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基本その4 著作権による利用の制限


◆著作権の意味
 著作権という権利は「文化の発展」のために創作者に与えた権利です。権利というものを、国家からもらったもの、たとえば商品券とか引換券みたいなものと同じような意味だと勘違いしてしまうと、「法律に権利があると書いてあるから自分の主張は絶対正しい」と思い込んでしまうことにつながります。たとえばこういう人がいます。 
  • ワタシ 「怒っている理由は、何か迷惑なことをされたからですか?」
    相手  「私の権利を侵害されたのです」
    ワタシ 「具体的にどのような損失が発生したのですか?」
    相手  「権利を侵害されたことが損失です。私にはヤメロという権利があるのでしょう?」
 迷惑だから怒っているのではなく、自分の「ヤメロ!」と言う権利が侵害されたと思って怒ってしまうのです。権利は与えられたものだから、精一杯使いきらないと損だ、という感覚を持っている人がいます。しかし「権利」という言葉には「正義」に似たような意味が含まれています。その「正義」は「法律に書いてあるから」ということではなく「道理に合っている」、と考えるべきものだと思います。道理に合わない主張をするために権利を使うことはできません。たとえば民法の第一条には私法の原理として重要な次のような条文があります。
  • 民法第一条
    ① 私権は、公共の福祉に適合しなければならない。
    ② 権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。
    ③ 権利の濫用は、これを許さない。
権利には役割があるのですから、その使い方を考えて、道理に合った使い方をしなければ通用するものではありません。著作権法は誰かの欲得や個人的な都合のために存在する権利ではなく、「文化を発展させる」という目的で、権利者と利用者の関係を調整するための権利です。権利は使用・用法をよくわきまえて正しくご使用ください。



◆著作者と著作権者の違い
 著作権は作者が「もっと作品をつくりたい」という気持ちを高めるためにつくられた財産権です。財産権は財産そのものと言ってもよいでしょう。 「家を買った」と言えば、法律的には「家と土地の所有権を買った」ということになり、所有権が財産だということになります。
 著作権も同様に財産ですので、財産として処分できます。たとえば他人に売ったり担保にしたり、相続することもできます。
 著作者は著作物を創作したときにたくさんの権利を手に入れていますが、そのうちの一種が著作権です。  著作権は最初は著作者に帰属していますが、著作者が著作権を他人に譲渡してしまえば著作者には著作権は残りません。そして著作権を譲り受けた人は「著作権者」になります。 
 このように、著作者と著作権者は別々の人間である場合があります。著作者としての立場は永遠に変りませんが、著作権者としての立場は転々と移動することがありえます。「著作権者ではない著作者」、「著作者ではない著作権者」が存在します。


joutonozu
◆著作権は権利の束
 下記の表のとおり、著作者は著作物を作ったときには「著作権」「著作者人格権」「補償金請求権」の3種類を持っていて、それらはさらに小さな権利に分かれています。
 著作権の場合は10個以上の権利に分かれているため「権利の束」と呼ばれることがあります。
 これらの小さな権利はそれぞれ独立した権利ですので、それぞれ財産として処分することができます。

著作者の権利の一覧

著作者
の権利

 著作者人格権

公表権(18条)

氏名表示権(19条)

同一性保持権(20条)

 著  作  権

複製権(21条)

上演権・演奏権(22条)

上映権(22条の2)

公衆送信権等(23条)

口述権(24条)

展示権(25条)

頒布権(26条)

譲渡権(26条の2)

貸与権(26条の3)

翻訳権・翻案権等(27条)

二次的著作物利用権(28条)

補償金請求権

私的録音録画補償金請求権(30条2項)
教科書等掲載補償金請求権(33条2項)
教育番組放送補償金請求権(34条2項)
試験問題複製補償金請求権(36条2項)

ビデオ等貸与補償金請求権(38条5項)


◆もし作品を勝手に利用されたら
 日本の法制度では迷惑なことをすると、国家権力によって二種類の方法で責任が追及できます。kora



  ◎民事責任の追及
    作者(著作権を持っている人)自身が
      ・侵害の停止又は防止を請求することができる。
       (著作権法第 112条)
      ・損害賠償請求できる。(民法第709条)

