええ? ああ、ランジェロくん、君にはいくらあげようか。」

「違いますよ! 今日歌われた曲の作詞家と作曲家はどうなるんですか?」

「え? 作詞家と作曲家? 歌詞や楽譜はコピーしていないんだけど・・・」

「曲がすばらしいからこそ、あんなに大勢のお客さんが来たんでしょう。勝手にしていけないことは、作品のコピーだけじゃないですよ。曲を演奏するときにも、作者から許諾をもらって、きちんとお金を支払ってください。もちろんこの女の子にもね。」

 「うーん、やっぱりそうなるかあ。もったいないなあ、今回だけは見なかったふりというのはどうかな? ねえ、お嬢ちゃん・・・」

 「この曲の作詞と作曲をしたのは、このソフィアさんのお兄さんです。ダルマロさんがその人の楽譜を印刷して売ってあげてるでしょう!ごまかしはできませんよ。」

 「あれれ! そうだったか。どうりで、どこかで聞いたような曲だと思ったよ・・・・・。」

 ダルマロはがっくりと肩を落とすと、「ごめんさない」といって頭を下げました。

 おわり

 

童話続編 その5 もしも、お金が必要になったら ~ 著作権は財産権>へ


演奏権のこと

14-A 著作権には複製権以外にどのような権利があるでしょうか。

14-B 最も古い著作権と最も新しい著作権は?


◎ヒント

著作物の利用方法は技術の進歩によって著作物を様々な方法で固定(録音や録画)し、再生できるようになりました。

演奏も技術の発展によって生まれた再生方式の一つです。

ここでは、著作権に複製権以外の様々な権利があること。そして、音楽の著作物にとって演奏権はとても重要な権利であり、私たちにとっても身近な権利であることについて考えましょう。

☆著作権の基本その5 著作権は権利の束

☆著作権の歴史

童話続編 その3

もしも、自分が使用するために作品をコピーしたら~ 私的使用について

 ある日、ランジェロとダルマロが町にある大きな橋に通りかかると、たくさんの若い画家たちが絵を描いていました。

 「ほほお、けっこうなことだねえ。」

と眺めているうちに、ある青年の絵描きがダルマロの目にとまりました。

 その青年は、ランジェロの絵のコピーを持っていて、その絵を真似して描いています。
それを見てランジェロは、

「がんばってますねえ。ずいぶん上手に描けてるじゃないですか。」

と声をかけると、その青年は、

 「これは光栄です、ランジェロさん。あなたの絵で勉強させてもらってます。」

とランジェロにおじぎしました。童話の挿絵 橋で絵を描く青年

 それを聞いてダルマロは、

「おいおい、勝手にランジェロの絵をコピーしては困るよ。これは私が印刷して君に売った絵を、君がもう一度印刷した、つまりコピーのコピーということだな。」

「はい、そうです。ダルマロさんから買った最初のコピーは大事に家にとってあります。雨にぬれてぐちゃぐちゃになったら困りますから、こうして自分でコピーした絵を使っています。」

 ランジェロは、

「へえー、君の家には印刷機があるのかい。」

とおどろくと、青年は

「はい、小さいし、あまりきれいな印刷はできませんが、それでもずいぶん高価なものでした。」

 それを聞くとダルマロは怒って、

「おいおい、それじゃ法律に反するぞ。他人の作品を勝手にコピーしてはいかん!」

するとランジェロはあわてて、

「まあ、いいじゃないですか。ダルマロさんにきちんとお金を払って買った絵を、こうして自分が絵を練習するためにコピーして使っているんですから。」

 それでもダルマロは不満そうでした。

「だって、コピーはコピーじゃないかね。こんなことをされたら、著作権の意味がないよ。」

と言うとランジェロは、

「それは違うでしょう。コピーした絵を彼が他人にゆずったり売ったりしたなら私たちも困るでしょうけれど、彼が自分で使うためならば、何も困らないじゃないですか。むしろ若者たちの勉強になるわけだから、おおいに結構でしょう。」

 ダルマロは、「むむむ・・・。」と考えると、その青年に 「ごめんなさい。私が間違っていたようだ」とあやまりました。

 青年は、

「いや、いいんです。でも僕は決して、自分がコピーした絵を人にゆずったり、売ったりはしませんよ。だって、私も将来ランジェロさんのような画家になって、著作権で守ってもらわないと困りますから。」

 そう言って、青年はランジェロはかたく握手をしました。

童話の挿絵 ダルマロが描いた小舟の絵

 おわり

 

童話続編 その4 もしも、音楽を演奏するときは ~ 演奏権>へ


私的使用について

13-A 私たちはどんなときに著作物をコピーしていますか?

