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ある日のこと。
ダルマロは描き終えたばかりの絵を見せて、ランジェロにたずねました。
「ほら、この絵、誰だと思う?」
「まあ、なんてかわいらしい。これは歌手のソフィアさんが歌っている絵ですね。」
(ダルマロさんは、そっくりそのままの絵を描くのだけは得意なんだよなあ)
とランジェロは心の中でつぶやきました。
「今やソフィアちゃんは国中で大人気だからね。王様だってファンらしいぞ。これもダルマロさまがレコードを売ってあげたおかげだな。」
と、得意になっています。
「ねえ、ダルマロさん。もしかすると、また勝手に絵を売ってもうけようとしているんじゃないですか?」
「もちろんだとも、ランジェロ君! この絵を印刷したらたくさん売れるだろうなあ。」
やれやれ、またお金もうけの話です。
ランジェロが心配そうに何か言おうとすると、ダルマロはそれをさえぎって言いました。
「ソフィアちゃんの肖像権があるんだと言いたいんだろう。でもね、肖像権はプライバシーを守るための権利だよ。ソフィアちゃんはいつも大勢の前で歌を歌っているんだから、その肖像を利用したってプライバシーには関係ないと思うね。」
と、今日のランジェロはめずらしく先手をとられてしまいました。
「そ、それもそうですねえ。たしかにソフィアさんのプライバシーには関係ないような・・・。」
「そうだろう。つまり私はこの絵を好きなだけ売って大もうけができるということじゃないか。すばらしい!」
しかしランジェロは納得がゆかない様子です。
「うーん、何かひっかかるなあ。だって、その絵が売れるのは、ソフィアさんがかわいらしくて、歌が上手で、国中で人気があるからでしょう? それなのに、どうしてダルマロさんが大もうけすることになるんだろう。それってずるいと思うなあ。」
「なんだい、またそんなことを言って・・・。この絵を売るためにがんばるのはぼくだけなんだからいいのさ。」
とダルマロが言うと、
「いやいやちがうでしょう。ソフィアさんはもともと内気でおとなしい女の子ですよ。彼女のレコードが売れてから有名になってしまったけど、きっといろいろなことをがまんしたり、努力したりしてきたはずです。そのおかげでダルマロさんだけが得するのはおかしいですよ。」
「う・・・、それもそうかな・・・・。たしかに、プライバシーが無い生活というのはいろいろ大変だろうなあ。」
するとランジェロは自信を持って言いました。
「やっぱりそうですよ。他人が勝手にソフィアさんの顔や姿を利用してもうけるなんて、おかしいですよ。それに、きっとダルマロさんだけじゃなくて、大勢の人がソフィアさんの顔や姿を勝手に利用してもうけるようになりますよ。」
「あっ、そうか。そうしたら、ぼくはもうからないじゃないか!ランジェロ、どうしたらいいの?」
「だったらソフィアさんから許しをもらって利用するようにしたらいいじゃないですか。もちろん、お金のもうけの中からソフィアさんにじゅうぶん支払ってあげないとね。」
「じゃあ、ほかの人が勝手に利用しだしたらどうするんだい。ぼくだけが損することになるよ。」
「ダルマロさんがソフィアさんに代わって、彼女の権利を守ってあげたらどうです。」
「そうか、なるほどね・・・。」
ダルマロが本当に意味をわかってくれたのかどうか、ランジェロはちょっと心配でした。

おわり
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