基本その10 法人著作と著作権登録

 権利は人格に帰属します。自然が作った人格(人間のこと)のことを自然人、法が作った人格を法人と呼ぶのは、人間以外の人格でも法によって保護され権利が帰属することを意味しています。 著作物は作者の思想感情が創作的に表現されたものですから、著作者になれるのは自然人である創作者自身であると考えるのが原則です。しかし企業活動が活発な現代社会では、著作物の最初の権利の帰属先が自然人でなければならないとすると、権利関係の処理などでいろいろ面倒なことが多くて困ります。そこで一定の状況においては、最初から法人などが著作者であったとみなすことにしました。
 
◆職務著作 ~ 法人が著作者になるとき
 著作物を創作した人は、その創作のときに著作者としての権利(著作権と著作者人格権)を手に入れます。しかし、一定の要件を満たすとき、法人など(会社や国、学校等)が著作者になることがあります。(プログラムの著作物の場合の違いに注意)
 職務著作とそうでない著作物とでは、著作権保護期間の点で大きな違いが生まれます。職務著作では著作物が公表されたときの翌年1月1日から保護期間を起算しますので、自然人が著作者である場合に比べて保護期間が短くなります。


◆法人が著作者になる場合の4つの要件

1、法人の発意(企画・決定)により、その指揮のもとで著作物を制作すること
  • 従業員同士でアイデアを出しただけでは法人の発意とはなりません
  • 法人の中で企画制作について決定する権限のある者の意思によって決定されなければなりません
  • 「法人」には、法人格を有しない社団または財団で代表者又は管理者の定めがあるものを含みます

2、法人の従業員が職務上制作すること
  • 雇用関係に基づき、その法人の指揮監督のもとで制作すること
  • 請負契約に基づいて著作物を制作した場合には、請負人が著作者ですが、創作活動において独創的な役割を持たない単なる補助者では著作者にはなれません
  • 派遣社員が派遣先で職務上制作した場合は、派遣先企業が著作者になりうると考えてよいと思います
  • が、しかし解釈が分かれていますので、事前に契約で取り決めをしておいた方がなお良いでしょう

3、法人の名前で公表されること
     (プログラムの著作物の場合はこの要件は不要)

4、従業員に制作を任せるときの契約や勤務規則などで、この規定と異なる定めがないこと
  • 雇用契約で、「権利は従業員に帰属する」と定めた場合などは、会社は著作者にはなりません
  • 従業員採用の際に従業員が創作した著作物の一切が法人に帰属する契約をしても有効ではないと思われます
  • ※ 著作者としての権利は本来、作品を創作した人間に与えられるべきです。著作権法が著作者の思想感情を保護することによって文化の発展を目指していることを考えても当然のことです。この規定を、法人が著作物の制作において重要な役割をもつようになった現実にあわせての特例だと考えれば、上記4つの要件は狭く解釈し、個人の思想感情が十分保護されるよう慎重に運用すべきと思います。

     ※ プログラム著作物の場合だけ、「3」の要件をはずしたのは、プログラムは著作社名の表示がされないで利用される場合が多いからです。

      (職務上作成する著作物の著作者)
    第15条 法人その他使用者(以下この条において「法人等」という。)の発意に基づきその法人等の業務に従事する者が職務上作成する著作物(プログラムの著作物を除く。)で、その法人等が自己の著作の名義の下に公表するものの著作者は、その作成の時における契約、勤務規則その他に別段の定めがない限り、その法人等とする。
    2 法人等の発意に基づきその法人等の業務に従事する者が職務上作成するプログラムの著作物の著作者は、その作成の時における契約、勤務規則その他に別段の定めがない限り、その法人等とする。
 


◆映画の著作物の場合

 映画はたくさんの著作者による創作活動を寄せ集めて作られます。ひとつの作品の中にたくさんの著作者、たくさんの著作物が存在します。映画という作品としての権利を一人に集中させないと、利用を許諾する際などに不便なことになりますので、映画の著作物の場合は特別な規定があります。

  • 第29条 
  • 映画の著作物(第15条第1項、次項又は第3項の規定の適用を受けるものを除く。)の著作権は、その著作者が映画製作者に対し当該映画の著作物の製作に参加することを約束しているときは、当該映画製作者に帰属する。


