基本その5 著作権は権利の束

著作権法は著作者に対して、著作物を作った瞬間にいろいろな権利を与えてくれます。それらの権利は「著作権」「著作者人格権」「著作隣接権」の3つに分類することができます。ここでは財産権の一種である「著作権」の中身に関して述べます。


◆複製権(21条) ~ 著作物をコピーするときなど

 もうひとつ同じ表現を作ることを専有する権利。 

 第21条  著作者は、その著作物を複製する権利を専有する。
  
 著作権を英語で「COPYRIGHT」と言いますが、複製とはまさに「コピー」のことです。
 著作権の中で一番古く重要で、基本的な権利です。
 例えば、文章や画像をコピー機でコピーすること、パソコンのプログラムをフロッピーディスクに記憶させること、音楽やテレビ番組をCDやテープなどに録音録画すること、電車やパスに人気キャラクターの絵を手描きすることなど、我々が日常的によく行っている行為でもあります。
 コピーするときには複製権者の許諾を得る必要がありますが、例外として私的使用を目的とする複製(私的使用)や引用の場合などには許諾を得ないで行うことができます(著作権法30条・32条その他)。 よくある勘違いですが、一部分を修正しているからと言って勝手に利用できるわけではありませんし、全く同じモノとして複製する場合だけが複製にあたるのでもありません。例えば、文章の語尾を「です」から「である」に変えたり、イラストの一部分だけを抜き取って合成したりする場合でも、原作者の個性的な表現を利用しているのであれば複製にあたります。しかし、自分がつくった著作物がたまたま他人の著作物にうりふたつだったとしても複製にはあたりません。
 


E01 写真を見て描いた絵
E04 ストーリーが似ている場合




◆上演権・演奏権(22条) ~ 演劇や演奏をするとき


 第22条  著作者は、その著作物を、公衆に直接見せ又は聞かせることを目的として(以下「公に」という。)上演し、又は演奏する権利を専有する。

 ※法第2条5項抜粋
     この法律にいう「公衆」には、特定かつ多数の者を含むものとする。

 「上演権」「演奏権」は、脚本を舞台等で上演したり、音楽を演奏したり、または市販CDを再生したりして、公衆に見せたり聞かせたりすることを専有する権利です。
 「公衆に直接見せ又は聞かせることを目的として」とありますので、道を歩きながら口笛を吹いたり、カラオケボックスで歌ったりすることは該当しません。小売店の店頭や喫茶店内で音楽を流すことも、演奏権者の許諾が必要です。
 なお、この条文における「公衆」とは、「不特定の人」または「大勢の人」という意味であると考えられます。
 結婚式のBGMとして音楽を使用するような場合は、参加者が特定されていますが、それでも人数が多い場合には「公衆」にあたり、演奏権者の許諾が必要になることがありえます。
 非営利目的で演奏する場合には一定の条件のもとに無許諾で演奏できる場合があります。(著38条)
 

上演権・演奏権



 

◆上映権(22条の2) ~ 街角の大型ディスプレイなどで上映するとき

 公衆に対して上映する権利
  •  第22条の2  著作者は、その著作物を公に上映する権利を専有する。
      
    ※平成11年の法改正により、著作物をスクリーンやディスプレイ画面等に映し出すことをにより公衆に対して視聴覚的に提示する行為を制限すつ目的で定められました。

 

◆公衆送信権等(23条) ~ インターネット、テレビ放送、通信カラオケ等

 公衆に送信したり送信可能な状態に置くことを専有する権利
  • 第23条
    ①著作者は、その著作物について、公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。)を行う権利を専有する。
    ②著作者は、公衆送信されるその著作物を受信装置を用いて公に伝達する権利を専有する。
 公衆送信権は平成9年の法改正により新たに作られた、IT社会においてとても重要な権利です。