  ◎刑事責任の追及
     捜査機関が犯罪として処罰してくれる。
      ・10年以下の懲役又は1000万円以下の罰金に処する。
         (著作権法第 119条 但し、親告罪)
  • ※親告罪について(後述)



◆著作権侵害は不法行為の一種
<他人に迷惑をかけたら、その損害を賠償する責任がある>
これは誰でも知っている当たり前のことですから、法律の知識がなくてもわかります。
それでも民法という法律には一応、次のようなことが書いてあります。
  • 民法709条
    故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
 これを不法行為の原理といいます。不法行為の種類にはきりがなく、いろいろな迷惑行為がこれにあたりえます。現代社会では、他人がせっかくつくった価値ある作品を勝手に利用してもうけることは迷惑なこと、つまり不法行為だと考えることができます。
 不法行為だから、それによって生じた損害を賠償しろと請求することができます。これは同時に著作権の侵害でもあります。著作権を侵害するということは不法行為の一種なのです。ですので著作権を侵害された人は不法行為の原理(民法709条)をもとに、相手方に対して損害賠償を請求でき、相手方がそれに応じないときには、民事裁判手続きを経ることによって国家権力で強制的に賠償をさせることができます。

 
◆不法行為と著作権法の存在意義
 もし自分の作品が許諾なしに利用されたときに、著作権法がなかったとしても、不法行為の原理をもとに損害賠償を請求することはできます。しかし、他人の作品を勝手に利用することが不法行為であるかどうかをいちいち説明しなければ裁判所が承知してくれないとしたら面倒です。
 著作権法があるおかげで、作品を無許可でコピーすることなどが著作権侵害である、すなわち不法行為にあたるということが明らかになりますし、権利侵害になるかどうかの切れ目が著作権法に具体的に書いてありますので、解釈がわかれにくくなります(あいまいさは残りますが)。
 さらに、将来著作権を侵害される可能性があるときや、今著作権を侵害されているという場合には、著作権法にもとづいて、その侵害行為を予防したり、今行われている侵害行為を停止させるなどの請求をすることが著作権法において認められています。
 また、著作権法では著作権などの権利を侵害した者に対して刑事罰が定められています。
  • 著作権法第112条 (差止め請求権)
    1 著作者、著作権者、出版権者、実演家又は著作隣接権者は、その著作者人格権、著作権、出版権、実演家人格権又は著作隣接権を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防のための請求をすることができる。
    2  著作者、著作権者、出版権者、実演家又は著作隣接権者は、前項の規定による請求をするに際し、侵害の行為を組成した物、侵害の行為によつて作成された物又は専ら侵害の行為に供された機械若しくは器具の廃棄その他の侵害の停止又は予防に必要な措置を請求することができる。
◆刑事罰
 著作権法では、著作権などの権利を侵害することについて刑事罰が定められています。
 著作権法違反で刑事罰が課されることは実際にはあまり多くありません。音楽CDの違法コピーや営利目的のデータアップロードなど、とくに悪質なケースが対象になることが多いようです。
 しかし最近では営利性が薄いケースでも摘発される事例がでており、社会的に影響の大きいケースでは見せしめとしてニュース報道されることもあります。今後、刑事罰が適用される範囲は広がってゆくでしょう。
主な罰則は次のとおりです。
  • ◎その1 <119条>
     1、著作者人格権、著作権、出版権、著作隣接権を侵害すること
     2、著作権法違反となるようなコピーをするために自動複製機器(コピー機)を使わせること
      ・この場合の罰則は 5年以下の懲役又は500万円以下の罰金        
       ※ ただし親告罪です。
  •    ※ 罰則につき法改正あり(後述)
  • ◎その2 <120条>
     1、著作者が亡くなったあとで、著作者が生きていたら許さないような人格権の侵害をすること
      ・この場合は 500万円以下の罰金 