13B どういう場合なら、著作権者に無断で利用してもよいと思いますか?(実際の法律がどうであるかは気にしなくていいです)


◎ヒント

複製権(コピーを制限する権利)はとても強力で重要な権利ですが、その制限の例外を著作権法は具体的にたくさん定めています。

その例外規定の中でもっとも身近な存在が私的使用の場合です。

私的使用には法律上のいろいろな問題が潜んでいますが、ここでは基本的な考え方を理解していただきましょう。

なお、現実の私的使用の制度が文化の発展を目的とした作られたかどうかは別の問題です。

☆利用制限の例外

童話続編 その2

もしも、ありふれた文章を真似てしまったら

ある日、ランジェロはダルマロが若い小説家に説教をしているのを聞きました。

 「君はポーロさんの小説を読んだことがあるんだね。じゃあこの文章はポーロさんの作品を真似たというわけだ。それは悪いことなんだよ」 

 その小説家は困ってしまってどうしていいかわからないようです。

 その会話を聞いて、これはほおっておけないと思ったランジェロは部屋に入ってきて、

「その真似たという部分を見せてくれますか」
と言いました。

 「ああランジェロ、いいところにきた。彼が真似たというのはね、ここのところなんだ」と言ってダルマロが指さした文章は、 

 

<その日はとてもよい天気だった。

  私は彼女と馬にのって散歩に出かけた・・・> 童話の挿絵 小説家を悩ますダルマロ

 

 

 

 

 「これが真似たという部分ですか?」
と言うと、ランジェロは小さくため息をつきました。

 「おいおいランジェロ、この間の話とは違うぞ。この小説家はあの有名なポーロさんの小説を読んで真似したんだから。」 

 すると小説家は、
「たしかにポーロさんの小説は読んだから、この文章は覚えていました。でも、・・・」
と言い訳をしようとしました。

ダルマロはその話に耳を貸そうとせず、

 「君の小説には、ほかにも同じ文章が入っているぞ。たとえば・・・」
と、問い詰めようとします。

 そのときランジェロはダルマロの話をさえぎって言いました。

 「あのねダルマロさん。こんなありふれた文章を真似できないとしたらどうなりますか? たとえばダルマロさんは、他人がすでに使った表現をまったく使わないで文章が書けますか?」 

 と言うとダルマロはしばらく考え込んで、

 「・・・・、そうか、書けそうにないな・・・。」とつぶやきました。

 「そうでしょう。著作権で守られるのは、それを書いた人の気持ちを表わした部分で、しかもありふれていない、誰かが簡単に思いつきそうにない表現だということですよ。」

 「と言うことは、こういう場合は著作権の問題はないのかね?」

 「こんなありふれた文章が著作権で保護されたら困りますよ。」 

 ダルマロは「ごめんなさい」と言って青年にペコリと頭を下げました。 

 おわり

童話続編 その3 もしも、自分が使用するために作品をコピーしたら ~ 私的使用について>へ


ありふれた文章

12-A 著作権法が保護するべき表現とはどのような表現でしょうか。

12-B パクリという言葉があります。他人の表現を真似してお金もうけをする人がいたら、あなたはどう思いますか?


◎ヒント

著作権法が保護する著作物というものには創作性が必要です。

創作性がどのようなものであるかを考えてみましょう。

著作権の相談でもっとも多く関わるテーマです。

この社会では、自分が考え、納得して表現したものを原則としては否定しません。

たとえ結果として同じ表現になってしまったとしても、それが悪いこと、というわけではありません。

しかし、著作権法が及ばないからといって、他人の表現をなんでもパクってよいということではありません。

人としてどうあるべきかを考えることもコンプライアンスです。

不当なパクリは、民法上の不法行為責任を問われることもありえます。

私は「合法だから」という理由だけで自身の行為を正当化する人が嫌いだし、軽蔑しています。

お金儲けのためだけのパクリは本来的に悪であるということを認識しない人が、それなりの社会的評価を受けることは当然のことです。

なお、何が不当であるかは、教育上の議論の素材としてちょうどよいと思います。