基本その9 著作隣接権


著作隣接権とは

 いかに素晴らしい著作物であっても、それを大勢の人に伝達する努力をしなければ、現代社会で広く利用されることは難しいです。そこで著作権法は、著作物を伝達することに貢献する人たちの立場も保護しています。 

 著作物の伝達にとって重要な役割として、著作権法は実演家、レコード製作者、放送事業者(有線・無線)について、著作者と同じようないくつかの権利を与えて、著作者に準じる扱いをしています(著作権法89条以下)。



実演家

 歌手、俳優、演奏家、指揮者、舞踏家、演出家、曲芸師、手品師など、実演したり、実演を指揮・演出したりする人

  • 著作権法第2条1項

    三  実演 著作物を、演劇的に演じ、舞い、演奏し、歌い、口演し、朗詠し、又はその他の方法により演ずること(これらに類する行為で、著作物を演じないが芸能的な性質を有するものを含む。)をいう。

    四  実演家 俳優、舞踊家、演奏家、歌手その他実演を行なう者及び実演を指揮し、又は演出する者をいう。

 


①氏名表示権

著作者と同様の氏名表示権(平成14年法改正で新設)

著作者の氏名表示権(19条)

 

  • 第90条の2

    1項  実演家は、その実演の公衆への提供又は提示に際し、その氏名若しくはその芸名その他氏名に代えて用いられるものを実演家名として表示し、又は実演家名を表示しないこととする権利を有する。

    2項  実演を利用する者は、その実演家の別段の意思表示がない限り、その実演につき既に実演家が表示しているところに従つて実演家名を表示することができる。 

    3項  実演家名の表示は、実演の利用の目的及び態様に照らし実演家がその実演の実演家であることを主張する利益を害するおそれがないと認められるとき又は公正な慣行に反しないと認められるときは、省略することができる。 

    4項  第一項の規定は、次の各号のいずれかに該当するときは、適用しない。

      一  行政機関情報公開法 、独立行政法人等情報公開法 又は情報公開条例の規定により行政機関の長、独立行政法人等又は地方公共団体の機関が実演を公衆に提供し、又は提示する場合において、当該実演につき既にその実演家が表示しているところに従つて実演家名を表示するとき。

      二  行政機関情報公開法第六条第二項 の規定、独立行政法人等情報公開法第六条第二項 の規定又は情報公開条例の規定で行政機関情報公開法第六条第二項 の規定に相当するものにより行政機関の長、独立行政法人等又は地方公共団体の機関が実演を公衆に提供し、又は提示する場合において、当該実演の実演家名の表示を省略することとなるとき。

 

 

②同一性保持権(平成14年法改正で新設)

著作者の同一性保持権(20条)は「意に反する」改変等を対象にしているが、実演家の場合は「名誉または声望を害する」場合を対象にしています。こちらの方が客観的に判断しやすいといえます。

 

  • 第90条の3

    1項  実演家は、その実演の同一性を保持する権利を有し、自己の名誉又は声望を害するその実演の変更、切除その他の改変を受けないものとする。 

    2項  前項の規定は、実演の性質並びにその利用の目的及び態様に照らしやむを得ないと認められる改変又は公正な慣行に反しないと認められる改変については、適用しない。 

 

 

③録音録画権 

実演を録音録画する権利。録画には静止画像は含まれません。CDダビングなどは録音に含まれるでしょう。 

  • 第91条  実演家は、その実演を録音し、又は録画する権利を専有する。 2  前項の規定は、同項に規定する権利を有する者の許諾を得て映画の著作物において録音され、又は録画された実演については、これを録音物(音を専ら影像とともに再生することを目的とするものを除く。)に録音する場合を除き、適用しない。

  

 