    ◎その3 <120条の2>
     1、技術的保護手段(コピープロテクト)を不能にするプログラムを譲渡したり世に広めること
     2、コピープロテクトを不能にする業務をおこなうこと
     ・この場合は 500万円以下の罰金

    ◎その4 <121条>
     1、真実と異なる著作者名を表示して著作物の複製物を頒布すること
     ・この場合は 1年以下の懲役又は100万円以下の罰金
       ※ ただし親告罪です。

    ◎その5 <122条>
     1、著作物や実演の利用(48条で定める場合)に際し、著作物の出所明示義務に違反するとき
     ・この場合は 50万円以下の罰金

    ◎法人の違反行為 <124条>
    これらの違反行為を法人代表者や、法人または個人の代理人・使用人・従業員がその業務に関して行った場合は、その行為者だけでなく、雇っている法人・個人に対しても罰則の適用があります。

◎著作権法改正について
著作権等(著作者人格権等を含みません)侵害罪の懲役刑及び罰金刑、並びに秘密保持命令違反罪の法人処罰に係る罰金刑の上限について、特許法等と同様の水準に引き上げられました。(第119条第1項及び第124条関係)

◆親告罪のこと <123条>
 親告罪とは、被害者が犯人を知った日から6ヶ月以内(期間につき例外あり)に告訴しないと捜査機関(検察官)が公訴(刑事裁判を提起すること)できない罪のことです。原則として捜査機関は犯罪行為を独自の判断で捜査し、公訴できますが、親告罪では告訴がなければ公訴(裁判所に対して刑事裁判の開始を請求すること)することができません。
 親告罪にはこのほかに「過失傷害罪」「名誉毀損」「親族間の窃盗又は恐喝」「非営利目的の略取又は誘拐」「強姦罪」「侮辱罪」「器物損壊罪」などがあります。
 著作物を無断で利用されているかどうかは第三者にはわかりにくいことですし、著作者が自由な利用を認めている場合もありえる、ということもあって著作権侵害の多く(全てではありません)は親告罪です。 コピープロテクトを不能にするプログラムを販売する行為、引用等の際の出所明示義務違反などは公益上の必要性を含むので親告罪ではありません。 著作者死後の人格権侵害の場合は遺族が存在しない場合を想定してか親告罪ではありません。
 なお著作権法の親告罪の規定を撤廃する法改正の動きがあります。
 


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以下、関係条文抜粋

刑事訴訟法第二百三十五条  
第一項  親告罪の告訴は、犯人を知つた日から六箇月を経過したときは、これをすることができない。ただし、次に掲げる告訴については、この限りでない。
 一  刑法第百七十六条 から第百七十八条 まで、第二百二十五条若しくは第二百二十七条第一項(第二百二十五条の罪を犯した者を幇助する目的に係る部分に限る。)若しくは第三項の罪又はこれらの罪に係る未遂罪につき行う告訴
 二  刑法第二百三十二条第二項 の規定により外国の代表者が行う告訴及び日本国に派遣された外国の使節に対する同法第二百三十条 又は第二百三十一条 の罪につきその使節が行う告訴


著作権法 
第八章 罰則

第百十九条  著作権、出版権又は著作隣接権を侵害した者(第三十条第一項(第百二条第一項において準用する場合を含む。)に定める私的使用の目的をもつて自ら著作物若しくは実演等の複製を行つた者、第百十三条第三項の規定により著作権若しくは著作隣接権(同条第四項の規定により著作隣接権とみなされる権利を含む。第百二十条の二第三号において同じ。)を侵害する行為とみなされる行為を行つた者、第百十三条第五項の規定により著作権若しくは著作隣接権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者又は次項第三号若しくは第四号に掲げる者を除く。)は、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
2  次の各号のいずれかに該当する者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一  著作者人格権又は実演家人格権を侵害した者(第百十三条第三項の規定により著作者人格権又は実演家人格権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者を除く。)
二  営利を目的として、第三十条第一項第一号に規定する自動複製機器を著作権、出版権又は著作隣接権の侵害となる著作物又は実演等の複製に使用させた者
三  第百十三条第一項の規定により著作権、出版権又は著作隣接権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者
四  第百十三条第二項の規定により著作権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者