 映画制作のために制作するという契約で参加者した著作者の著作権は、映画製作者に属することになります。この場合、著作権のみが映画製作者に帰属するのであり、著作者の立場は変りませんから、著作者人格権は個々の制作者に残ります。 映画製作者とは、映画の著作物の製作に発意と責任を有する者を言います。(第2条1項6号)
映画の著作者と映画製作者とでは立場が異なります。
映画会社と映画監督などが契約して映画を製作する場合の規定ですので、一般人が自主制作した映画の場合には、この規定があてはまらない場合が多いでしょう。

  • 第16条  
  • 映画の著作物の著作者は、その映画の著作物において翻案され、又は複製された小説、脚本、音楽その他の著作物の著作者を除き、制作、監督、演出、撮影、美術等を担当してその映画の著作物の全体的形成に創作的に寄与した者とする。ただし、前条の規定の適用がある場合は、この限りでない。


 上記条文によると、映画監督、撮影監督、美術監督などが著作者にあたり、これら著作者が共同で著作者になる場合が多いです。但し、法人著作が成立する場合は除かれますので、映画製作会社に雇用されている従業員が監督として制作した場合には映画製作会社が著作者としての地位を得ます。
 

 ※ 頒布権について 

 映画の著作権には、映画の著作物に特有の権利である頒布権が含まれます。

 
 

 

◆著作権登録制度
 日本の著作権法では特段の手続をしないで著作権が成立することになっていますので、特許や商標などのように官庁で登録をしなくても権利を取得することができますが、第一発行年月日の登録や著作権の譲渡の登録など著作権制度を補完するためのいくつかの登録制度が存在しています。
 登録は文化庁で行いますが、コンピュータープログラムの著作物は、(財)ソフトウェア情報センターで行います。
 著作権法にもとづく登録手続は権利を得るためのものではありませんが、権利を守る上でいくつかの利点があります。
 なお、ここで解説している登録手続は著作権法で定められた公的証明手続のことですので、民間の登録証明機関の登録と混同されないようご注意ください。



◆実名の登録 ~ ペンネームの方にとっては重要な手続です
 無名又は変名で公表された著作物は、その著作物の著作者が誰であるのかが世間にはわからないので、保護期間の起算時点を「死後」とすることができず、「公表されたとき」を保護期間の起算点とします。これは無名・変名の著作者にとっては不利益なことですが、無名・変名で公表された著作物について実名(本名)の登録を受けると、その登録を受けた実名が著作者であると推定されるようになり、実名の著作者の場合と同様の扱いが受けられるという意義があります。たとえば、20歳の人がペンネームでマンガを公表した場合には、その著作権保護期間は公表した年の翌年1月1日から50年が経過したときですから、70歳のときには著作権が消滅してしまいます。もし実名の登録をしていれば、お亡くなりになってからさらに50年間長く保護されます。作者名を表記していない場合にも実名の登録は重要です。
 もうひとつ。無名又は変名で公表された著作物の発行者は、自身が著作者の権利を持っていないにもかかわらず著作者又は著作権者のために自己の名をもって、差止め、名誉回復などの請求又はその著作物の著作者人格権若しくは著作権の侵害に係る損害の賠償の請求若しくは不当利得の返還の請求を行なうことができますが、実名の登録により、このような発行者の権限を排除することがきます。登録手数料は9000円です。
 なお、法人は実名の登録が受けられませんし、未公表の作品についても実名の登録はできません。

  • (実名の登録)
  • 第七十五条  無名又は変名で公表された著作物の著作者は、現にその著作権を有するかどうかにかかわらず、その著作物についてその実名の登録を受けることができる。
    2  著作者は、その遺言で指定する者により、死後において前項の登録を受けることができる。
    3  実名の登録がされている者は、当該登録に係る著作物の著作者と推定する。


  • 第百十八条  
  • 無名又は変名の著作物の発行者は、その著作物の著作者又は著作権者のために、自己の名をもつて、第百十二条、第百十五条若しくは第百十六条第一項の請求又はその著作物の著作者人格権若しくは著作権の侵害に係る損害の賠償の請求若しくは不当利得の返還の請求を行なうことができる。ただし、著作者の変名がその者のものとして周知のものである場合及び第七十五条第一項の実名の登録があつた場合は、この限りでない。
    2  無名又は変名の著作物の複製物にその実名又は周知の変名が発行者名として通常の方法により表示されている者は、その著作物の発行者と推定する。