④放送・有線放送権 

実演を放送する権利。実演家の許諾を得て録音録画した固定物に放送権は適用ありません。 実演家から放送の許諾を得た放送事業者は放送のために実演を録音録画できます。

  • 第92条

    1項  実演家は、その実演を放送し、又は有線放送する権利を専有する。

    2項  前項の規定は、次に掲げる場合には、適用しない。

      一  放送される実演を有線放送する場合

      二  次に掲げる実演を放送し、又は有線放送する場合 イ 前条第一項に規定する権利を有する者の許諾を得て録音され、又は録画されている実演 ロ 前条第二項の実演で同項の録音物以外の物に録音され、又は録画されているもの 

 

 

 

⑤送信可能化権 

実演を送信可能化(インターネット上のアップロードなど)する権利。。音楽CD、映画の著作物、生実演の送信可能化もこれにあたります。

  • 第92条の2

    1項  実演家は、その実演を送信可能化する権利を専有する。

    2項  前項の規定は、次に掲げる実演については、適用しない。

      一  第九十一条第一項に規定する権利を有する者の許諾を得て録画されている実演

      二  第九十一条第二項の実演で同項の録音物以外の物に録音され、又は録画されているもの

 

 

⑥商業用レコードの二次使用料請求権 

指定団体である芸団協を通じて使用料が実演家に分配されます。しかし二次使用を禁止する権利はありません。芸団協は文化庁長官に指定された団体です。 

  • 第95条

    1項  放送事業者及び有線放送事業者(以下この条及び第九十七条第一項において「放送事業者等」という。)は、第九十一条第一項に規定する権利を有する者の許諾を得て実演が録音されている商業用レコードを用いた放送又は有線放送を行つた場合(当該放送又は有線放送を受信して放送又は有線放送を行つた場合を除く。)には、当該実演(第七条第一号から第五号までに掲げる実演で著作隣接権の存続期間内のものに限る。次項及び第三項において同じ。)に係る実演家に二次使用料を支払わなければならない。

    2項  前項の規定は、実演家等保護条約の締約国であつて、実演家等保護条約の規定に基づき実演家等保護条約第十二条の規定を適用しないこととしている国の国民をレコード製作者とするレコードに固定されている実演に係る実演家については、適用しない。 

    3項  第八条第一号に掲げるレコードについて実演家等保護条約の締約国により与えられる実演家等保護条約第十二条の規定による保護の期間が第一項の規定により実演家が保護を受ける期間より短いときは、当該締約国の国民をレコード製作者とするレコードに固定されている実演に係る実演家が同項の規定により保護を受ける期間は、第八条第一号に掲げるレコードについて当該締約国により与えられる実演家等保護条約第十二条の規定による保護の期間による。 

    4項  第一項の二次使用料を受ける権利は、国内において実演を業とする者の相当数を構成員とする団体(その連合体を含む。)でその同意を得て文化庁長官が指定するものがあるときは、当該団体によつてのみ行使することができる。 

    5項  文化庁長官は、次に掲げる要件を備える団体でなければ、前項の指定をしてはならない。

      一  営利を目的としないこと。

      二  その構成員が任意に加入し、又は脱退することができること。 

      三  その構成員の議決権及び選挙権が平等であること。

      四  第一項の二次使用料を受ける権利を有する者(以下この条において「権利者」という。)のためにその権利を行使する業務をみずから的確に遂行するに足りる能力を有すること。

    6項  第四項の団体は、権利者から申込みがあつたときは、その者のためにその権利を行使することを拒んではならない。

    7項  第四項の団体は、前項の申込みがあつたときは、権利者のために自己の名をもつてその権利に関する裁判上又は裁判外の行為を行う権限を有する。 

    8項  文化庁長官は、第四項の団体に対し、政令で定めるところにより、第一項の二次使用料に係る業務に関して報告をさせ、若しくは帳簿、書類その他の資料の提出を求め、又はその業務の執行方法の改善のため必要な勧告をすることができる。 

    9項  第四項の団体が同項の規定により権利者のために請求することができる二次使用料の額は、毎年、当該団体と放送事業者等又はその団体との間において協議して定めるものとする。 