第百二十条  第六十条又は第百一条の三の規定に違反した者は、五百万円以下の罰金に処する。

第百二十条の二  次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一  技術的保護手段の回避を行うことを専らその機能とする装置(当該装置の部品一式であつて容易に組み立てることができるものを含む。)若しくは技術的保護手段の回避を行うことを専らその機能とするプログラムの複製物を公衆に譲渡し、若しくは貸与し、公衆への譲渡若しくは貸与の目的をもつて製造し、輸入し、若しくは所持し、若しくは公衆の使用に供し、又は当該プログラムを公衆送信し、若しくは送信可能化した者
二  業として公衆からの求めに応じて技術的保護手段の回避を行つた者
三  営利を目的として、第百十三条第三項の規定により著作者人格権、著作権、実演家人格権又は著作隣接権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者
四  営利を目的として、第百十三条第五項の規定により著作権又は著作隣接権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者

第百二十一条  著作者でない者の実名又は周知の変名を著作者名として表示した著作物の複製物(原著作物の著作者でない者の実名又は周知の変名を原著作物の著作者名として表示した二次的著作物の複製物を含む。)を頒布した者は、一年以下の懲役若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

第百二十一条の二  次の各号に掲げる商業用レコード(当該商業用レコードの複製物(二以上の段階にわたる複製に係る複製物を含む。)を含む。)を商業用レコードとして複製し、その複製物を頒布し、又はその複製物を頒布の目的をもつて所持した者(当該各号の原盤に音を最初に固定した日の属する年の翌年から起算して五十年を経過した後において当該複製、頒布又は所持を行つた者を除く。)は、一年以下の懲役若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一  国内において商業用レコードの製作を業とする者が、レコード製作者からそのレコード(第八条各号のいずれかに該当するものを除く。)の原盤の提供を受けて製作した商業用レコード
二  国外において商業用レコードの製作を業とする者が、実演家等保護条約の締約国の国民、世界貿易機関の加盟国の国民又はレコード保護条約の締約国の国民(当該締約国の法令に基づいて設立された法人及び当該締約国に主たる事務所を有する法人を含む。)であるレコード製作者からそのレコード(第八条各号のいずれかに該当するものを除く。)の原盤の提供を受けて製作した商業用レコード

第百二十二条  第四十八条又は第百二条第二項の規定に違反した者は、五十万円以下の罰金に処する。

第百二十二条の二  秘密保持命令に違反した者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
2  前項の罪は、国外において同項の罪を犯した者にも適用する。

第百二十三条  第百十九条、第百二十条の二第三号及び第四号、第百二十一条の二並びに前条第一項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
2  無名又は変名の著作物の発行者は、その著作物に係る前項の罪について告訴をすることができる。ただし、第百十八条第一項ただし書に規定する場合及び当該告訴が著作者の明示した意思に反する場合は、この限りでない。

第百二十四条  法人の代表者(法人格を有しない社団又は財団の管理人を含む。)又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、次の各号に掲げる規定の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人に対して当該各号に定める罰金刑を、その人に対して各本条の罰金刑を科する。
一  第百十九条第一項若しくは第二項第三号若しくは第四号又は第百二十二条の二第一項 三億円以下の罰金刑
二  第百十九条第二項第一号若しくは第二号又は第百二十条から第百二十二条まで 各本条の罰金刑
2  法人格を有しない社団又は財団について前項の規定の適用がある場合には、その代表者又は管理人がその訴訟行為につきその社団又は財団を代表するほか、法人を被告人又は被疑者とする場合の刑事訴訟に関する法律の規定を準用する。
3  第一項の場合において、当該行為者に対してした告訴又は告訴の取消しは、その法人又は人に対しても効力を生じ、その法人又は人に対してした告訴又は告訴の取消しは、当該行為者に対しても効力を生ずるものとする。
4  第一項の規定により第百十九条第一項若しくは第二項又は第百二十二条の二第一項の違反行為につき法人又は人に罰金刑を科する場合における時効の期間は、これらの規定の罪についての時効の期間による。






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