契約の基本

◆その1 契約は権利と義務を発生させる「取り決め」

 

  Aさん : 「その自動車を100万円で売って下さい」

  Bさん : 「はい、100万円で売ります」

 

  これで契約は成立しています。そして二人には権利と義務が発生しました。

  Aさんには「Bさんに自動車を引き渡させる権利」と「Bさんに100万円を支払う義務」が発生しました。

  Bさんには「Aさんに100万円を請求する権利」と「Aさんに自動車を引き渡す義務」が発生しました。



◆その2 日常生活も契約であふれている

 

 契約は口約束でも成立します。お互いの合意が成立すればよいのです。ですから日常生活では、契約書を作らない契約がたくさんあります。例えば

 

  ガソリンスタンドで : 「レギュラー10リットル、カードで!」 「はーい」

 

  タクシーで : 「お客さん、どこまで行きます?」 「豪徳寺まで」

 

  自動販売機で : 100円と記載された投入口に100円を入れ、

                                       ジュースのボタンを押す。

                                            ガチャン! ジュースが出てきた

 

  こういったやり取りをたくさん繰り返して生活が成り立っています。これらは全て契約なのです。では、契約書というものは一体なんなのか?

 


◆その3 どうして契約書を作るのか

 

  ガソリンスタンドのケースですが、客が「10リットル」と言ったのに、店員が「20リットル」のガソリンを入れて20リットル分の料金を請求したとします。

 

 「今日は10リットル分の金しかないんだ!」

 

 「でも20リットルと言ったじゃないですか!」

 

 ということになったらどうでしょう。
 本当は口がすべって客が「20リットル!」と言ったのかもしれないし、店員が聞き違えて「20リットル」に聞こえただけかもしれません。しかし証拠がないので決着がつきません。
 裁判をすることになっても、証拠がないと裁判官も困ってしまいます。ですから、「万が一のトラブル」を防ぐためには、何か証拠になるものを残しておいた方がよいのです。

 

◆その4 契約書は証拠の一種です

 

  争いを解決するための証拠さえあればよいのですから、別に決まった方式があるわけではありません。証拠というなら、音声の録音でもよいし、第三者の証言でもよいし、そのほかいろいろなものが証拠になるかもしれません。しかし、一番手っ取り早い方法は、「紙に書く」ことです。紙は持ち運びが楽ですし、書くのも簡単です。では何を書くのか。

 

◆その5 契約書に何を書くのか

 

  この事例の場合、客がガソリン10リットルを注文したことが証明されればよいのです。
 ですから重要な事柄は「注文内容:ガソリン10リットル」という部分ですね。しかし、ほかの客が書いたものがスタンド側の証拠として悪用されるかもしれませんので、注文した客のサインや印があるべきです。
 それに、1週間前に20リットル注文した時のものを悪用するかもしれませんので、いつ注文したのかを示すために日付けを入れる必要があります。また、その内容を店員が確認したことの証明がないと客側が勝手に作成したかもしれないので、店員のサインも必要です。
 つまり、「契約の内容」、「当事者のサイン(署名と押印)」、「合意した日付け」の3つのポイントを押えておかないと、証拠としては不安です。逆にしっかりした証拠(契約書)があれば、トラブルを防ぐことができますね。
 なお、認め印でも契約は充分有効ですが、とくに重要な契約の場合には印鑑登録された印を使うとよいでしょう。印を偽造されたという争いもありうるからです。


◆その6 契約書も時と場合によります

 

 では、注文されたガソリンが10リットルか20リットルか、ということでケンカをしたり、裁判をする人はいるでしょうか。実際は、「まあ、いいや。今お金を下ろしてくるから」とか「では、今回はサービスしておきますから、またご来店ください。」といったやり取りで解決してしまうでしょう。
 こんな小さな争いで時間や手間を無駄にしたりケンカをしたくはないからです。
 つまり、「万が一トラブルになったときにはえらいことになるぞ」という場合に契約書を作ればよいのであって、そういう必要がないときには、いちいち契約書を作る必要はないと言えます。
 もちろん、証拠が簡単に残せる時はできる限り残しておいた方がよいので、注文書、領収書、受領書、などというやり取りもあります。結局は、「予想されるトラブルの大きさと可能性」そして「証拠を作る手間」を考えて、契約書を作ったり作らなかったりするわけです。
 そしてもうひとつ。文書にタイトルにこだわる必要はありません。当事者の合意の内容がわかればよいのです。内容は「将来主張がくい違ったら困る」部分を予想して書けばよいのです。よく専門家につくってもらえばよいと考える人がいますが、契約の内容は当事者が決めることですから、専門家は本来は脇役であるはずです。他人のアドバイスを参考にしながら、将来のさまざまなトラブルを想定して契約書を作ってみましょう。



契約の前に注意してほしいこと
クリエイターのための契約のポイント