 

◆第一発行年月日等の登録 
 文化庁では著作物を最初に発行又は公表した日を登録することができます。登録されると、その発行または公表の事実が推定されます。
 もしあなたが作ったキャラクターデザインが幅広く利用され、いつの間にか誰が著作者であるのかが世間から認識されなくなった場合に、あなたが第一発行年月日の登録をしておけば、少なくともその登録された公表日において、あなたの名義によって公表されていたことが推定されるので、その公表日より後に当該デザインを創作したと主張する者に対して、自分が著作者であることを主張しやすくなります。
 さらには、法人が制作した著作物なのか、個人制作による著作物なのかが判然としないことがよくありますが、個人名義で第一発行年月日の登録をしておけば法人著作ではないことが明らかになり、保護期間計算が死後起算になります。もし公表時に法人名義でクレジット表記をしている場合は、その法人が著作者であると推定されてしまい、著作物保護期間が公表時から50年までとなり、個人著作の場合とは著作権保護期間が大きく異なります。
 保護期間延長の是非が議論されているわりには、保護期間を長くする方法についてあまり知られていないのが現状です。
 登録手数料は3000円です。
 この登録を申請できるのは著作権者か、または無名若しくは変名で著作物を発行した発行者に限られますので、すでに著作権を譲渡してしまった著作者は第一発行年月日の登録申請ができない場合があります。
 なお「推定される」ということは、それを覆す証明がなされない限りは事実として扱われるということです。
  • 第七十六条  
  • 著作権者又は無名若しくは変名の著作物の発行者は、その著作物について第一発行年月日の登録又は第一公表年月日の登録を受けることができる。
    2  第一発行年月日の登録又は第一公表年月日の登録がされている著作物については、これらの登録に係る年月日において最初の発行又は最初の公表があつたものと推定する。

 

◆創作年月日の登録
 プログラムの著作物の場合は「公表させる」ということがなじまないのですが、創作年月日での登録が可能です。
 ただし創作後6ヶ月以内で無ければ登録できません。
 登録されるとその創作年月日が事実として推定されます。
  • (創作年月日の登録)
    第七十六条の二  プログラムの著作物の著作者は、その著作物について創作年月日の登録を受けることができる。ただし、その著作物の創作後六月を経過した場合は、この限りでない。
    2  前項の登録がされている著作物については、その登録に係る年月日において創作があつたものと推定する。

 
◆著作権の移転と質権に関する登録 ~ 不動産登記と同じ意味をもつ!?
 著作権の譲渡を登録できます。これは不動産の権利移転の対抗要件に非常に似た効力をもちます。たとえば著作権が二重に譲渡された場合には、譲渡の登録をしていない譲受人は、既に譲渡の登録をした譲受人を信用した善意の第三者に対して、自身が譲受人であることを主張できません。重要な著作物の権利を移転する場合にはとても重要な意味のある登録です。
 質権の設定や、質権の移転、変更、消滅、処分の制限の登録も同様です。
  • (著作権の登録)
    第七十七条  次に掲げる事項は、登録しなければ、第三者に対抗することができない。
    一  著作権の移転(相続その他の一般承継によるものを除く。次号において同じ。)又は処分の制限
    二  著作権を目的とする質権の設定、移転、変更若しくは消滅(混同又は著作権若しくは担保する債権の消滅によるものを除く。)又は処分の制限

 

◆出版権の設定
①出版権の設定、移転、変更若しくは消滅又は処分の制限
②出版権を目的とする質権の設定、移転、変更若しくは消滅又は処分の制限

 出版権に関する上記①②の行為については、登録しなければ第三者に対抗できません。



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以下、関係法令抜粋

(出版権の設定)
第七十九条  第二十一条に規定する権利を有する者(以下この章において「複製権者」という。)は、その著作物を文書又は図画として出版することを引き受ける者に対し、出版権を設定することができる。
2  複製権者は、その複製権を目的とする質権が設定されているときは、当該質権を有する者の承諾を得た場合に限り、出版権を設定することができるものとする。

