基本その8 著作者人格権


人格権とは

 著作物は社会のために積極的に利用されることが望ましいのですが、著作者の名声や作品への思いを踏みにじらないように注意して利用したいものです。 著作権法は著作者の人格を守るための3つの権利を定めました。これをまとめて著作者人格権と呼ぶことがあります。人格を保護する権利なので、日本の著作権法では譲渡したり、相続によって移転したりすることはできません。憲法で保障された基本的人権を保護するために著作権法で具体的に定められたものと考えられます。

 

 著作者人格権の中の3つの権利

  1 公表権

  2 氏名表示権

  3 同一性保持権


 

公表権

 

◇公表の権利

自分の作品を世間に公表するかどうかは、その作品を作った人の意思に委ねるべきです。他人が勝手に作品を公表することは、たとえそれが本人にとって経済的利益になることであっても、本人の意思に反しては行うことはできません。自分の意志で自分の作品を公表する権利が公表権です。 

 

◇公表とは?

発行すること、または、著作権者または著作権者から許諾を受けた者が上演、演奏、上映、公衆送信、口述、公衆への展示、送信可能化すること。

 

◇同意の推定 その1

著作者が未公開作品の著作権を誰かに譲渡したときは、その著作権にもとづいて公衆に提供したり提示したりすることを同意したと推定されます。著作権を譲り渡した相手に公表権を行使するということは、一般的には考えられないことだからです。譲渡のときに、これについての特約があればそれに従います。

 

◇同意の推定 その2

美術の著作物と写真の著作物の場合、未公表の原作品を譲渡した場合には、その原作品の展示を同意したと推定されます。原作品を手に入れた人は、自由に展示できると考えるのが一般的だからです。

 

◇同意の推定 その3

映画の製作者が映画の製作であることを同意して制作に参加しているときは、その映画の著作物の著作権は映画製作者に帰属しますが、この場合の著作権の帰属は原始的帰属ではなく、創作後の著作権法定譲渡であると考えられるので著作者人格権は個々の映画制作参加者に存在しますが、この場合には、個々の著作者は映画が公表されることを同意していると推定されます。映画が公表されるのは当然のことだからです

  • 著作権法第18条
     著作者は、その著作物でまだ公表されていないもの(その同意を得ないで公表された著作物を含む。以下この条において同じ。)を公衆に提供し、又は提示する権利を有する。当該著作物を原著作物とする二次的著作物についても、同様とする。


◆氏名表示権

 自分の作品を公表するとき、自分の名前を作品上に表示するかどうか、またはどんな名前で表示するかは、著作者が決めるべきことで、他人は著作者の意思に反して勝手に作品に氏名を表示したり、表示しなかったりすることはできません。(19条1項)

 

◇表示について約束していないとき

 しかし特に約束が無いときは、その著作物についてすでに表示されている方法で表示すればよいことになっています。例えば、写真家から買った写真を展示するときは、その写真に附されている写真家の名前を写真とともに表示しなければなりません。ウソの名前で展示したりするのはもってのほかです。(19条2項)

 

◇どのように表示するかについても著作者が決める

 また、ドラマの脚本や原作も著作物ですが、よく番組の最後に脚本家や原作者の名前が出てきます。 これを本名で表示するか、ペンネームにするか、または表示するかしないかは、原則として著作者の意思によります。

 

◇表示を省略されるときもある

 しかし、著作者の利益を害するおそれがなく、さらに公正な慣行に反しない場合は、氏名の表示を省略できます。例えば商品のパッケージデザインなどの場合、そのデザイナーの氏名を表示することはあまりありません。商業用利用の場合、著作者表示の主張よりも商品の売れ行きを優先するのが一般的です。(19条3項)

  

◇公的機関による使用について氏名表示権が制限される場合

公的機関が情報公開する際に、言っての場合には氏名表示権を行使できない場合があります。(19条4項)

 