    10項  前項の協議が成立しないときは、その当事者は、政令で定めるところにより、同項の二次使用料の額について文化庁長官の裁定を求めることができる。 

    11項  第七十条第三項、第六項及び第七項並びに第七十一条から第七十四条までの規定は、前項の裁定及び二次使用料について準用する。この場合において、第七十条第三項中「著作権者」とあるのは「当事者」と、第七十二条第二項中「著作物を利用する者」とあるのは「第九十五条第一項の放送事業者等」と、「著作権者」とあるのは「同条第四項の団体」と、第七十四条中「著作権者」とあるのは「第九十五条第四項の団体」と読み替えるものとする。 

    12項  私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号)の規定は、第九項の協議による定め及びこれに基づいてする行為については、適用しない。ただし、不公正な取引方法を用いる場合及び関連事業者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。 

    13項  第四項から前項までに定めるもののほか、第一項の二次使用料の支払及び第四項の団体に関し必要な事項は、政令で定める。 

     

 

 

⑦譲渡権

実演の録音録画物を公衆に譲渡する権利(最初の譲渡により消尽する)

  •  第95条の2 

    1項 実演家は、その実演をその録音物又は録画物の譲渡により公衆に提供する権利を専有する。

    2項  前項の規定は、次に掲げる実演については、適用しない。 

     一  第九十一条第一項に規定する権利を有する者の許諾を得て録画されている実演

      二  第九十一条第二項の実演で同項の録音物以外の物に録音され、又は録画されているもの

    3項  第一項の規定は、実演(前項各号に掲げるものを除く。以下この条において同じ。)の録音物又は録画物で次の各号のいずれかに該当するものの譲渡による場合には、適用しない。

      一  第一項に規定する権利を有する者又はその許諾を得た者により公衆に譲渡された実演の録音物又は録画物 

     二  第一項に規定する権利を有する者又はその承諾を得た者により特定かつ少数の者に譲渡された実演の録音物又は録画物 

     三  この法律の施行地外において、第一項に規定する権利に相当する権利を害することなく、又は同項に規定する権利に相当する権利を有する者若しくはその承諾を得た者により譲渡された実演の録音物又は録画物 

 

 

⑧ 貸与権

ただし、商業用レコードに限り、ビデオ等に適用なし 販売日から1年で消滅し報酬請求権が発生する

 

  • 第95条の3

    1項  実演家は、その実演をそれが録音されている商業用レコードの貸与により公衆に提供する権利を専有する。

    2項  前項の規定は、最初に販売された日から起算して一月以上十二月を超えない範囲内において政令で定める期間を経過した商業用レコード(複製されているレコードのすべてが当該商業用レコードと同一であるものを含む。以下「期間経過商業用レコード」という。)の貸与による場合には、適用しない。

    3項  商業用レコードの公衆への貸与を営業として行う者(以下「貸レコード業者」という。)は、期間経過商業用レコードの貸与により実演を公衆に提供した場合には、当該実演(著作隣接権の存続期間内のものに限る。)に係る実演家に相当な額の報酬を支払わなければならない。

    4項  第九十五条第四項から第十三項までの規定は、前項の報酬を受ける権利について準用する。この場合において、同条第九項中「放送事業者等」とあり、及び同条第十一項中「第九十五条第一項の放送事業者等」とあるのは、「第九十五条の三第三項の貸レコード業者」と読み替えるものとする。

    5項  第一項に規定する権利を有する者の許諾に係る使用料を受ける権利は、前項において準用する第九十五条第四項の団体によつて行使することができる。 

    6項  第九十五条第六項から第十三項までの規定は、前項の場合について準用する。この場合においては、第四項後段の規定を準用する。

 

 

