クリエイターのための契約のポイント



◆その1 契約に盛り込むべき内容

 

・契約の当事者の記載と署名捺印

  誰がどのような立場で契約したのかを明らかにします。契約内容に合意した証拠として契約当事者の署名捺印が必要です。社判を使用することがよくありますが、住所氏名はなるべく本人直筆で記載することが望ましく、少なくとも氏名くらいは本人の署名にした方がよいでしょう。押印を省略する場合が多いかもしれませんが、せめて認め印、重要な契約であれば実印とともに印鑑証明書を添付することが望ましいです。法人であれば法務局の、個人であれば市区町村での印鑑登録証明の制度があります。

 

・契約した日付

  「その契約日には旅行に行っていました。だから契約は結んでいません」などといわれないためにも、契約内容を特定するためにも、日付けは重要です。日付けは空欄にしたりしないで、署名捺印した日(契約合意した日)を記入しましょう。いい加減な日付けを記入すると、その日は海外旅行に行っていました、なんて言われて契約書を否認されては困ります。日付だけでなく、契約を調印した場所を書き込むのもよいでしょう。

 

・契約内容 〜 絶対安心な契約はありえない

  後で争いが発生しないように、大事なポイントをきっちり押さえておきましょう。大事なポイントとは何か。それはケースバイケースですが、「契約自由の原則」というものあり、公序良俗に反するとか、特別な法律に違反するとか、そういった特殊な事情が無い限りは契約内容が尊重されます。「もしこういうことになったらどうしよう!?」というふうに、万が一のことをあれこれ想像してみてください。将来争いになりえる部分を契約書に書いておけばよいのです。契約書は万が一のトラブルに備えて作成するものですが、「あの人は信頼できる人だから、そこまで書きたくない」という人が多いです(私も含めて)。しかし、そういう人が裏切られている話がたくさんあるのも現実です。詐欺師は、99パーセントの事実と誠意を見せて、最後の1パーセントで裏切るのです。99パーセントの事実をみて油断をしたらだまされると言うことです。

これも時と場合によりますが、契約は万が一に備えるものだと言うことをお忘れなく。

 


◆その2 著作権に関する契約の場合の重要事項

 

A、著作物の特定

 契約の対象となる著作物を具体的に特定しましょう。これが明確にならないと、契約の意味が無くなります。制作委託契約の場合なら、その委託される作品の仕様書きによって特定できますが、もし可能であれば著作物の写しを貼付するなどしましょう。(別紙として添付するならページの継ぎ目に契印をお忘れなく)
 

 

B、誰が著作者なのか

 契約の対象となる著作物の著作者が誰なのかを明確にしておきましょう。 著作者が誰かによって著作権保護期間に影響しますし、著作者人格権に関する権利処理においても重要な意味があります。
 職務著作でない限りはクリエイター個人が著作者ですから、クリエイターが著作物についての全ての権利を原始的に保有していますが、契約上で、「すべての権利は注文主に原始的に帰属する」といった取り決めがよくみられます。  契約で「原始的に」著作者の地位を移転するのは著作権法上おかしな点を含みますが、すくなくとも権利が注文主に帰属していることについて合意されていると解釈できます。
 制作に法人が関係している場合には、著作者がクリエイター個人なのか、または職務著作(著作権法第15条)の規定にもとづいて雇い先である法人等が著作者なのかについてあらかじめはっきりしておきましょう。
 

 

C、基本形態をどうするか

 

・著作物を他人に利用させて、著作権は自分に残す場合 

 著作者に著作権が残り、他人には利用のみを許す、いわゆる「利用許諾契約」です。誰にどこまでの利用をどの期間まで許すのか、著作者はほかの人間に利用を許してもよいのか(独占的利用なのか)、もし契約違反をしたらどうするのか、利用の際の著作権表示はどうするのか、利用者が新たな第三者に利用させたい時はどうするのか、改変をしたいときにはどうするのか、支払時期は、といったところがよく問題になります。

 

・権利を相手に譲ってしまう場合

 著作者が著作権の全部または一部を他人に譲り渡してしまう契約です。

 著作者人格権についての取り決め、二次的利用権についての取り決め、権利移転の事実を登録するかどうか、対価の支払いを滞った時のこと、期限のこと、譲渡の条件、などがよく問題になります。とくに著作権法第61条第2項に注意してください。特約がない限り、著作権法第27条(翻訳権と翻案権)と第28条(二次的著作物利用権)の権利は譲渡人に留保されたと推定されます。もしこれらの権利全てを譲渡する場合には、その旨を契約上明らかにしておく必要があります。

  • (著作権の譲渡) 第六十一条  
    1  著作権は、その全部又は一部を譲渡することができる。
    2  著作権を譲渡する契約において、第二十七条又は第二十八条に規定する権利が譲渡の目的として特掲されていないときは、これらの権利は、譲渡した者に留保されたものと推定する。



 

 法人著作と著作権登録
◆その3 その他

  • A,秘密保持についての取り決め

     営業の秘密が漏れたり、版下や企画書が外部に漏れて業務に支障がでないよう、互いに秘密を守る義務を課す場合もあります。契約に直接関係無い第三者の秘密についても注意が必要です。

    B、品質保証についての定め
     第三者の著作物やアイデアを二次利用していたり、または不正にコピーしていたりといったことが心配されるので、そういったことがないという(当り前のことですが)こと、要求された仕様どおりの作品を納品することの保証や責任を定めることがあります。

    C、第三者とトラブルになった時の定め
     権利を侵害されたり、または他人の権利を侵害する結果になったときに、だれが窓口となり責任を負うのかをあらかじめ決めておきます。

    D、裁判になったときの裁判所の管轄について
     相手の都合で自分の住所から遠くはなれたところを裁判管轄地にされてしまうと、万一裁判になったときに交通の負担が大きく、一方的に不利な状況になるおそれがあります。裁判管轄についても、必要であれば取り決めをしておく必要があります。

    E、著作者の権利を大切に
     公序良俗に反しない限り、契約内容は当事者が自由に決めることができます。つまり著作権法が著作者を保護するためにせっかく定めた規定も、契約によって無意味なものにすることができるのです。
    (著作権法第61条の規定に注意)

 

    

  

 ※クリエイター保護のための著作権法規定

  • ・著作者人格権(氏名表示・公表・同一性についての権利)

     

    ・著作権は排他独占的権利であること

     

    ・著作権を譲渡したり、質権を設定する権利

     

    ・「著作物を利用する権利」の譲渡を制限する規定

       (民法上は利用債権が譲渡可能であることの例外)

     

    ・著作権を譲渡しても特約の無い限り、翻訳、編曲、変形、翻案などに関する権利、及び二次的著作物の利用に関する権利は譲渡人(著作者)に残される

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     上記の規定は、契約で特に取り決めない限りは効果が存続しますから、著作者にとって有利に働きます。これらの権利を放棄するときは、その意味を理解してから契約してください。

 

  ※文化庁の著作権契約書作成支援システムで簡易な契約書が作成できます。