※著作権者の表示の注意点 ~ Cマークについて

  • 第19条  
    ①著作者は、その著作物の原作品に、又はその著作物の公衆への提供若しくは提示に際し、その実名若しくは変名を著作者名として表示し、又は著作者名を表示しないこととする権利を有する。その著作物を原著作物とする二次的著作物の公衆への提供又は提示に際しての原著作物の著作者名の表示についても、同様とする。
    ②著作物を利用する者は、その著作者の別段の意思表示がない限り、その著作物につきすでに著作者が表示しているところに従つて著作者名を表示することができる。
    ③著作者名の表示は、著作物の利用の目的及び態様に照らし著作者が創作者であることを主張する利益を害するおそれがないと認められるときは、公正な慣行に反しない限り、省略することができる。
    ④第一項の規定は、次の各号のいずれかに該当するときは、適用しない。
    一  行政機関情報公開法 、独立行政法人等情報公開法 又は情報公開条例の規定により行政機関の長、独立行政法人等又は地方公共団体の機関が著作物を公衆に提供し、又は提示する場合において、当該著作物につき既にその著作者が表示しているところに従つて著作者名を表示するとき。
    二  行政機関情報公開法第六条第二項 の規定、独立行政法人等情報公開法第六条第二項 の規定又は情報公開条例の規定で行政機関情報公開法第六条第二項 の規定に相当するものにより行政機関の長、独立行政法人等又は地方公共団体の機関が著作物を公衆に提供し、又は提示する場合において、当該著作物の著作者名の表示を省略することとなるとき。


 

 

同一性保持権

 例え他人に譲った絵であっても、勝手に色を変えられたり修正されたものが世に出るのは、画家にとっては許せないことかもしれません。なぜなら、作者の評価をおとしめる危険があるからです。作品に手を加えず、ありのままを人に見て欲しいという著作者の気持ちを保護するために、同一性保持権が定められました。同一性保持権は、著作者が社会から作品のありのままを見てもらい評価を受ける権利とも言えるでしょう。出版社が作家の許諾を得ずに文章を校正して出版したり、映画館やTV局が映像の一部分を無断でカットしたりするのは同一性保持権の侵害になりえます。しかし、著作物の通常の利用のためにやむをえない場合には、合理的に必要な範囲で改変することを法律は認めています。たとえば、保存に耐えなくなった彫刻の修理や、プログラムのバージョンアップなどの場合です(著作権法20条)。 著作物を営利目的で利用する場合には、ある程度の改変を必要とする場合が多く、同一性保持権は非常に問題になりやすい権利です。

 

  • 第20条
    ①著作者は、その著作物及びその題号の同一性を保持する権利を有し、その意に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けないものとする。
    ②前項の規定は、次の各号のいずれかに該当する改変については、適用しない。  
    一 第三十三条第一項(同条第四項において準用する場合を含む。)又は第三十四条第一項の規定により著作物を利用する場合における用字又は用語の変更その他の改変で、学校教育の目的上やむを得ないと認められるもの
    二 建築物の増築、改築、修繕又は模様替えによる改変           
    三 特定の電子計算機においては利用し得ないプログラムの著作物を当該電子計算機において利用し得るようにするため、又はプログラムの著作物を電子計算機においてより効果的に利用し得るようにするために必要な改変
    四 前三号に掲げるもののほか、著作物の性質並びにその利用の目的及び態様に照らしやむを得ないと認められる改変


 



 

著作者人格権の保護期間

著作者人格権は、著作者の人格を保護するための権利ではありますが、著作者の死後であっても、著作者が生きているとしたらその人格を侵害していただろうと思われる侵害は、してはいけないことになっています(60条)。このような場合、著作者本人はすでに亡くなっていますから、その遺族(死亡した著作者の配偶者、子、父母、孫、祖父母又は兄弟姉妹)が侵害行為の差し止めや損害賠償請求を行えることになっています。また、このような侵害行為は著作権法120条で300万円以下の罰金刑が課されるおそれがあります。

 
  • (著作者が存しなくなつた後における人格的利益の保護)
    第60条 
     著作物を公衆に提供し、又は提示する者は、その著作物の著作者が存しなくなつた後においても、著作者が存しているとしたならばその著作者人格権の侵害となるべき行為をしてはならない。ただし、その行為の性質及び程度、社会的事情の変動その他によりその行為が当該著作者の意を害しないと認められる場合は、この限りでない。

    (著作者の死後における人格的利益の保護のための措置)
    第116条 
    1 著作者の死後においては、その遺族(死亡した著作者の配偶者、子、父母、孫、祖父母又は兄弟姉妹をいう。以下この条において同じ。)は、当該著作者について第六十条の規定に違反する行為をする者又はするおそれがある者に対し第百十二条の請求を、故意又は過失により著作者人格権を侵害する行為又は第六十条の規定に違反する行為をした者に対し前条の請求をすることができる。
    2 前項の請求をすることができる遺族の順位は、同項に規定する順序とする。ただし、著作者が遺言によりその順位を別に定めた場合は、その順序とする。
    3 著作者は、遺言により、遺族に代えて第一項の請求をすることができる者を指定することができる。この場合において、その指定を受けた者は、当該著作者の死亡の日の属する年の翌年から起算して五十年を経過した後(その経過する時に遺族が存する場合にあつては、その存しなくなつた後)においては、その請求をすることができない。

 

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