◎公衆送信権の中身
 公衆送信権は、放送権、有線放送権及び自動公衆送信権(送信可能化権含む)から構成されます。(著作権法第2条7号の2、8号、9号の1~5) 
  1. 放送
     著作物を公衆に対して放送するには公衆送信権者の許諾が必要です。放送とは、一般的にはラジオ放送やテレビ放送などのことですが、生放送に限らず録画、録音により複製された著作物の放送も同様です。
  2. 有線放送
     有線電気通信により著作物を公衆に提供する権利。例えば電波が届きにくい地域などのテレビ番組のCATV、レストランなどでの音楽の有線放送がこれにあたります。コンピュータープログラムを会社などでLANによって送受信している場合には、そのネットワーク上で著作物を送信する場合には有線送信にあたり、許諾が必要です。コンピュータープログラムはネット上から用意に無断インストールが可能で、しかも使用する人数に応じた使用料が設定されているので、LAN上での送信を自由にすると著作権者を保護できないからです。
  3. 自動公衆送信権
     公衆からの求めに応じ著作物の送信を自動的に行うことですが、放送・有線放送に該当する場合は除かれます(著作権法第2条1項9号)。送信者の意思で積極的に送信する場合だけでなく、企業のオンラインサービスなどのように、利用者からの要求にに応じて自動的にデジタル化された著作物を送信する場合や、インターネットのように単に送信が可能な状態(データをサーバーにアップロードした状態)を作り出すこと(送信可能化)までをも含みます。 自動公衆送信はインターネットなど身近な著作物利用の形態の1つですが、注意しなければならないのは、インターネットには営利・非営利、公的私的、という区別が存在しないと解釈されていることです。なぜなら、インターネットでは、そのような区別無くして世界中に送信され、例え非営利であっても、一度送信してしまえば世界のどこでどのように利用されるかわからないからです。デジタル化された著作物は、簡単に複製したり、改変したりできますので、著作権保護の観点からは非常に危険な存在でもあります。 
  • 第2条1項抜粋
    七の二  公衆送信 公衆によつて直接受信されることを目的として無線通信又は有線電気通信の送信(有線電気通信設備で、その一の部分の設置の場所が他の部分の設置の場所と同一の構内(その構内が二以上の者の占有に属している場合には、同一の者の占有に属する区域内)にあるものによる送信(プログラムの著作物の送信を除く。)を除く。)を行うことをいう。
    八  放送 公衆送信のうち、公衆によつて同一の内容の送信が同時に受信されることを目的として行う無線通信の送信をいう。
    九  放送事業者 放送を業として行なう者をいう。
    九の二  有線放送 公衆送信のうち、公衆によつて同一の内容の送信が同時に受信されることを目的として行う有線電気通信の送信をいう。
    九の三  有線放送事業者 有線放送を業として行う者をいう。
    九の四  自動公衆送信 公衆送信のうち、公衆からの求めに応じ自動的に行うもの(放送又は有線放送に該当するものを除く。)をいう。
    九の五  送信可能化 次のいずれかに掲げる行為により自動公衆送信し得るようにすることをいう。
     イ 公衆の用に供されている電気通信回線に接続している自動公衆送信装置(公衆の用に供する電気通信回線に接続することにより、その記録媒体のうち自動公衆送信の用に供する部分(以下この号において「公衆送信用記録媒体」という。)に記録され、又は当該装置に入力される情報を自動公衆送信する機能を有する装置をいう。以下同じ。)の公衆送信用記録媒体に情報を記録し、情報が記録された記録媒体を当該自動公衆送信装置の公衆送信用記録媒体として加え、若しくは情報が記録された記録媒体を当該自動公衆送信装置の公衆送信用記録媒体に変換し、又は当該自動公衆送信装置に情報を入力すること。
     ロ その公衆送信用記録媒体に情報が記録され、又は当該自動公衆送信装置に情報が入力されている自動公衆送信装置について、公衆の用に供されている電気通信回線への接続(配線、自動公衆送信装置の始動、送受信用プログラムの起動その他の一連の行為により行われる場合には、当該一連の行為のうち最後のものをいう。)を行うこと。


 

◆口述権(24条) ~ 講演会、スピーカーなどで他人の口述を再生したりするとき
 言語の著作物を口述、再生する権利

 第24条  著作者は、その言語の著作物を公に口述する権利を専有する。
    

 

◆展示権(25条) ~ 展覧会 美術展などで

 「美術の著作物」、または、「未発行の写真の著作物」の原作品を公に展示することを専有する権利
  • 第25条  
  •  著作者は、その美術の著作物又はまだ発行されていない写真の著作物をこれらの原作品により公に展示する権利を専有する。
※写真の場合は美術の著作物と異なり、原作品を特定することが難しいので、未発行のもののみを対象としました。
 

◆頒布権(26条) ~ 映画館で映画を上映するための流通

 映画の複製物を公衆に譲渡・貸与することを専有する権利 
  • 第26条
    ① 著作者は、その映画の著作物をその複製物により頒布する権利を専有する。
    ② 著作者は、映画の著作物において複製されているその著作物を当該映画の著作物の複製物により頒布する権利を専有する。
 

I01 中古ビデオやゲームの販売(譲渡権と頒布権の問題)