(出版権の内容)
第八十条  出版権者は、設定行為で定めるところにより、頒布の目的をもつて、その出版権の目的である著作物を原作のまま印刷その他の機械的又は化学的方法により文書又は図画として複製する権利を専有する。
2  出版権の存続期間中に当該著作物の著作者が死亡したとき、又は、設定行為に別段の定めがある場合を除き、出版権の設定後最初の出版があつた日から三年を経過したときは、複製権者は、前項の規定にかかわらず、当該著作物を全集その他の編集物(その著作者の著作物のみを編集したものに限る。)に収録して複製することができる。
3  出版権者は、他人に対し、その出版権の目的である著作物の複製を許諾することができない。

(出版の義務)
第八十一条  出版権者は、その出版権の目的である著作物につき次に掲げる義務を負う。ただし、設定行為に別段の定めがある場合は、この限りでない。
一  複製権者からその著作物を複製するために必要な原稿その他の原品又はこれに相当する物の引渡しを受けた日から六月以内に当該著作物を出版する義務
二  当該著作物を慣行に従い継続して出版する義務

(著作物の修正増減)
第八十二条  著作者は、その著作物を出版権者があらためて複製する場合には、正当な範囲内において、その著作物に修正又は増減を加えることができる。
2  出版権者は、その出版権の目的である著作物をあらためて複製しようとするときは、そのつど、あらかじめ著作者にその旨を通知しなければならない。

(出版権の存続期間)
第八十三条  出版権の存続期間は、設定行為で定めるところによる。
2  出版権は、その存続期間につき設定行為に定めがないときは、その設定後最初の出版があつた日から三年を経過した日において消滅する。

(出版権の消滅の請求)
第八十四条  出版権者が第八十一条第一号の義務に違反したときは、複製権者は、出版権者に通知してその出版権を消滅させることができる。
2  出版権者が第八十一条第二号の義務に違反した場合において、複製権者が三月以上の期間を定めてその履行を催告したにもかかわらず、その期間内にその履行がされないときは、複製権者は、出版権者に通知してその出版権を消滅させることができる。
3  複製権者である著作者は、その著作物の内容が自己の確信に適合しなくなつたときは、その著作物の出版を廃絶するために、出版権者に通知してその出版権を消滅させることができる。ただし、当該廃絶により出版権者に通常生ずべき損害をあらかじめ賠償しない場合は、この限りでない。

(出版権の制限)
第八十六条  第三十条第一項、第三十一条、第三十二条、第三十三条第一項(同条第四項において準用する場合を含む。)、第三十三条の二第一項、第三十四条第一項、第三十五条第一項、第三十六条第一項、第三十七条第一項、第三十九条第一項、第四十条第一項及び第二項、第四十一条から第四十二条の二まで、第四十六条並びに第四十七条の規定は、出版権の目的となつている著作物の複製について準用する。この場合において、第三十五条第一項及び第四十二条第一項中「著作権者」とあるのは、「出版権者」と読み替えるものとする。
2  前項において準用する第三十条第一項、第三十一条第一号、第三十三条の二第一項、第三十五条第一項、第四十一条、第四十二条又は第四十二条の二に定める目的以外の目的のために、これらの規定の適用を受けて作成された著作物の複製物を頒布し、又は当該複製物によつて当該著作物を公衆に提示した者は、第八十条第一項の複製を行つたものとみなす。

(出版権の譲渡等)
第八十七条  出版権は、複製権者の承諾を得た場合に限り、譲渡し、又は質権の目的とすることができる。

(出版権の登録)
第八十八条  次に掲げる事項は、登録しなければ、第三者に対抗することができない。
一  出版権の設定、移転(相続その他の一般承継によるものを除く。次号において同じ。)、変更若しくは消滅(混同又は複製権の消滅によるものを除く。)又は処分の制限
二  出版権を目的とする質権の設定、移転、変更若しくは消滅(混同又は出版権若しくは担保する債権の消滅によるものを除く。)又は処分の制限
2  第七十八条(第二項を除く。)の規定は、前項の登録について準用する。この場合において、同条第一項、第三項、第七項及び第八項中「著作権登録原簿」とあるのは、「出版権登録原簿」と読み替えるものとする。


 
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