◇放送のための固定

放送の実務における便宜をはかる

  • (放送のための固定)第93条

    1項  実演の放送について第九十二条第一項に規定する権利を有する者の許諾を得た放送事業者は、その実演を放送のために録音し、又は録画することができる。ただし、契約に別段の定めがある場合及び当該許諾に係る放送番組と異なる内容の放送番組に使用する目的で録音し、又は録画する場合は、この限りでない。

    2項  次に掲げる者は、第九十一条第一項の録音又は録画を行なつたものとみなす。

      一  前項の規定により作成された録音物又は録画物を放送の目的以外の目的又は同項ただし書に規定する目的のために使用し、又は提供した者 

     二  前項の規定により作成された録音物又は録画物の提供を受けた放送事業者で、これらをさらに他の放送事業者の放送のために提供したもの

     

    (放送のための固定物等による放送) 第九十四条  第九十二条第一項に規定する権利を有する者がその実演の放送を許諾したときは、契約に別段の定めがない限り、当該実演は、当該許諾に係る放送のほか、次に掲げる放送において放送することができる。 一  当該許諾を得た放送事業者が前条第一項の規定により作成した録音物又は録画物を用いてする放送 二  当該許諾を得た放送事業者からその者が前条第一項の規定により作成した録音物又は録画物の提供を受けてする放送 三  当該許諾を得た放送事業者から当該許諾に係る放送番組の供給を受けてする放送(前号の放送を除く。) 2  前項の場合において、同項各号に掲げる放送において実演が放送されたときは、当該各号に規定する放送事業者は、相当な額の報酬を当該実演に係る第九十二条第一項に規定する権利を有する者に支払わなければならない。

    楽曲を演奏して原版をつくり、原版をCDなどにコピーして販売しますが、原版の権利を持っている人をレコード製作者といいます。たいていはレコード会社がレコード製作者である場合が多いです。

 


 
芸団協ホームページ

実演家著作隣接権センター 

日本俳優連合会

◆レコード製作者

音をレコードに最初に固定した者(レコード原盤を作った人)


  • 著作権法第2条1項抜粋

    五  レコード 蓄音機用音盤、録音テープその他の物に音を固定したもの(音をもつぱら影像とともに再生することを目的とするものを除く。)をいう。

    六  レコード製作者 レコードに固定されている音を最初に固定した者をいう。

    七  商業用レコード 市販の目的をもつて製作されるレコードの複製物をいう。

  

MPA(社団法人音楽出版社協会)

社団法人 日本レコード協会

 


放送事業者と有線放送事業者

有線または無線の放送事業を行う人。(テレビ局、ラジオ局など。)

 

  • 著作権法第2条1項

    七の二  公衆送信 公衆によつて直接受信されることを目的として無線通信又は有線電気通信の送信(有線電気通信設備で、その一の部分の設置の場所が他の部分の設置の場所と同一の構内(その構内が二以上の者の占有に属している場合には、同一の者の占有に属する区域内)にあるものによる送信(プログラムの著作物の送信を除く。)を除く。)を行うことをいう。

    八  放送 公衆送信のうち、公衆によつて同一の内容の送信が同時に受信されることを目的として行う無線通信の送信をいう。

    九  放送事業者 放送を業として行なう者をいう。

    九の二  有線放送 公衆送信のうち、公衆によつて同一の内容の送信が同時に受信されることを目的として行う有線電気通信の送信をいう。

    九の三  有線放送事業者 有線放送を業として行う者をいう。

  

 

◇放送事業者の権利

 

・複製権 

 ~ 放送を録音・録画及び写真的方法により複製する権利

 

・再放送権 

 ~ 放送を受信して再放送する権利 

 

 

・テレビジョン放送の伝達権 

 ~ テレビジョン放送を受信して画面を拡大する特別装置(超大型テレビやビル壁面のディスプレイ装置など)で、公に伝達する権利 

 

・送信可能化権 

 ~ インターネットなどを利用して、公衆からの求めに応じて自動的に送信できるようにする権利

  




基本その10 へすすむ