◆譲渡権(26条の2) ~ 映画以外の著作物を譲渡するとき

 違法な複製品の流通を防止するために、著作物を譲渡により公衆に提供することを専有する権利
  • 第26条の2  
    ①著作者は、その著作物(映画の著作物を除く。以下この条において同じ。)をその原作品又は複製物(映画の著作物において複製されている著作物にあつては、当該映画の著作物の複製物を除く。以下この条において同じ。)の譲渡により公衆に提供する権利を専有する。
    ② 前項の規定は、著作物の原作品又は複製物で次の各号のいずれかに該当するものの譲渡による場合には、適用しない。  
     一  前項に規定する権利を有する者又はその許諾を得た者により公衆に譲渡された著作物の原作品又は複製物
     二  第六十七条第一項若しくは第六十九条の規定による裁定又は万国著作権条約の実施に伴う著作権法の特例に関する法律 (昭和三十一年法律第八十六号)第五条第一項 の規定による許可を受けて公衆に譲渡された著作物の複製物
     三  前項に規定する権利を有する者又はその承諾を得た者により特定かつ少数の者に譲渡された著作物の原作品又は複製物
     四  この法律の施行地外において、前項に規定する権利に相当する権利を害することなく、又は同項に規定する権利に相当する権利を有する者若しくはその承諾を得た者により譲渡された著作物の原作品又は複製物
     
頒布権・譲渡権 
 

◆貸与権(26条の3) ~ レンタルビデオ、レンタルCD

 著作物を貸与により公衆に提供することを専有権利
  • 第26条の3  著作者は、その著作物(映画の著作物を除く。)をその複製物(映画の著作物において複製されている著作物にあつては、当該映画の著作物の複製物を除く。)の貸与により公衆に提供する権利を専有する。
貸与権 


◆翻訳権・翻案権等(27条) ~ 作品を翻訳、映画化するとき

 著作物を翻訳、編曲、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、翻案することを専有する権利
  • 第27条  著作者は、その著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案する権利を専有する。
 

◆二次的著作物利用権(28条) ~ 日本語訳された外国作品の出版など

 二次的著作物の原著作者も二次的著作物の著作者と同様の権利を持つ
  • 第28条  二次的著作物の原著作物の著作者は、当該二次的著作物の利用に関し、この款に規定する権利で当該二次的著作物の著作者が有するものと同一の種類の権利を専有する。
二次的著作物の利用 
 

◆出版権(79・80条) ~ 小説などの出版に関する権利(著作権ではありません)

 複製権を持っている人が文書や図画(とが)を他人に出版させる場合に設定することのできる権利です。 出版とは、頒布の目的をもって、その出版の目的である著作物を原作のまま印刷したり、そのほか機械的又は化学的方法により文書又は図画(とが)として複製することです。
 著作権とは異なる特殊な権利だといえそうです。
  • 第79条  
    ①第21条に規定する権利を有する者(以下この章において「複製権者」という。)は、その著作物を文書又は図画として出版することを引き受ける者に対し、出版権を設定することができる。
    ②複製権者は、その複製権を目的とする質権が設定されているときは、当該質権を有する者の承諾を得た場合に限り、出版権を設定することができるものとする。

    第80条  
    ①出版権者は、設定行為で定めるところにより、頒布の目的をもつて、その出版権の目的である著作物を原作のまま印刷その他の機械的又は化学的方法により文書又は図画として複製する権利を専有する。
    ②出版権の存続期間中に当該著作物の著作者が死亡したとき、又は、設定行為に別段の定めがある場合を除き、出版権の設定後最初の出版があつた日から三年を経過したときは、複製権者は、前項の規定にかかわらず、当該著作物を全集その他の編集物(その著作者の著作物のみを編集したものに限る。)に収録して複製することができる。
    ③出版権者は、他人に対し、その出版権の目的である著作物の複製を許諾することができない。
 

◆複製権とその兄弟たち

 歴史的にみると、著作物の利用は「コピー」することから始まったので、著作権を英語で「COPYRIGHT(コピーライト)」と言います。著作権はもともとコピーという利用を独占するための権利(複製権)から始まりました。 現代ではそのほかにもたくさんの「何々権」という権利が著作者に与えられています。これは著作物の利用方法の種類が多くなったからで、そのいろいろな利用方法の発展に対応して、たくさんの権利が必要になりました。著作権という権利は実は1つの権利ではなく、著作権法によって作られた複数の権利の集合体ですから、よく「権利の束」であると言われます。最もよく使われ歴史の古い「複製権」、最近生まれた権利では「貸与権」があり、もっとも新しい権利は「公衆送信権」や「譲渡権」といったところでしょうか。
 「著作権侵害」と言う表現だけでは、著作権の中のどの権利が侵害されたのかがあいまいです。 無断コピーは複製権侵害、無断アップロードは公衆送信権(の中の送信可能化権)侵害になります。権利の種類によって性質や法律の適用に相違があるので、権利を明確にすることは軽視できません。たとえば著作権法第30条の私的使用の規定は複製のみに関する規定であるし、音楽の非営利目的での利用は演奏については無許諾でも可能ですが、公衆送信については認められていないといった具合です。
 なお、著作権を構成するそれぞれの権利のことを「支分権」と呼ぶことがあります。




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